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第 3 週「いばらの道」 #カルメン前奏曲


NHK 連続テレビ小説「エール」第 3 週 12 話に登場した曲です。              【作曲が進まずあせる裕一】

ジョルジュ・ビゼー作曲 カルメン/前奏曲

4月14日に放送された回、12話曲の冒頭で裕一が所属するハーモニカ倶楽部が演奏されました。ハーモニカ倶楽部演奏会で披露する曲が投票によって裕一の曲に決 まり、次期会長に指名されます。その頃家で父が連帯保証人を引き受けた京都の仕入れ先が雲隠れ、窮地に陥ります。裕一に再び養子の話が持ち上がるという回でした。

パリのオペラ・コミック座から新作を依頼されたフランスの作曲家ジュルジュ・ビゼー (1836 年生)が、プロスペル・メリメの小説「カルメン」を元に作曲したのが、オペラ「カル メン」。 台本は、ビゼーの親友のメイヤックとアレヴィが書きました。スペイン南部のアンダルシア地方を 舞台にしたこのオペラは、現代では最も人気のオペラの一つとなっています。


初演は、1875 年 3 月。オペラ・コミック座は、市民のための「上品な」劇場だったので、 カルメンは、原作の悪女から働く女になり、無法者の設定が削除されました。それで も、当時の「カルメン」は問題作で、主人公が、ケンカ・誘惑・逃亡をするロマの女で、 密輸入者が登場し、最後は殺人で終わる設定は受け入れられず、初演は失敗に終わ りました。同年 5 月に、ウィーンでの上演に際し、歌とセリフから成るオペラ・コミックの様式から、歌をレチタティーヴォでつなぐグランド・オペラに変えることになりましたが、 途中でビゼーは急死してしまいます。後を引き継いだフランスの作曲家ギローが完成させ、ウィーン宮廷歌劇場で上演され、成功をおさめました。それ以降、人気のオペラとなり、今ではオペラ・コミック版の両方で上演されています。

19世紀当時のロマの社会では、若い娘が一人で働くことも、ロマ以外の男と結婚するこ とも許されてはいませんでした。またスペイン人の社会でも、妻は夫に従い、家庭を守 ることが義務とされていました。そんな中、現実には存在することを許されなかった自由に恋愛をするカルメンは、望ましい男女の在り方を示唆した存在だったのでしょう。 今日では、自由を求める自立した人間として肯定的に描かれています。

さて、エールの中で、ハーモニカ倶楽部で演奏された、カルメンの「前奏曲」ですが、文字通り、オペラの開幕で演奏される曲で、その中には、「闘牛士の歌」や、「死のテーマ」などが盛り込まれ、オペラ全体を端的に表現しています。この曲が始まると、心が踊り、物語が開幕するワクワク感に包まれます。テレビ番組や CM などでも使用され ることが多いのでご存じの方も多いのではないでしょうか。 


ここでちょっと豆知識!スペインといえば、フラメンコが有名ですが、これは、ロマの音楽とアンダルシア地方の民謡が融合して誕生したものと言われています。19 世紀にフ ラメンコの様式が確立し、セビリヤでフラメンコ・ライブ酒場ができました。オペラ「カルメ ン」でも、第2幕冒頭の酒場の場面でロマの女達が踊ります。是非ご覧になってみてく ださい。


ミュージックソムリエ:藤井 憲治(指揮者/アートプロデューサー)

NHK 連続テレビ小説「エール」                    (NHK 総合月〜金 朝 8:00〜8:15、12:45〜13:00、 土曜日􏰂 1 週間を振り返ります。その他 NHK BS プレミアム、NHK BS4K でもオンエア中です。
*放送予定 3月30日〜9月26日
また NHK オンデマンドでも見逃し放送をご覧になることができます。


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