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テニスボーイからのファミリー!

中学〜高校生の時に夢中になって読んでたマンガがある。
80年代の西海岸のアメリカの家族を描いた渡辺多恵子さんの『ファミリー!』という作品。もうじき40年ほど前の作品になるとおもうが、折に触れ読み返すたびいつも発見がある名作。

この作品をどこで知り得たかと言うと、もちろんネットもなかった時代。田舎のまちの本屋さんでもなく友達でもなく父からだった。
とはいえ父がマンガに詳しかった訳ではない。

中学1年生の頃だったと思う。私が風邪で寝込んでいる時に、父が一冊だけマンガを買ってきてくれたことがあった。それが『テニスボーイ』という作品だった。
いま検索してみても内容もカバーも記憶にさっぱりないけど、とにかくその1巻を買ってきてくれた。
何で中学生女子に少年漫画?!わかってないなあ、なんて思いながらも見ていたら続きが気になり、今度は2巻を買ってきて!とせがんだ私に父は「なんだぁ?今日は仮病かぁ?」と言いながら部屋を出て行った。

それでもしつこいのが子供である。その後もお願いしていると忘れた頃に今度は『別冊少女コミック』をポンと渡してきた。

覚えててくれたんだ!と嬉しくなり開いてみると、どこにもテニスボーイは掲載されていなかった。そりゃ少女マンガ雑誌なので当たり前だ。

私がわがままを言うから急拵えで買ってきたのだろうと感じたが、せっかくなので読んでいるとそこに『ファミリー!』の第十九話"ピーターパンフライト"が連載されていた。

とにかくイラストが今もオシャレでアメリカ人の主人公なのも新鮮。そして登場人物の男の子が全てカッコよくて、どのキャラクターも変に瞳がキラキラとデフォルメされていなくて好きだった。初めて知るアメリカの生活にも憧れた。

入り口はそんなきっかけだったけど他の号をみていると、今まで読んできた恋愛中心の漫画ではないことがわかった。離婚、ゲイ、家族愛…子供の自分ではわからなかった登場人物の心境も読み返すたびに年齢を重ねるにつれ、理解が深まっていった。

テニスボーイのことはすっかり忘れてしまったがそういえば父は何故この本を選んだのか?テニス部だったのか。今となっては聞くことはできないけど、もしかして行きつけの宝くじをいつも買っていたあの本屋で買ってきたのかも。

今の私よりも随分歳下だった当時の父が、私のために少ないおこずかいの中から少年マンガや少女マンガを選んでいる姿を想像するとつい微笑んでしまった。


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