【ドラゴンのエッセイ】Z世代

 これも、前から書きたかったネタである。「Z世代」というのは、25歳ごろまでの若者を指すらしい。俺も24だから、ギリギリZ世代である。
 しかし、これまでの人生で同年代との関わりが薄かったせいなのか「俺はZ世代」なんて自覚はない。それ以前に、自分のことを若者だと思ったことも多くない。なので、今の若者の感覚はいまいちピンとこない。今回はそういう話をしていこう。

 まずはなんといっても「言葉」である。一生忘れられないエピソードがある。
 俺が高校生になった頃、授業にも導入するからという理由でiPadが支給された。もちろん校内では授業にしか使ってはいけないが、プライベートな使用までは制限しない、という話だった。
 そこで友人の何人かが「LINEを交換しよう」と誘ってくれた。ところが無知な俺は一言「何の線?」と問い返してしまったのだ。
 今の時代において、たとえ障がい者であってもスマホを持っていることは当たり前なんだとその時思い知った。「LINE」という言葉自体を知らないことなど、俺の同年代のやつらからすれば考慮に入れる必要のないことなのだ。

 成人して以降、このnoteやX(旧Twitter)といったSNSを急激に始めた。同じ趣味を持ち、語り合える友人がほしかったからだ。ところがそんな場でも、言葉のギャップに苦しむことになった。
 まず現代の若者は、言葉を安直に略しすぎる。「了解」を「り」とか「テンション上がる」を単に「アゲだね!」とか言ったりするらしい。もうついていけない。最近では同年代のフォロワーさんに、俺より年下のフォロワーさんが使っていた言葉の意味を訊いている始末だ。もう本当についていけない。

 ついていけないといえば、話題である。最近は特にネットが全盛で、例えば音楽業界でもCDから配信に切り替わりつつある。現に俺の推しが多く所属する事務所でも、Travis Japanというグループは配信リリースのみでCDの発売はない。「こういうデビューもありかぁ。今時だな」とめちゃくちゃ年寄り臭いことを思った。
 こんな調子だから、TikTokなんて見ているわけがない。昨今の流行の発信はみんなTikTokだから、おのずと話題にもついていけなくなる。俺の情報源の中心はいまだにテレビ、ネットは辛うじてYouTubeや、ファミリークラブオフィシャルサイトをチェックする程度。YouTubeも有料のプレミアムではない(経済的に無理)のでネットで聴く音楽もかなり限定的だ。その上俺の趣味は読書(小説)ときている。もう若者に無理に合わせにいくのはやめた。お互いの精神衛生上よくない。

 そこを差し引いても、昨今の若者の非常識さはいかがなものかと思う。CMでも流れているが、「他社の人間との会話の場合、自分の上司のことは呼び捨てでいい」というマナーを教えたら、その上司を面と向かって呼び捨てしてしまう輩が大勢いるらしい。
 かと思えばその逆もいる。これは俺の実体験だが。
 俺の通っていた施設に、新人のスタッフが入った。その人は俺と同年代か若干年下くらいの男性で、俺も緊張していた。だからいつも以上に丁寧を心がけて「おはようございます。今日からよろしくお願いします」と挨拶した。それに対する彼の返事は「ウッス」だった。
 いくらスタッフと利用者の関係(こちらは面倒を見てもらう立場)とはいえ、さすがにその態度は見過ごせなかった。だから即日相談員さんに報告し、ことが大きくならず、態度を改めてもらえるように伝えてもらった。
 すると翌日、確かに彼の態度は一変していた。
「おはようございます。昨日(さくじつ)は大変な無礼を働いてしまい、申し訳ありませんでした。今後はこのようなことが起こらないよう十分に注意してまいりますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします」
「さくじつ」なんて言い回しを現実世界で聞いたことがなかったので強く印象に残っている。俺はただ、フランクと失礼の境界線をちゃんとしてほしいと言いたかっただけだ。ここまで懇切丁寧な挨拶をしろとは言っていない。これではまるで、俺が新人スタッフをいびっているようではないか。
 後日施設長に確認したところ、彼はもともと施設長にすらきちんとした敬語を使えなかったらしい。俺が「最低限の礼儀」と思ったことが彼にとっては自分の処理能力を超えた要求だったことになる。
 この日から俺は決めた。「障がいのことでとやかく言われないのであれば、多少の無礼には目をつぶろう」と。どうも今の時代は、そうしないと生きていけないらしい。俺が子どもの頃は、よく「最近の若いやつは」と嘆いている大人を見た。しかし現代は、その台詞を当事者である若者でさえ言ってしまう時代なのである。ここまでくるともう学校の授業として「コミュニケーション」というのを追加したらどうかと思う。社会に出てからはあまり使わないような漢字の成り立ちや因数分解より、まずは他者とのコミュニケーションではないだろうか。
 このような記事を読んで、当事者であるZ世代のみなさんはどう思うのだろう。

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