【ドラゴンのエッセイ】初めて書く親戚の話

 自慢じゃないが、俺は両親にめちゃくちゃ愛されて育った。いや、現在進行形でめちゃくちゃ愛されている。
 それだけで俺としては大満足なのだが、唯一気に食わないポイントがあった。
 両親以外の親戚関係である。特に母方。
 大人全般を疑いの目で見るようになったきっかけは、もしかしたら彼らにあるのかもしれない。この話はこの記事で初解禁である。親友のNさん含め誰にも話したことはない。だがずっと抱えてきたモヤモヤである。
 読者のみなさんには、ぜひ知っておいてほしい。


祖父母

 幼少期から、祖父母の俺に対する態度に違和感を感じていた。
 祖母は俺のことを可愛がってくれていた。おねだりすることもなく定期的に新しい絵本やおもちゃを買ってくれていた。小学生になってからはお年玉の記憶もあるのだが、毎年一万円以上は入っていた。親戚一同や下手したら親からもお年玉をもらった年があったが、そんな時でも祖母のお年玉が毎年最高額だった。
 一方の祖父はというと、好意的な態度で迎えてくれた記憶がない。それ以前に俺たち家族が祖父母の家を訪問する際に家にいたことが少ないのだ。俺たちが帰るまで家に帰ってこないなんてこともしばしばあった。原因はパチンコである。だから勝った時は機嫌がいいし、負けた時は最悪だ。「あけましておめでとう」の挨拶を無視されたこともたくさんある。
 こんな感じだったので、俺は祖父母とは血が繋がっていないんじゃないかと本気で思っていた。「孫は実の子どもよりも可愛がられる」という都市伝説を子どもながらに信じていたというのもあっただろう。特に祖父は他人じゃないかと思っていた。

真実

 ところが真実はどうだったかというと、全く逆だった。他人だったのは祖母の方だったのだ。これは母から聞いた話なので間違いない。母によれば祖父は最初からろくでもない父親だったらしい。
 だったら実の祖母はどういう人間なのかというと、母も記憶がないらしい。母を育てたのは母の祖母、俺から見れば曽祖母ということになる。曽祖母は俺が生まれてすぐ、曽祖父は俺が生まれる少し前に亡くなったらしい(逆だったかな)。

祖母の気持ち悪さ

 ここでいう祖母とは、俺が実祖母だと思っていた母方の義理の祖母のことである。
 祖父の俺に対する扱いに不満はあったが、実の娘である母に「元からああだから」と言われてしまってはそれ以上どうしようもない。
 問題の祖母だが、言われてみればずっと違和感があった。まず彼女は、俺にいろんなものを買い与えすぎた。
 なぜ俺がこんな言い方をするかというと、大体は俺や母が求めているものではなかったからである。例えば、当時はウルトラマンや怪獣のフィギュアが俺のブームだったのだが、祖母は何故かカッパのフィギュアばかり買ってきた。母が何度も「これは怪獣じゃなくて妖怪だ」と説明しているのだが、何故だかその後もカッパは増殖し続けた。そのくせウルトラマンや怪獣は一向に増えないのである。分からないなら買ってこなければいいのに、ある時期までカッパは増え続けた。小学校中学年くらいまでだったかな。
 さらに祖母は、俺の名前をくん付けで呼んだ。これは高校生になるまで続いた。小さい頃ならまだ分かるが、高3でくん付けされた時には気持ち悪さを感じた。

異様な正月

 祖父母の家に行った時、一番憂うつになるのが正月だ。親戚が集合するからである。
 何度も言っているように、祖母は俺の実祖母ではない。ということは祖母の方にも実の子どもがいて、孫がいるということである。
 俺は小さい頃、正月になると祖父母の家に来るおばちゃんを「母の妹」だと認識していた。叔母やいとこが集合しているのだと思った。
 しかしある時そのいとこだと思っていたお兄ちゃんに「馴れ馴れしく接するな」と怒られたことがある。いつもは味方してくれるはずの年の近い親戚たちが、その時は一切こちらを見ようとしなかった。それ以降彼らは、同じ空間にいても俺と距離を取るようになった。
 今考えてみれば当然のことだった。彼らと俺は赤の他人なのだから。当時小学生の俺にその事実を突きつけるのは酷だと考えて、みんなが黙っていたのだろう。
 しかしそれは逆効果だった。俺はなぜ急にお兄ちゃんやお姉ちゃんの態度が変わったのか分からず、彼らの母親に直接訊いてしまったのだ。それをきっかけに彼女も俺と距離を置くようになった。

 こんな話を成人してから母にしたら「赤の他人なのだから当たり前だ」と言われた。俺としても薄々気づいていたから衝撃はなかったが、あの頃のギスギスした雰囲気の原因はこれかと納得したものだ。

結末

 この話はここでは終わらない。
 学生時代は何かと連絡を寄越していた祖父母だが、ある時期から急にぱったりなくなった。
 原因は見当がついていて、俺が施設を辞めてずっと家にいるからである。
 つまり祖父母はいざとなったら母を頼るつもりだったのだ。現状ではそれが不可能だと悟った瞬間から連絡を絶ったのである。
 他人なんて信用ならんな、と強く思った出来事だった。それ以降祖父母がどうなったのかは知らない。

いいなと思ったら応援しよう!