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サラ・ウィリス『Mozart y Mambo』|#今日の1枚

ベルリン・フィルで最初の女性ホルン奏者であるサラ・ウィリス。クラシックの世界の第一線で活躍している傍ら、キューバの音楽家と一緒に演奏に取り組むことをライフワークとしている彼女。

モーツァルトのホルン協奏曲という王道のスタンダード作品が、キューバ現地の作曲家が書き下ろしたホルンソロと弦・打によるキューバン・ダンスなど、キューバ音楽と出会う稀有な一枚。

モーツァルトとキューバ。一見共通点の見当たらない2つの要素を、サラの千変万化な音色が架け橋となりつないでいる。天国かと思わせる後光を放つような朗らかな音が放たれるモーツァルトと、陽気な打楽器の上で明るく変幻自在に目眩く音色が展開されるキューバ音楽。

そもそもホルンのような「内向き」(音の出る方向的に)の楽器は、軽やかに上へ前へと音楽を放っていくラテン音楽に不向きそうには見えてしまう(少なくとも私には……)。それなのにまったくそう感じさせない。サラのインタビューによると、彼女は実際にサルサのレッスンを受けていたとか。

モーツァルトがラテン音楽に出会っていたら、きっとたくさんのエッセンスを盗んでは、ピアノにオーケストラにヴァイオリンに木管楽器(ひいてはクラリネット?)に、あらゆる編成・楽器のためにたくさんの魅惑的なダンス・ミュージックを残していたに違いない。最後に収められたモーツァルトの《魔笛》より〈パパパの二重唱〉のラテンアレンジを聴いて、そう思った。

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