桒田萌|編集者・ライター

大阪在住(月に1週間ほど東京滞在)。編集者・ライター。有限会社ノオトに所属。専門は音楽…

桒田萌|編集者・ライター

大阪在住(月に1週間ほど東京滞在)。編集者・ライター。有限会社ノオトに所属。専門は音楽。ドラマ好き。

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編集者・音楽ライター 桒田萌/実績 (2023/12/28)

編集者・ライターの桒田萌(くわだもえ)です。 関西を中心に、インタビューや執筆、編集を行っています。 1. 簡単に自己紹介大阪の音楽高校でピアノを学び、京都市立芸術大学で音楽学を専攻し、在学中に取材・執筆活動を開始しました。 現在の働き方としては、こんな感じです↓。 この記事では、②の個人で行なっているお仕事についてまとめます。 2. できること (ジャンルやスタイル、やりたいこと)クラシック音楽を専門的に学んできたため、そのジャンルのアーティストや業界に携わる方々の

    • フレッツォッティ『ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル:ピアノ作品集』|#今日の1枚

      ロマン派を代表するフェリックス・メンデルスゾーンには、4つ年上の姉がいる。ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼルだ。彼女もまた作曲家であり、ピアニストであった。彼女の存在は、クラシック存在では多くも少なくもないかと思うが、一般的に見るとかなりマイナーな存在だ。その大きな理由は、「彼女が女性だから」。 19世紀、特に初期のヨーロッパにおけるクラシック業界は、かなりの男性社会だった。それもそうだ。中流階級が台頭してきた世の中で、音楽を教養としてたしなむ家庭は急増したものの、だから

      • 『マイ・ブロークン・マリコ』「メンヘラ」レッテルへの反抗|#今日の1枚

        「メンヘラ」という言葉がある。他者からの愛情を強く求めてしまうあまりに、精神的かつ行動的にも不安定になってしまう人のこと、と個人的に定義づける。このいわゆる「病んでいる」と思われがちな状況に対して、名前をつけて安心するために自ら「自分はメンヘラだから」とレッテルに落とし込む人もいる一方で、他者が勝手に「あの人、メンヘラだよね」と評価してしまうパターンもよくある。 私は後者のように、他者が当事者の状態や人格を「あの人は病んでいる。メンヘラだ」とその4文字で定義付けてしまうのは

        • 務川慧悟『ラヴェル全集』|#今日の1枚

          ラヴェルといえば、ドビュッシーと同時代のフランス印象派を生きながらも、実はドビュッシーよりも随分とメカニカルで、洒落てるんだけどその根底にはシステマチックで生真面目な気質があって。ラヴェルのように音と音の緻密な設計図を描いて音楽として形にするようなピアニズムというのは、とても作り込まれた建築物(アート)の趣を感じさせるなと思う。 というのも、務川さんご自身も過去にTwitterでこんなことを呟いていたことがあって。 ラヴェルというのは優れた”機器”を作った職人なのだなぁと

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        • #今日の1枚
          9本
        • コンサート備忘録
          1本

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          パスカル・ロジェ『Fauré:Piano Music』|#今日の1枚

          やっぱりロジェはいいなあ。本当に雑味がないというか、ザラつきがない。音楽の流れに不自然さとか嘘がない。かといって変に洒落ているわけでもなく、いたってナチュラルなんだよなあ。 彼のプーランクのピアノ作品集も一通り聴いたけど、フォーレの方が好きかもしれない。プーランクはもう少し遊びっ気や茶目っ気があった方が作品としては魅力的だろうと思うことが多いから。フォーレのようにもう少し真面目さのあるタイプの方が、何だかんだマッチしているのかも。 一番好きなのは、夜想曲第5番。歌心がある

          パスカル・ロジェ『Fauré:Piano Music』|#今日の1枚

          映画『THE END』|#今日の1枚

          イギリスのテッド・エヴァンズ氏が監督を務めて制作された短編映画『THE END』。彼自身もろう者であるそうだ。これまでのろう者やろう文化への知識・理解の浅さを恥じてしまう映画だった。 そもそもどうしてこの映画を観たのかというと、ドラマ『silent』がきっかけだった。世間ではめちゃめちゃ流行っていたが、私はすごく夢中になっていたわけではないけれども、「異なる場所にいる人々がわかり合おうとする物語」として興味があり、観ていた。 特に恋愛的な描写よりも、篠原涼子の演じる主人公

          映画『THE END』|#今日の1枚

          ヤニック・ネゼ=セガン&ヨーロッパ室内管弦楽団『ベートーヴェン交響曲全集』|#今日の1枚

          室内管弦楽団ならではのコンパクトさでしか発揮できないシンフォニーの良さってあるよな、とよく思う。この前、アンサンブル・オーケストラ金沢の大阪公演でベートーヴェンの『英雄』を聴いたときも思った。小回りの良さとかのありきたりのことだけではなく、ゴージャスではないけど、きめ細やかで冴え渡った鋭さがあるというか。 今回のヤニック・ネゼ=セガンとヨーロッパ室内管弦楽団の全集もそうだ。ベートーヴェンの交響曲第1番の冒頭のハーモニーから、「何か見透かされている感」がある、尖っているわけで

          ヤニック・ネゼ=セガン&ヨーロッパ室内管弦楽団『ベートーヴェン交響曲全集』|#今日の1枚

          ルーシー・ホルシュ『Origins』|#今日の1枚

          リコーダー奏者のルーシー・ホルシュのアルバム。つい最近来日していたそう。仕事やらプライベートやらでバタついていて、行けなかったのが心底悔やまれる……。 リコーダーと言えば、学校の授業で習うもの……というのは日本人であればもちろんのこと、クラシックの人間としてはそもそも17〜18世紀あたりのバロック音楽のイメージが強い。実際ホルシュも、2016年にヴィヴァルディの協奏曲集、2019年にバッハのほかバロック時代の作品を集めたアルバムを残して、その才を放っている。 そこから角度

          ルーシー・ホルシュ『Origins』|#今日の1枚

          Ülo Krigul『Liquid Turns』|#今日の1枚

          エストニアといえば合唱だ。それを証明するために『我が祖国、我が至福と歓喜』(国歌でもある)や『我が祖国、我が愛』を原点として語るのは簡単なことだけれど、それらの曲の先に広がった豊かな音世界はまだまだ存在するんだよな、と改めて認識させられる一枚。 エストニアの作曲家・Ülo Krigul(ウロ・クリグル)によるアルバム。水や湖、液体、霊、光といったおおよそ人間にはコントロールできない素材をテーマに作品を書いている。 無伴奏もあるが、特に気になるのはやはり1曲目の《Vesi

          Ülo Krigul『Liquid Turns』|#今日の1枚

          サラ・ウィリス『Mozart y Mambo』|#今日の1枚

          ベルリン・フィルで最初の女性ホルン奏者であるサラ・ウィリス。クラシックの世界の第一線で活躍している傍ら、キューバの音楽家と一緒に演奏に取り組むことをライフワークとしている彼女。 モーツァルトのホルン協奏曲という王道のスタンダード作品が、キューバ現地の作曲家が書き下ろしたホルンソロと弦・打によるキューバン・ダンスなど、キューバ音楽と出会う稀有な一枚。 モーツァルトとキューバ。一見共通点の見当たらない2つの要素を、サラの千変万化な音色が架け橋となりつないでいる。天国かと思わせ

          サラ・ウィリス『Mozart y Mambo』|#今日の1枚

          アナスタシア・コベキナ 『ellipses』|#今日の1枚

          たっぷり踊り回すように奏でられた、重心のしっかりしたソッリマのファンダンゴに始まり、ドビュッシーの最晩年のソナタ、ヴィラ=ロボスのあまりに美しく有名なアリアなどと続く。フランス近代、古典初期、バロック、現代……と、古今のチェロ作品を取り上げる。一見名曲ばかり並んでいるように見えるが、古へのリスペクトが垣間見える新作も挟み込まれたりして、二項対立に陥りがちな「今」と「昔」を、自然な「Ellipeses=楕円」で繋いでいる聡明な一枚。 個人的にめちゃめちゃいいなと思うのは『Ga

          アナスタシア・コベキナ 『ellipses』|#今日の1枚

          仕事のロールモデルは、NHK朝ドラヒロインから見つかる

          仕事をする上で、ロールモデルみたいな人がいると、結構やる気が出るものだ。私は小さな会社で働いていて、やっぱり社長がロールモデルだし、会社外での仕事でも「いずれこんな人になりたいな」という憧れの方がいる。 とはいえ、ロールモデルは実生活だけで見つかるかと聞かれれば、そうではない。私の場合、NHK連続テレビ小説(=朝ドラ)のヒロインにもロールモデルがいる。とはいえ、「まんま」その人になりたいわけではなく、「このヒロインのこういうところ、好きだな」といった具合に、尊敬する部分や自

          仕事のロールモデルは、NHK朝ドラヒロインから見つかる

          映画『空白』で描かれた喪失のプロセスと正義

          ネタバレあります。 ーーーーー 人間は、想像を絶する悲しみ・悔しさを感じ、それゆえに心に「空白」ができてしまったら、なんとかそれを埋めようともがく。渦中にいる本人は必死なので、そこに他者への配慮はなかったりする。自分の正義感を振りかざしてしまう。結果的に、正しくも間違った行為を選択し、他者を不用意に傷つけることもある。 そんな喪失による正義と、当事者もしくは非当事者による百者百様の正義がぶつかり合う、一種の修羅場を描いたのが、映画『空白』だった。 正義というのは、言葉

          映画『空白』で描かれた喪失のプロセスと正義

          音楽は「生」こそ全て?ー大フィルの無観客上演を鑑賞して

          大阪フィルハーモニー交響楽団が3月19日、20日に行うはずであった、第536回定期演奏会。 新型コロナウイルスの影響で無観客上演になったものの、ライブ配信が行われた。 残念ながら私はリアルタイムで聴くことはできなかったけれど、嬉しいことに3月27日にアーカイブ映像が公開されたので、喜んで鑑賞した。 これを機にライブ配信をするオーケストラも増えてきて、同時に「生じゃないからこそ」のメリットについて語られる機会も多くなった。 生演奏は、その場にいることで他者と共有できる振動

          音楽は「生」こそ全て?ー大フィルの無観客上演を鑑賞して

          休憩時間の過ごし方@コンサートホール

          2019年12月にベルリンを訪れたとき、「絶対行かなきゃ」とベルリン・フィルを聴きに行った。 彼らの演奏を生で聴くことはもちろん、私が住む「大阪」ではなく、西洋音楽を育んだ「ヨーロッパ」の「ドイツ」で、その首都の「ベルリン」で、コンサートの空気や匂い、そこにいる人々のリアクションに、直に触れてみたかった。 日本との違いを感じてみたかった。期待してみた結果、やっぱり驚きがあった。 忘れたくないひと時、ここに記しておきたい。 (開演5分前の会場) コンサートの休憩時間の過ごし

          休憩時間の過ごし方@コンサートホール

          忘れられない歌声

          2019年12月、私はミュンヘンのマリエン広場にいた。 ちょうどシーズンということもあり、クリスマスマーケットで多くの人が賑わっていた。 マリエン広場にあるペータース教会は、この界隈でも一番古い教会。 そのてっぺんには、ミュンヘンの街並みが一望できる展望台がある。意味もなく街の景色を見ることが好きなので、なんとなく登ろうと思った。 古びた階段で上に登る。クローズが近い夜だったので、早足で上に上に向かい、息切れしながら300段上の頂上にたどり着いた。 とても狭い展望台で他の