桒田 萌|編集者・ライター

クラシック音楽について書いているライターですが、音楽以外のことも書きます。元々の専門はピアノ。ドラマと映画も好き。平日は有限会社ノオトで働き方・ライフスタイルまわりの編集者。大阪に在住しながら、月に1週間ほど東京にいます。

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クラシック音楽について書いているライターですが、音楽以外のことも書きます。元々の専門はピアノ。ドラマと映画も好き。平日は有限会社ノオトで働き方・ライフスタイルまわりの編集者。大阪に在住しながら、月に1週間ほど東京にいます。

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編集者・音楽ライター 桒田萌/実績 (2024/06/03)

編集者・ライターの桒田萌(くわだもえ)です。 関西を中心に、インタビューや執筆、編集を行っています。 1.プロフィール大阪の音楽高校でピアノを学び、京都市立芸術大学で音楽学を専攻し、在学中に取材・執筆活動を開始しました。 現在の働き方としては、こんな感じです↓。 この記事では、②の個人で行なっているお仕事についてまとめます。 2. できること (ジャンルやスタイル、やりたいこと)クラシック音楽を専門的に学んできたため、そのジャンルのアーティストや業界に携わる方々のイン

    • 小さな音に灯が宿るピアニスト/ブルース・リウの演奏を、フランクフルト放送響の公演で聴く

      2024年10月16日、フランクフルト放送交響楽団の来日公演(@ザ・シンフォニーホール)に行った。個人的なお目当てはソリストのブルース・リウ。2016年から仙台国際音楽コンクールで頭角を現し始め、ショパン国際ピアノコンクールでは見事覇者になったピアニストである。 この日、彼が演奏したのはベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番『皇帝』。第1楽章時点では、正統なアプローチでありなつつやや音も表情も固く、ショパコンにあったような前進性が落ち着いているように感じたけれど、意外な方向から

      • 私が朝ドラを欠かさず観る理由――『おむすび』が始まって

        秋になった。年度下半期になった。そして、NHK大阪放送局制作の朝ドラ『おむすび』(作:根本ノンジ)が始まった。新人女優の登竜門と言われて久しい朝ドラだが、すでに貫禄たっぷりの橋本環奈が猫背で冴えない高校1年生を演じていて、ここ最近の紅白歌合戦のこなれた司会ぶりを思い返しては、さすが橋本環奈だと思う日々は2週目を迎えた。 舞台は福岡県の糸島市と福岡市。個人的にここ1年半ほど、福岡には仕事で何度か足を運んでいる。今年の春には糸島の海沿いの宿に泊まったし、天神エリアを縦横無尽に行

        • 演奏家は時間を操る魔術師である――言葉と音、出力方法の違いについて

          まぶしくスポットライトのあたる舞台の上。グランドピアノの鍵盤の前に座ると、体が硬直する。あまりの硬さと会場の静けさに、自分ひとりだけ、ある一瞬で時が止まっているような感覚を覚える。それでも世界は私を置いて時間をどんどん進める。焦りを感じて、急いで鍵盤の上に手を置く。 ブルブル、ブルブル。手が硬すぎる、そして痙攣のように震えている。呼吸が浅く、手先まで血が巡らず、通常の1/100ほどの力しか出せない。それでもなお、時間は刻一刻と進む。時間を体感することを忘れた私と、いつもどお

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        • コンサート備忘録
          2本
        • #今日の1枚
          9本

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          何もしたくない休日に、ケフェレックのサティを聴く――8月を振り返りながら

          目まぐるしい8月だった。 気の知れた仲間とのタコパに始まり、京都の貴船神社に行っては人混みに揉まれ、島根県に訪れてひとり涙し(これについては改めて書きたい)、お盆が明けたらすぐに東京に行っては連日いろんな人と飲み明かし、最終日にいたっては朝まで飲んでその足で大阪に帰り、その日の夜も京都でお仕事の先輩方との日本酒会に参加し、その足で実家に帰るという毎日。時間や場所の感覚が狂い生活はめちゃくちゃで破壊されていたが、楽しい日々だった。そのなかでも必死に会社の仕事も個人の原稿仕事も

          何もしたくない休日に、ケフェレックのサティを聴く――8月を振り返りながら

          私が映画『わたしは最悪。』 のユリヤを羨ましく思うのは、ラヴェル《マ・メール・ロワ》が似合うから

          彼女のように、優秀で、なんでもできて、いろんなことにときめきながら生きていけたら——映画『わたしは最悪。』の主人公・ユリヤをみて、ふとそう思う。 ユリヤと似ていない私は彼女を羨ましく思うが、それでも彼女が人生の岐路に立たされるたびに真剣に悩む姿をみると、人には人の苦しみがあるものだなと感じる。 ユリヤは医者、カウンセラー、フォトグラファー、書店員と、目指す志を次々と変えて生きている。どの道に進むにしろ、スタートラインに立つには高いハードルが要されるものだが(たとえば医者な

          私が映画『わたしは最悪。』 のユリヤを羨ましく思うのは、ラヴェル《マ・メール・ロワ》が似合うから

          自分のコントロールできないものは見守る静かな強さ――「ネガティヴ・ケイパビリティ」

          私が「ネガティヴ・ケイパビリティ」という言葉を知ったのは、2年前、2022年の秋だったかと思う。当時の私はプライベートの人間関係に疲れ、その問題をどうにかしようと奔走していたのだけれど、あまりうまくいかず、徒労感を覚えていた。なんだか、すごく疲れ切っていた。 私は、答えを出したがる人間だと自覚している。事実、当時関係していた人に「あまり白黒はっきりつけようとしないでほしい」と言われて図星でショックを受けた苦い経験があるし、答えが出ない不安を他者に解消してもらおうとしていた愚

          自分のコントロールできないものは見守る静かな強さ――「ネガティヴ・ケイパビリティ」

          冬野ユミさんの劇伴で、『光る君へ』まひろと『スカーレット』喜美子の姿を重ねて

          NHK連続テレビ小説のなかで最も好きな作品の一つに、『スカーレット』(2019〜20年放送、戸田恵梨香主演)があります。 好きな理由はいくつかあるのですが、溢れ出す欲求に抗えない性(さが)を持ってしまった主人公を描いてくれたことが、その一つです。 主人公の川原貴美子は、後に陶芸家になる女性。憎めないもののやりたい放題な父の元に育ち、家族に縛られまぁまぁ抑圧的な状況の中で長女の鑑のように育った女性が、夫となる男性・八郎(松下洸平)から陶芸を教わり、芸術家としての道に目覚めま

          冬野ユミさんの劇伴で、『光る君へ』まひろと『スカーレット』喜美子の姿を重ねて

          毎日ピアノを弾きながら、衝動とは何かを考える

          ピアノとの付き合いも20年と長くなった。その関係性の濃淡は時期によってさまざまだ。1日20分だけ練習して譜読みさえできてたらOKな小学生時代や、急に音楽高校受験に目覚めて練習しだし、無事に合格してピアノに打ち込んだ中高生時代……。 正直、音楽高校に入ってからはピアノが自分をつらくさせる存在でしかなかったので(純粋に周囲と比べて下手でキツかったという意味で)、距離を取りたいと思い、大学こそ芸大に入ったけどピアノ専攻には進まなかった。 大学の途中で家庭の事情からピアノの弾けな

          毎日ピアノを弾きながら、衝動とは何かを考える

          フレッツォッティ『ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル:ピアノ作品集』|#今日の1枚

          ロマン派を代表するフェリックス・メンデルスゾーンには、4つ年上の姉がいる。ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼルだ。彼女もまた作曲家であり、ピアニストであった。彼女の存在は、クラシックの歴史を俯瞰してみるとマイナーな存在だ。その大きな理由は、「彼女が女性だから」。 19世紀、特に初期のヨーロッパにおけるクラシック業界は、かなりの男性社会だった。それもそうだ。中流階級が台頭してきた世の中で、音楽を教養としてたしなむ家庭は急増したものの、だからと言って女性が社会に出て音楽家として

          フレッツォッティ『ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル:ピアノ作品集』|#今日の1枚

          務川慧悟『ラヴェル全集』|#今日の1枚

          ラヴェルといえば、ドビュッシーと同時代のフランス印象派を生きながらも、実はドビュッシーよりも随分とメカニカルで、洒落てるんだけどその根底にはシステマチックで生真面目な気質があって。ラヴェルのように音と音の緻密な設計図を描いて音楽として形にするようなピアニズムというのは、とても作り込まれた建築物(アート)の趣を感じさせるなと思う。 というのも、務川さんご自身も過去にTwitterでこんなことを呟いていたことがあって。 ラヴェルというのは優れた”機器”を作った職人なのだなぁと

          務川慧悟『ラヴェル全集』|#今日の1枚

          パスカル・ロジェ『Fauré:Piano Music』|#今日の1枚

          やっぱりロジェはいいなあ。本当に雑味がないというか、ザラつきがない。音楽の流れに不自然さとか嘘がない。かといって変に洒落ているわけでもなく、いたってナチュラルなんだよなあ。 彼のプーランクのピアノ作品集も一通り聴いたけど、フォーレの方が好きかもしれない。プーランクはもう少し遊びっ気や茶目っ気があった方が作品としては魅力的だろうと思うことが多いから。フォーレのようにもう少し真面目さのあるタイプの方が、何だかんだマッチしているのかも。 一番好きなのは、夜想曲第5番。歌心がある

          パスカル・ロジェ『Fauré:Piano Music』|#今日の1枚

          映画『THE END』|#今日の1枚

          イギリスのテッド・エヴァンズ氏が監督を務めて制作された短編映画『THE END』。彼自身もろう者であるそうだ。これまでのろう者やろう文化への知識・理解の浅さを恥じてしまう映画だった。 そもそもどうしてこの映画を観たのかというと、ドラマ『silent』がきっかけだった。世間ではめちゃめちゃ流行っていたが、私はすごく夢中になっていたわけではないけれども、「異なる場所にいる人々がわかり合おうとする物語」として興味があり、観ていた。 特に恋愛的な描写よりも、篠原涼子の演じる主人公

          映画『THE END』|#今日の1枚

          ヤニック・ネゼ=セガン&ヨーロッパ室内管弦楽団『ベートーヴェン交響曲全集』|#今日の1枚

          室内管弦楽団ならではのコンパクトさでしか発揮できないシンフォニーの良さってあるよな、とよく思う。この前、アンサンブル・オーケストラ金沢の大阪公演でベートーヴェンの『英雄』を聴いたときも思った。小回りの良さとかのありきたりのことだけではなく、ゴージャスではないけど、きめ細やかで冴え渡った鋭さがあるというか。 今回のヤニック・ネゼ=セガンとヨーロッパ室内管弦楽団の全集もそうだ。ベートーヴェンの交響曲第1番の冒頭のハーモニーから、「何か見透かされている感」がある、尖っているわけで

          ヤニック・ネゼ=セガン&ヨーロッパ室内管弦楽団『ベートーヴェン交響曲全集』|#今日の1枚

          ルーシー・ホルシュ『Origins』|#今日の1枚

          リコーダー奏者のルーシー・ホルシュのアルバム。つい最近来日していたそう。仕事やらプライベートやらでバタついていて、行けなかったのが心底悔やまれる……。 リコーダーと言えば、学校の授業で習うもの……というのは日本人であればもちろんのこと、クラシックの人間としてはそもそも17〜18世紀あたりのバロック音楽のイメージが強い。実際ホルシュも、2016年にヴィヴァルディの協奏曲集、2019年にバッハのほかバロック時代の作品を集めたアルバムを残して、その才を放っている。 そこから角度

          ルーシー・ホルシュ『Origins』|#今日の1枚

          Ülo Krigul『Liquid Turns』|#今日の1枚

          エストニアといえば合唱だ。それを証明するために『我が祖国、我が至福と歓喜』(国歌でもある)や『我が祖国、我が愛』を原点として語るのは簡単なことだけれど、それらの曲の先に広がった豊かな音世界はまだまだ存在するんだよな、と改めて認識させられる一枚。 エストニアの作曲家・Ülo Krigul(ウロ・クリグル)によるアルバム。水や湖、液体、霊、光といったおおよそ人間にはコントロールできない素材をテーマに作品を書いている。 無伴奏もあるが、特に気になるのはやはり1曲目の《Vesi 

          Ülo Krigul『Liquid Turns』|#今日の1枚