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(音楽話)71: Les Paul with Anita O’Day “Is You or Is You Ain’t My Baby” (1994)

【チャーミング】

Les Paul with Anita O’Day “Is You or Is You Ain’t My Baby” (1994)

Les PaulAnita O’Day。かたやギターの神様、エレキギターの名ブランド「Les Paul」生みの親。かたや元祖ハスキーヴォイス、「The Jezebel of Jazz/ジャズ界のイゼベル」と呼ばれたスィング歌姫。この超豪華共演を、しかも共に晩年での夢の共演映像があることに、本当に感謝します。

この映像は当時、79歳Les Paulのライヴに75歳のAnitaが客演した時の模様です。場所は米国ニューヨークのIridium Jazz Club。晩年のLes Paulが毎週「Les Paul Night」と銘打ったライヴを演っていた場所で、このプログラムは時々、豪華ゲストがひょっこり現れて共演することで有名でした。George BensonChet AtkinsLarry CarltonTommy EmmanuelSteve MillerKeith Richards…誰が出てくるかは伏せられているので、当日の観客だけが知り得るサプライズーーー贅沢。生で観てみたかったなぁ。

そんなライヴに、94年9月8日出演したAnita。Les Paulの「1934年、シカゴだったな?」で始まる会話。当時Anitaが”How High the Moon”を歌ってた、とLes Paulが言ってますが…えーと…おじいちゃん、”How High the Moon”は1940年に書かれた曲なんですけど…まいっか笑
何演りたい?」と尋ねるLes Paulに対し、「あんたたちは何演りたいのよ?」とAnita。ピアニストからの提案を了承したAnita、軽く「OK」で始まる“Is You or Is You Ain’t My Baby”への流れ、大好きです。
(この曲は1943年に発表されたジャズというかブルース。様々なシンガーがカヴァーしているスタンダードな楽曲です)

Anita、なんてチャーミングなんでしょう!
Les Paul、ギターソロのなんて艶やかなことか!

歌い出しからもう圧巻なAnitaの歌世界が広がります。若者が歌うウブな恋心とは違い、人生のほとんどを味わい尽くした女性が歌う恋心は生き様そのもの。フレージング、説得力が破格です。流石だと思うのが、歌の所々で見せる「人に歌いかける姿勢」。ここでは主にLes Paulに向かって嬉しそうに歌いかけてますが、このエンタテインする姿勢、頭が下がります。
Les Paulは押し引きを完全理解したギターで最小限の仕事しかしていません。それは年齢云々ではなく、空気・場面・楽曲の流れを十分に汲んだ、経験値が為せる技に違いない。滑らかなソロが色気さえ感じさせます。

ギターソロが終わるとピアノソロを促すAnitaの計らい、メンバーたちの目立たないけど確実なプレイ…どれも素晴らしい。永遠に聴いていたい心地良さ。“me and you!”と観客に歌い捨ててアウトロと共にステージを降りていくAnitaー超カッコいい!そりゃ大拍手ですよ、Les Paulも感嘆して「アー!アー!」って言いますよ笑

ちなみに、その場のノリでAnitaは歌ってるので歌詞は正直どうでもいいですが、要は言葉数少なく「あんたなの?あんたじゃないの?私のベイビーちゃんは」と延々歌ってます。
その後Anitaは2006年、Les Paulは2009年に亡くなりました。きっと彼方で日々楽しくセッションしてるんでしょうね…このふたりのように、人生豊かに枯れたいものです。こんなじいちゃん・ばあちゃんになりたい。

皆様、良い週末を。

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