見出し画像

(音楽話)18: 大貫妙子&坂本龍一 “四季” (2010)

【儚美】

大貫妙子&坂本龍一 “四季” (2010)

大貫妙子と坂本龍一。共に70年代〜活躍してきたミュージシャンであり、大貫はSUGAR BABE、坂本はYMOという伝説の只中にいて、その後ソロ活動を黙々と続けてきた方々。そして二人とも、音楽性にボーダレスな志向を見せながら、日本語の響きを非常に大切にしてきたという共通点もあります。

大貫は1953(昭和28)年11月生まれの67歳(11/28誕生日)。東京・久我山で育ち、73年に山下達郎らとSUGAR BABEを結成。76年にソロ活動を並行して開始、これまで30枚ほどのアルバムを発表し続けています。個性的で沁みてくる声質と、基本的に静かでゆったりしたメロディが特徴ですが、そんなマイナス・イオンなサウンドに対して意外と毒のある歌詞を書くこともあって、とても奥行きの広い、面白いSSW。近年のシティ・ポップ人気で過去作が海外で人気急上昇→アナログ・レコード再発、なんていう現象も起こってます。
坂本は1952(昭和27)年生まれの68歳。東京・中野/給田で育ち、3歳で始めたピアノを携えて東京芸大に進学。在学中からスタジオ・ミュージシャンとしてキャリアをスタートさせ、78年に細野晴臣の声掛けで高橋幸宏と共にYMOを結成(超有名なので詳細省きますね)。「戦場のメリークリスマス」や「ラストエンペラー」での怪演、バラエティ番組への出演など、多面性を見せながら継続的に活動しています。不真面目に真面目な教授。

坂本は編曲・作曲等で大貫と長年の交友があり、大貫の「坂本の曲に詞をつけて歌いたい」というリクエストから生まれたユニットが、今回の「大貫妙子&坂本龍一」。2010年にアルバム「UTAU」をリリースし、11曲ほぼ全て、サウンド構成は坂本のピアノのみ。そこにただ、大貫の声が乗るーそれだけのアルバムですが、これが素晴らしい。
耽美な歌詞が印象的な”美貌の青空”(作詞・売野雅勇←とても彼らしい歌詞です)、シンプルだけど聴く者を静かに励ましてくれる”a life”(作詞・大貫)、不思議な歌詞だが現代をどこか寂しく見ている気がする”3びきのくま”(作詞・大貫)など、歌世界がバラエティに富んでいて非常に興味深いアルバムの中、一番惹きつけられた曲が”四季”。

聴いてほとんどの人が思うであろう感想は、「和の雰囲気」ではないかと。本人たちもそれを自覚していて、作詞・作曲した大貫の幅広い音楽性を感じます。四季のそこかしこに紐付いた「あなたとの思い出」をめぐりながら、それを儚く、淡く、透き通るメロディと声が寄り添う。オリエンタルという表現は不適切、まさに日本なメロディは、日本語の美しさと共に優しく流れていきます。坂本のピアノ・アレンジも彼らしい単音の選び方をしながら、少しだけ抑揚がついた煌びやかさ。今にも消えてしまいそうな美しさに、ずっと浸っていたくなります。

この美しさ、皆さんに届きますように。

*********

つないだ手に 夏の匂い
海へと続く道
光る波と ひとひらの雲
遠い蝉時雨

山が燃えて 草は枯れて
瞳に秋の色
風が立てば 心寒く
陽だまりの冬

求め続け 待ちぼうけの
あなたのいない季節
うけとめては とけて儚い
春のぼたん雪

水に落ちた 赤い花よ
想いと流れてゆこうか

さくらさくら 淡い夢よ
散りゆく時を知るの
胸に残る 姿やさしい
愛した人よ

さようならと さようならと
あなたは手をふる
鈴の音が 唄いながら
空を駆けてく

(大貫妙子&坂本龍一 “四季”)

(紹介する全ての音楽およびその動画の著作権・肖像権等は、各権利所有者に帰属いたします。本note掲載内容はあくまで個人の楽しむ範囲のものであって、それらの権利を侵害することを意図していません)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?