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川嶋志乃舞(CHiLi GiRL) インタビュー! 「会わなきゃ聴けない音楽より、会いたくなる音楽を作っていく。」 伝統芸能とポップスフィールドの二刀流で活躍する「川嶋志乃舞」が自身のニュープロジェクト「CHiLi GiRL」を語る。

伝統芸能とポップスフィールドの二刀流で活躍する「川嶋志乃舞」(「CHiLi GiRL」)インタビュー

「『愛の引き算』でナチュラルに三味線を仲間に入れてあげる、『CHiLi GiRL』では “本当の私”と“いろんな自分”を無制限に放出して、会わなきゃ聴けない音楽より、会いたくなる音楽を作っていく。」

伝統芸能家、国内屈指の津軽三味線奏者の「川嶋志乃舞」が自身のニュープロジェクト「CHiLi GiRL」を語る。

—— まずは「川嶋志乃舞」の基本情報ですが、三味線は何歳から始めましたか?
数ある楽器の選択肢に中から三味線を選んだ理由は?

川嶋志乃舞(以下、「川嶋」) 三味線教室の入門は3歳です!ただ当時は3歳で扱える三味線のサイズもなかなか無く、最初は太鼓や唄を勉強しました。そのあと5歳で三味線を本格的に師事するようになりました。
三味線は地元のお祭りに両親に連れてってもらったのをきっかけに、自分からやりたいと言い出したそうです。不特定多数の人に見てもらえるし、何より小さい子たちがお祭りの舞台に立っているのを見ていたら「あたしも……!」と奮起していたらしく、野外のお祭りで出会ったのも大きなきっかけで、運命的だったと思います。
その後、小学1年生の時に全国大会で入賞してしまってからはもう辞める方が難しくなってしまいました。ピアノも幼稚園から小学1年生までやっていましたが、両手で弾くのが難しくて鍵盤にかじりついたら親に辞めさせられてしまいました(笑)。
でもピアノを弾くのは好きだったので、曲を耳コピしたり学校の合唱で伴奏をしたりしたこともあります。

—— 三味線でポップスをやろうと思ったのはいつ頃ですか? その理由は?

川嶋 師匠の佐々木光儀が「立ち三味線」の元祖で、30年以上前から既にジャズやサンバ、タンゴといった楽曲に三味線を合わせて演奏するプレイヤーでした。それもあって三味線は何にでも合う可能性を秘めた楽器だということは自然に染みついていました。同氏の兄弟子には、「やのとあがつま」として矢野顕子さんとユニットを組む上妻宏光さんもいらっしゃいますし、会の伝統として現代的な曲をオリジナルとしてCDを出す、という風潮もあったので現代音楽に三味線を用いることは私にとってむしろ自然の流れでした。
その上で、自分の好きなジャンルが渋谷系やジャズ、サンバでした。自分の好きなことをやっているうちに作家で親友の宮野弦士さん、TOKYO GROOVE JYOSHIのプロデューサーの金子公一さんにファンクやR&Bを教わり、自分も年齢を重ねながらそういった音楽も大好きになっていきました。

—— 「川嶋志乃舞」名義で発表している「City Shake」や「トリカブト」を聴くと三味線がグルーブ感やジャジーなフィーリングを一層引き出していますが、そのアイディアはどこから来ましたか?
まだ若いのに70年代の音楽的手法をとても上手く取り入れていますが、そういう音楽的ルーツや趣向はどこからきましたか?

川嶋 宮野弦士さんの編曲が、最初の一歩となる道を拓いてくれたなぁと思います。その道のプロフェッショナルとか、マニアの方と一緒に作ることで「あ!これこれ!これがやりたかった!」って、かゆいところに手が届く感じ。宮野さん以外にも、レギュラーサポートメンバーの友重悠さん(ベース、アレンジ)、油布郁さん(ドラム)らの存在も大きいです。
彼らはすごく音楽的教養が深くて、ご飯を食べたりお酒を飲んだりしていても、ずっと音楽の話。そんな中、私は伝統芸能上がりなので、好きなのに実は知らない、「ルーツミュージック」が自分の中にたくさんあるのです。「なんでそんな曲書けるのに、この曲知らないの?!」と言われることがしばしばあって忘れられないくらい悔しかったです(笑)。
彼らの会話の中で置いていかれたくなくて必死でした。こっそりShazamしたり、教えてもらったり、セッションに連れていってもらったり、そういった「(音楽文化間での)留学生気分」が今の私を音楽的マルチリンガルにしてくれたのかなぁと。そんな教養深い彼らだからこそ、三味線が入っていても和風に寄せたりせず、ルーツを大切にやりたい曲を一緒に完成させてくれました。感謝しかないです。

—— テレビ番組「二代目 和風総本家」のテーマ、フジテレビ「大相撲ODAIBA場所」のテーマ曲にもなった「花千鳥」は三味線インスト曲のキラーカットとなりましたが、作曲や楽曲の制作時に考えていたことは?

川嶋 作曲からレコーディング、MIXまでの納期が3週間しかなく、めちゃくちゃ必死でしたが、そういう時こそ大事なものを掴んで曲を作れるものなのかなぁ、と実感。東京藝大卒業後最初の仕事だったのでよく覚えています。
「老若男女・万人が燃える相撲のテーマソング」ということを明確にして、そういう系統の曲を思い浮かべたら、私調べの「インスト」大賞は「情熱大陸」(葉加瀬太郎)と、「歌」大賞は「めざせポケモンマスター」(松本梨香)。この2曲を聴きまくって魅力を徹底的に研究しました。BPM 140くらいのファンク。だけど自分らしいメロディにリズムの伝統的アクセントとして「相撲甚句」の相撲太鼓を取り入れました。雅楽に用いられる律音階も入れて鮮やかに編曲してもらいました。どこに出してもかっこいい1曲になっていてお気に入りです。

—— 「三味線」を前面に出すことで、ポップス方面では「色物」として見られてしまうリスク(実際にあるテレビ番組でそういう形で取り上げられた経緯も)がありますが、そのような見え方を今後どう払拭していきたいと思いますか?

川嶋 見慣れていない楽器は何でも物珍しいものですよね。悪意がなくても、珍しそうな目で見られてしまうのは、どの民族楽器も同じだと思います。それにその楽器の伝統が長ければ長いほど、現代の私たちが簡単に変えられない音色や旋律のパワーが強い。それにどう向き合うか、私の中での(現段階での)答えは「愛の引き算」です。
パワーのあるものに頼り切ってしまえば、それ以上方向を変えられない。だから敢えて楽器に対して自分勝手になってみる。バンドの中でも出過ぎないし、アピールしすぎない。それが主役素質のある楽器の扱い方かもしれません。
私は「ドラムストリングス(叩く弦楽器)」としての他の楽器がどう頑張っても成れない魅力を三味線に持たせてあげることだけにこだわることにしました。三味線だけじゃなく、歌やピアノ、グロッケン、それにダンス、自分にできることを楽曲を通して表現する中に三味線がしれっといる。私自身がバンドに三味線を持って参加しているのと同じくらい、三味線も自然となじませてあげないといけないのです。ずっと持っているとパワーが強いから、なんでも食ってしまう。ソロトランペットやサックスも立場は似ているかも。「CHiLi GiRL」のプロジェクトではより一層それが実現しそうです。
こんなにナチュラルに三味線を仲間に入れてあげられるのは、今のところ世界で私だけだと思います。もっとそういう(演奏家の)人口が増えたらいいのになぁ、きっかけをたくさん作って、世界を広げていきたいですね。

—— 「川嶋志乃舞」は伝統芸能家として、そして新たにポップスフィールドでの活動を「CHiLI GiRL」として進めるにいたった経緯は?

川嶋 まず私は作家向きなんだと思います。どんな曲でも作れるタイプなのです。それに加えて、民謡芸人スイッチと、アーティストスイッチも完全に入れ替えられるのです(演じきってしまうというか)。それで、求められる幅がものすごく広がって、いつしか自分が本当にやりたいことよりも、他人が私に求めていることをこなす方が自分を食ってしまったという感覚に陥りました。かろうじて自分の好きな曲も書き続けていたけど、「CHiLi GiRL」を始めると決める直前まで本当に心が死んでしまっていた気がします。でも伝統芸能とポップセンスとの掛け算の中で求められるものに応えるところは、私がやらねばという気持ちがあるので、それはやりたい。そうしたら、「川嶋志乃舞」を終わらせるわけじゃなく、本当の私を放出できる環境を新たに作るのもありなんじゃないかなと思ってそう決めたら、もうなんでもできそうな気がしました。(出発するのすごくにパワーは要りましたけど)。親、先生、地元、学校、ファン、振り返ればいろんなものが付いて回っていて失ったら困るものだらけだったので、アーティストとして「失うものなんてない!私のやりたいことに誰にも何も言わせない!」って思える音楽活動がやっとできたことが新鮮で!
あと、実は今まで、「川嶋志乃舞」を自分自身でファンではなかったのです。ただ凄い人、努力家で天才肌なハイキャリアの人物、としか思えなくて。なんだかもうひとつ、面白みが欲しかったんです。
「CHiLi GiRL」は、例えば高校生の時に聴きたかったアーティストなくらい自分で大好き。やりたいことを楽しくやってる感じ!そういう理想的なプロジェクトと、お利口で頑張り屋、器用で面白い「川嶋志乃舞」とでやっと「私」になりました。

—— 「川嶋志乃舞」と「CHiLi GiRL」を並行して進める事で楽しく、自分の音楽を100%やりきれるということですね。
今後「CHiLi GiRL」として、最大の武器でもある三味線を使ったサウンドをどういう方向で進めていきますか?「CHiLi GiRL」としての最初のアルバムはどんなものになりますか?

川嶋 2020年12月2日に渋谷WWWではじめて「CHiLi GiRL」として企画を打ちましたが、自分的に得るのもが多く大満足で未来の見える最高の一日となりました。
「CHiLi GiRL」のコンセプト「スパイシーでチャーミング」を大切にして、気分や会う友達によってメイクを変えるみたいに「どんな自分も自分!」って言うのを肯定してあげられるようなアルバムにしたいです。可愛い声も、色っぽい声も、ビターな声も自在にこなしていきたいな。私の曲にはグロッケンの登場頻度も結構多くトレードマークだったりするので、ライブでも演奏しています。金平糖みたいなグロッケンとスパイスの聞いた三味線、あと私の信頼を置く最高にクールなサポートメンバーと制限なく音楽を作りたいです。楽しみにしてて!

—— 「スパイシーでチャーミング」、ここで言う「スパイシー」はどういう意味になりますか?

川嶋 私の中での「スパイス」は、ずるさといじわるさ、楽器セレクトやジャンルのアクセントを意味します。歌詞に登場する女の子はわたしの理想の女の子像になることが多くて、そこにオリエンタルであったりアラビアンであったり、三味線であったり、といろんなスパイスを調合します。チャーミングさは、そのままです!「CHiLi GiRL」ではずるくて可愛い感じと。あとグロッケンがトレードマークになってます。
わたしはCymbalsとThe Cardigans、それからDoja Catが特に好きで、どの方もスパイシーでチャーミングだなと思っています。

—— 最後にコロナ禍でアーティストのみなさまも活動の仕方が変わってきていると思いますが、制限も多い中、今後どういうことに力を注いでいきますか?

川嶋 検索すればすぐに真実に突き当たってしまうSNSの世界で、少し幻を見せたいというのも「CHiLi GiRL」が大切にしていることなのです。アートワークの亀井桃ちゃんの描くイラストと、私の思いや音楽を掛け合わせていって、リスナーのみんなには「ときめきフィルター」を五感に携えてほしい。シュガーもスパイスも、少しかかってる方が美味しいですよね。みんなが感じる世界も、ただ目の前のことを当たり前に過ごすより、体の内側からそんなフィルターをかけて、ときめいて過ごせるように働きかけたい。リリースもアイテムも、たくさん発信していく予定です。みんな大変なので、ファンの励ましももらいながら一緒に乗り越えていけたらいいな(笑)。
会わなきゃ聴けない音楽より、会いたくなる音楽を作っていけるように頑張ります。

(2020年 12月)

【川嶋志乃舞・CHiLi GiRLの試聴はこちら】

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