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バッハ エピソード35 お父さんの耳はすごい

バッハの次男カール・フィリップ・エマヌエルは、伝記作者フォルケルにあてた手紙の中で、父親バッハの優れた感覚について語っています。彼は父の指導があったからこそ自分が成功することができたと語り続けており、初期のバッハ神話を創り出した人でした。
下記は、その次男エマヌエルが書いた手紙の内容の一部です。


調律が上手い

自分が楽器を調律したり、調整しても、父を満足させることはできませんでした。そういったことは父が自らしました。父はオーケストラ全体の音を調整するように、自分の楽器をとても上手に調律することができました。


オーケストラのメンバーの配置が完璧

父はまたオーケストラのメンバーを完璧に配置し、演奏を行なう場所に応じて巧みに音響効果を引きだすことができました。というのも、それぞれの建物の特徴がひと目でわかってしまうからなのでした。


間違えたらバレる

父は、どんなに複雑な音楽でも、その中に小さな誤りが一つでもあれば、その音に気付きました。

作曲家としての能力

和声法に精通し、またそれをみごとに聴きわけることのできた父は、ほどよい強弱でヴィオラを演奏しました。そして、若い頃から比較的年齢がいくまで、父は素晴しく巧みにヴァイオリンを演奏し、そうすることでオーケストラをみごとに統率することができました。また、声部がいくつもあって、たくさんの楽器で演奏されるフーガを聴くと、主題の提示の後で、どんな対位法の技法を使うことができるかを指摘し、自分の言った通りのことがおこると、父は満面の笑みを浮かべて、そばにいる私を肘でつつくのでした。


とこんな感じで、本当にエマヌエルは父親をベタ褒めしてたんですね。

こうした内容をフォルケルは次男や長男、バッハの知り合いなどから色々と聞き、資料を集め、1802年、最初のバッハの伝記を出版しました。しかし、当時、バッハへの関心はそれほどでもありませんでした。

絶版:バッハの生涯と芸術 (岩波文庫 青 507-1) 文庫 – 1988/1/18
J.N. フォルケル (著), 柴田 治三郎 (翻訳) 
絶版だったので、中古でゲットして読みました。

バッハへの関心が一気に高まったのは、1829年、メンデルスゾーンの指揮によって『マタイ受難曲』を100年ぶりに再演したことがきっかけとなり、劇的にバッハへの関心が一般の人々にも浸透し始めるのでした。



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