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Post Post Truth

正しさとは、エモから懸け離れたものであると思っている。

Ⅰ Truth

まずこの世に、絶対的に正しいことなんてそうそうない。

1. 魔女は存在する。

例えばこんな文章だって、今のところ僕は魔女を見たことが偽だと思うが、歴史上には魔女が存在したとして起こった出来事もあるし、第一、今まで見たことがないから居ないと断言するのは帰納法であり、論理学的に誤りである。明日には魔女を見つけるかもしれない。
よってこう言いかえることができる。

1a. 魔女は "東京都内に(物理的に)" 存在する。

1b. 魔女は "ハリー・ポッターシリーズの世界に" 存在する

1a.は、東京都広しといっても有限なので隈なく捜索すれば居るか居ないかわかるであろう。1b.は自明に真と言えよう。

つまり、物事の真偽は、それを解釈する「意味の場」とセットで初めて決定する。(ごく少ない例外を除けば)

第一、正しさなんてのは恣意的な真理値割り当てとそれから恣意的な推論規則によって導き出される部分集合でしかない。

ゴリラは消費税である。
消費税は富士山である。
よってゴリラは富士山である。

妥当だが健全でない推論として有名な例であるが、我々はこれを笑うことはできないと思う。
我々の「正しさ」に「なぜ?」をぶつけていくと、どこかで「ゴリラは消費税である」レベルに非自明なハードコアにぶつかると思う。

「正しい」は所詮、恣意性とトートロジーのみの産物でしかない。


Ⅱ Post Truth

物差しがない時代、対立のない毎日。自分が誰なのかわからなくなるのは当然なのかもしれない。

ハードコアを非自明と切り捨てた結果残ったのは、空虚なオンリーワンであり、ポストモダンという行き止まりであった。

実際、本質的なことを議論しようとすると、7割くらいの確率でこんな結論に持っていかれてしまう。

たしかにそう考えたら正しいかもね、まあ人それぞれだから

この議論自体も何も間違っていない。しかし、それだけなのだ。それ以上何も齎さない。

加えて、正しさのようなものはそもそも人間にはあまり向いていないとも思う。

黒神めだかの完全なはずのドラミングをいくら聞いても
どれほどすごいと思っても
ぴくりとも感動しないのは彼らの心なのだから
――めだかボックス 134箱目

正しさを程度問題に拡張した先には「最適化」があると思う。様々な制約の中で最も大きなパフォーマンスを発揮する選択をすること。人生における「正しい選択」なんてのはそれを指すと思う。

しかし、そんなのは人よりもよっぽど機械やプログラムのほうが得意であろう。より「正しい」サイズのパーツを作るのは今や機械のほうが圧倒的であるし、より「正しい」音を出すためには楽器や歌で演奏するよりも打ち込みで制作したほうがいいであろう。


で、正しければ何だというのか。

我々は正しくあるために、何かの目的を遂行するための歯車として、生を消化する存在なのか。


Ⅲ Post Post Truth


正しさなんてのは、意味の場への忖度である。

それはすなわち、自由意志の自殺である。

今は明らかに間違っているといわれている事であっても、当時は「正し」かったものなんていくらでもある。天動説に始まり、人種・国籍・身分差別に至るまで、あらゆる「正しさ」がFragile―強固で、それ故に脆い―であった。


ではAnti-Fragileのためには何が必要か。


僕は、「そんなこと皆解って楽しんでんだよ」精神だと思う。

正しさが「意味の場への忖度」、ポストモダンが「意味の場の破壊」だとしたら、こちらは「意味の場の創造」だといえる。


ハードコアを生み出すということ、その非自明さ、恣意性を楽しむということ。

昨今、急進的なリベラリストがとりあえず自由・平等を叫ぶのを耳にする。それは至極正しいことだと思うが、それで何がうれしいのか、内目的的な意味ではなくその改革を望んでいる人がどれほどいるのかということはわかっておかなければならないと思う。

障碍者を貶価することはもちろんよくないことである。そんなことは議論するまでもないことである。それを踏まえたうえで、彼らのことを笑う。そこには確固たるリスペクトが存在する。


我々人間の悪い癖として、すぐパターン/文脈に落とし込んでしまう点がある。それは科学的思考として存在する。意味の場に固執し、新しい事象も今の価値観―自然法則―に基づいて解釈しようとする。

しかしながら、そこから逆説的に示唆されることとして、我々が「人間らしさ」を見出すのは、そんな法則から逸脱したものであり、メタ超越的な自己表現であると思う。


正しさという「流れ」に逆らうことで、その抵抗として自己を認識できるのだと解釈している。

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