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ローリングストーンズ/刺青の男 1981

◾️TATTOO YOU 1981年  

1.スタート・ミー・アップ
2.ハング・ファイアー
3.奴隷
4.リトルT&A
5.ブラック・リムジン
6.ネイバース
7.ウォリッド・アバウト・ユー
8.トップス
9.ヘヴン
10.泣いても無駄
11.友を待つ

ビルボードアルバムチャートで1981年に1位を獲得している。1.スタート・ミー・アップはバンドの代表曲で現在のライブでもセットリストに入っている。ところが代表曲のスタートミーアップから聴いてみると、イントロのギターから既に奥に引っ込んで聴こえる。2本のギターの掛け合いやコンビネーションがいつもより希薄で、作り込んで行けて無いのは一体何なんだろう?と思い聴き進めていくが、最後までその状況で終わってしまうのが本作品の最初の感想。

その理由は、既に決定しているライブ・ツアーに合わせてアルバムをリリースするために少ない時間的な事情が背景。リリース出来そうな未発表曲を探してその選曲時間、そして後から手を加える作業優先して新曲は少なくなった結果だった。新曲もアルバム先品分の出来上がってなかった。この事情を察して作品を聴くと改めて興味深い。いつもの他作品と雰囲気が異なる。

Wikipediaには1972年から遡って未発表曲音源をミックジャガー以外のメンバーが殆ど関らずに1つの作品にしてリリースした作品となってある。

◆制作期間/1980年10月から1981年7月 1981年9月ワールドツアー開始

この短期スケジュール下での作業は、
・膨大な未発表曲の中から曲の選曲作業。
・曲を迅速に決定するためにプロヂューサー、制作サイドが主体となって進めた。ミックジャガーがメインで関与。
・2つ新曲もあるが6.ネイバースと9.ヘヴン※ネイバースはスピーディーにパンキッシュでシンプル録音仕様に「縛り条件」で仕上げる。

◆曲目抜粋感想
1.スタート・ミー・アップはレゲエテンポ最終仕様を、一番最初に弾いたギターのアップテンポのロックバージョンを採用したようだ。しかしその英断が歴史的偉業になった。バンドの歴代代表曲。

2.ハングファイアーはドラムのチャーリー・ワッツのスコンと抜けた独特のビートを刻むのが聴きどころ。ジャズドラマーの叩くロックのビートとは、という視点で聴くと興味深い。たまに出くわすファルセットのコーラスも貴重。

冒頭のスタート・ミー・アップとハング・ファイアーの1~2曲目の流れが気持ち良い。これで勝ちが見えた。

6.ネイバース新録音のネイバースは採用する曲が固まってきてから「足りない雰囲気や流れを補足する」というアイディアで制作したか?
なおかつ新作アルバムからライブで盛り上がる曲というテーマも忘れていない。しかしこの曲がそれこそ、いかにも「ストーンジーなナンバー」で好きです。※やはりチャーリーワッツの独特音の抜け感や刻むビートが気になってしまう。

11.友を待つ 1974年のイッツ・オンリー・ロックンロールのアルバムに作風が雰囲気が似てる。その懸念を回避するのとさらに新鮮に聴かせ、曲を一段違うステージに昇華させるために考えた結果は、ジャズ界から巨匠ソニー・ロリンズをというトンでもアイディアになったか。極限状況のテンションが上がった時の突飛な発想なのか。ダメ元でミックジャガーがオファーしてチャーリーワッツが感嘆したそうだ。結果大成功した奇跡のブッキングに賞賛。

◆総評
リリースされた作品もかれこれ長い年月が経過した現在、全体の音数の少なさがかえって「力が抜けたリラックス」して流れている。一方で攻めてる曲もうまく配置された作品。過去曲の録音曲メインなのでミックジャガーの歌が若い。相変わらず若いバンドという結果につながった。

それに反したこれ以上にないミックとキースのフェイス・タトゥーの逆張りアイディア。どうせやるならと、この攻撃力、メーター振り切った破壊ぶり。

プロヂューサーのクリス・キムゼイの過去曲の発掘力、またどうしても音が足りなければ、思い切って外注で追加する速攻の決断力。ミックスしたボブクリアマウンテンの手腕等、結果に完全にコミットできた作品。
スタートミーアップは1980年代を代表するロックナンバーだ。
アウトテイクを中心に1枚の作品を短期間で仕上げ、売上も評価とも偉業を成し得た稀有なバンドなのである。

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