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ポール・バターフィールド・ブルース・バンド /ファースト・アルバム 1965

◆ アルバム概要
ポール・バターフィールド・ブルース・バンドのファースト・アルバムリリースの経緯は、エレクトラ・レコードに勤務するプロデューサーのポール・ロスチャイルドが友人の勧めでシカゴのブルース・バーでのポール・バターフィールドのライブステージを目撃した所から始まる。
同日の夜、別の場所で、ギタリストのマイケル・ブルームフィールドのギタープレイも目撃する。

エレクトラ・レコードは当時はフォーク・ミュージックのレーベルだった。1964年、新規マーケットのエレクトリックな「ロック」という金脈を探していた。
ポール・バターフィールドのバンドに天才ギタリストのマイケル・ブルームフィールドを融合させることを閃いた。

更には本物の(シカゴ)・エレクトリック・ブルース・バンドでなければならない。ハウリン・ウルフのバンドで演奏してしていたジェローム・アーノルドとサム・レイの黒人2人をリズム隊に据えることで補強が完了した。

ポール・ロスチャイルドのビジネス手腕での結成が、白人&黒人のハイブリッドで本格的ブルース・バンドを誕生させた。

◆楽器演奏者への入門書、耳で学べる教科書的作品
各楽器パートは数多いステージで得た演奏の基本が完成されてるので、これから新しく楽器を始める人には分かりやすく、勉強になる作品。

ある程普殿の楽器のスキルのある人にもフレーズ構成や取り組み方、アドリブのセンスなど模範的だ。

◆メンバー
ポール・バターフィールド  リード・ボーカル ハープ
マイク・ブルームフィールド リードギター
エルヴィン・ビショップ リズムギター
ジェローム・アーノルド – ベース
サム・レイ – ドラムス 、 リードボーカル (I Got My Mojo Working)
マーク・ナフタリン オルガン

◆曲目
Born In Chicago
Shake Your Money-Maker
Blues With A Feeling
Thank You Mr. Poobah
I Got My Mojo Working
Mellow Down Easy
Screamin'
Our Love Is Drifting
Mystery Train
Last Night
Look Over Yonders Wall

◆曲目抜粋感想
Born In Chicago

性急な8ビートに冒頭のポールのブルース・ハープから始まる。20代前半で短期間で身につけたスキルは、焦げるようなハープ音にマイケルのギターのオブリが対峙するように切り込む。
ブルースを土台に大音量ロックというクロス・オーバーなナンバー。

Shake Your Money-Maker
イントロからの鋭角的なマイケルのスライド・ギターと熱唱するポールのボーカルが相乗する。ここでも2人の若者のフロント・マンのほとばしる情熱が眩しいナンバー。

Blues With A Feeling
一転して、ミディアム・スローのナンバーもポールのハープの熱い情熱がバンドメンバーに伝染する。ボーカルのブレイク部分もブルースとロックの熱い部分が絶妙に共存している。
マイケル・ブルームフィールドの尖った独特のタイム感のソロ。ミストーンが出やしないかとヒヤヒヤするギター・ソロの構成と展開。
そして瞬間的に安定のペンタトニック・スケールを(わざと!?)外すフレーズへと流れる一連のソロが聴きどころ。
※以降マイケル・ブルームフィールドのギターソロの基本スタイル

I Got My Mojo Working
ドラムのサム・レイの黒人ボーカル曲は、シカゴ・ブルース本家であり、マディ・ウォータース直系の音が聴ける。

Mellow Down Easy
1コードオンリーのだが・ここでもシカゴ・ブルースに性急さが加味されたロックの要素が共存するナンバー。

Mystery Train
エルヴィス・プレスリーも歌ってる有名な曲だ。全パートの基礎的演奏が楽器演奏者に非常に参考になる。スタンダード化されたナンバー。

Last Night
マイナー・コードに少しシャッフル気味のミディアム・スロー・ブルース。Blues With A Feelingのミディアムさとは違った風味に後半のマイケル・ブルームフィールドのメジャー・ペンタ瞬間チョーキングと、上がるか上がりきらないチョーキングの混在具合が唯一無二で天才的タイム感が聴きどころ。


◆総評
シカゴ・ブルースにロックの要素が加味され、それによって汎用的な音楽に昇華された作品。
1965年という少し早い段階での冒険的なサウンドアプローチとその功績が大きく、近代エレクトリックのバンド・サウンドの完成形がこの作品で誕生した。

バンドメンバーの化学的融合(とくに黒人と白人の融合)は新鮮で画期的。看板メンバーのポール・バターフィールドとマイケル・ブルームフィールドはビジネス繋がりだったが、ここでの「音楽的野望」は合致していた。

メンバーのひたむきな情熱も上手く瞬間パッケージされた歴史的作品。
※アルバムタイトルの字体が既にアシッドでサイケっぽい。


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