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東京事変『一服』を聴いたオタクは人生を思って涙を流す

東京事変の新しいアルバム『音楽』が発表されました。

このうち、2曲が↓のティザー映像に収録されているのですが、2曲目に始まるのが『一服』です。(1:06くらいから始まります。※前半に流れる『孔雀』も超イケてる曲ですが、今日はいったん置いておきます。)

表から見ても裏から見ても「音楽」のネオンが象徴的です。

『一服』、バチバチにカッコいい曲です。
けど、最初はただカッコよすぎいいいいい!というテンションで聴いていたはずが、聴けば聴くほど泣きそうになってしまうのです。

なぜなのか。実はハッキリと理由があります。

『丸ノ内サディスティック』との対比

『丸ノ内サディスティック』という曲をご存じでしょうか。

シングルとしてはリリースされていませんが、椎名林檎としての1枚目のアルバムに収録されており、今でも人気の曲です。

この『丸ノ内サディスティック』と『一服』によって、東京事変・椎名林檎の「過去」と「現在」がつながっているのです。

調べたら、1999年発表でした。
今聴いてもむちゃくちゃカッコいいです。過去、たくさんの人がカバーしてますね。

東京事変としてもこの曲は何度もカバーされています。
こちらの映像でも、お客さんの歓声から人気の高さが伝わってきます。

『一服』にはこの『丸の内サディスティック』と同じコード進行が使われています。「丸サ進行」とか呼ばれたりもしています。
どちらも全く違う雰囲気の曲なのに、それぞれカッコよく仕上がっています。

このコード進行によって、デビュー当時から現在までを結びつけているんですね。
個人的にはエモいっていう言葉をあんまり使いたくないんですが、これはエモすぎませんか。

歌詞について

『一服』の歌詞からも、過去から現在につながる部分がいくつか読み取れます。

東京都渋谷区南平台の角の整形地二百坪 お店出したいですね
東京都新宿区矢来町の駐車場大きい何百坪 お店にしましょうよ

固定資産税に相続税 お勘定しようぜ 人件費はアップしたいね
当然よ/我らは 実現をしたいですね

どこかのインタビューで、林檎さんがキャバレー的なお店を開きたいと言っているのを聞いたことがあります。ひょっとすると本気でお店やりそうですね、この人たち。

『丸ノ内サディスティック』には「19万も持っていない/税理士なんて就いていない」という歌詞が出てきます。
それが今や「固定資産税に相続税/人件費はアップしたいね」ですよ。

上京して貧乏だった1人の人間がのし上がり、新宿渋谷にお店を出そうとしているなんて…
さすがにエモすぎませんか。

勤勉なあなた いとおしいね そっと讃えたいし安らいで欲しい
頑張ったんなら許したいね 時には自分を休ましておくれ

「勤勉」から連想するのは「日本人」です。
当たり前だったことが当たり前でなくなり、少しずつ疲弊している世の中。それでも一生懸命日々を生きる私たちへの労り。そんなメッセージを感じます。
あれ?東京事変ってこんなに優しいバンドだったの…!?(偏見)

自分の勘こそ信じていいじゃない 正解です おめでとうOTK

「OTK」とはどうやら「オタク」の略らしいです。
こういう遊び心いきなり入れてくるところ、いいよなぁ。「私たちを応援してくれてありがとう、あなた達の選択は間違っていないよ」という、ファンへの感謝と照れ隠しもあるのかもしれません。
え?エモすぎません?

勇気要りますの ヒールをやるには

ヒールとは「悪役」のことですね。
コロナ禍でライブを配信に切り替えたアーティストが多い中、東京事変は観客有りの普通のライブを開催してかなり批判されました。
そういう世間の反応も分かったうえで観客を入れてライブをした、「悪役をやるのも勇気が必要だったんだ」ということですね。

危険な合法ミュージック

ヒールのくだり含め、東京事変に限らず音楽やライブは世間から不当に扱われがちになってしまいました。これはそんな状況に対する彼らのアンサーのように思います。
「我々は悪いことしてないじゃないか、音楽って違法なの?」
こういうメッセージをあえて歌詞の最後に入れることで、皮肉も込められてる気がします。

人生が見えてくる

この『丸ノ内サディスティック』と『一服』を含めた『音楽』までの活動を通して、1人の人間の人生が見えてきます。

上京。デビュー。世間から注目され、成功し、ある時は叩かれ、あることないこと噂され…

そして40代を過ごす今、ポジティブに新しいことをやろうと考えている。

そんな曲が最新アルバムの締めくくりです。
しかもタイトルが『一服』。
20代からずっと戦い続けてきた彼女がやっとひと息ついて一服している、といったところでしょうか。

エモい通り越して、ちょっと泣きました。

ちなみに

冒頭に紹介したティザー映像で林檎さんを囲んで踊っている2人の女性。カッコよすぎてすっかりファンになってしまいました。

SISっていう姉妹のダンスクリエイターだそうです。

2人の振り付け自体もイケてるんですが、踊ってる時の表情が私は特に好きです。


そしてここまで書いておいてなんですが、私は林檎さんのOTKでも東京事変のOTKでもない、普通のファンです。なんかすいません。

けど、『一服』を聴いて、『丸ノ内サディスティック』を聴き直して、これはさすがにエモいと言わざるを得なかったです。

お店ができたら、絶対行きたいよね。

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