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2022 年間ベスト新譜ランキング トップ20

日々を懸命にサボっているところ失礼します、ハンコとギターロックと申します。


さて、2022年も終わりに近づいて参りました。なんだかんだでトピック盛り盛りの1年だったのではないでしょうか。



国内では、やはりどうしてもまず思い出されるのは安倍元首相暗殺、またそれに付随する統一協会問題ですね。世界に目をやると、ロシアとウクライナの間で戦争が勃発してしまいした。
そしてどちらも現在進行形で続いている問題です。

このnoteで政治的な主張をするつもりは毛頭ない訳ですが、「どう考えてもそれはおかしいとみんな分かっているのに、ずっとそれがおかしいままで、狂っているままでいる、いられる」事に対する歯痒さや不甲斐なさを深く感じさせられる1年だったと感じます。

そうした鬱屈とした空気が世の中に立ち込める中で、サッカーW杯ネパール大会での日本代表の活躍は、私達になにか光のようなものを見せてくれましたね。
ベスト8進出こそなりませんでしたが、あのドイツ・スペインに対して大金星を勝ち取りました。

個人的には、普段は「別に自分じゃなくて選手が頑張ったんだから俺が喜ぶのは変だろ」的な意見に傾いている側ではあるんですが、正直かなり嬉しかったですし、外国人のリアクション動画とかも見漁りました。ダブスタです。

「スポーツが人に勇気を与える」みたいなものは信用しないですが、それでも自国のチームの活躍は心を明るくするものがありますね。


それは現実逃避だ、と言われればそれは本当にその通りだと思います。というか、全てのエンタメは「蓋を開ければつまらない日常を、『つまらない』と思わずに済む猶予期間」を与えるものだと思うんです。

それはお笑いを見る時の笑いもそうだし、名著を読んだ後の読後感や、素晴らしい映画を見たあとのあの喪失感に似た感情もそうで、このnoteを読みながら今「前置きなげぇな…」と思っているそれも多分同じなんだと思います。そしてもちろん、音楽への感動も。

と、その通り、ここまでクソ長い前置きを書いてきたわけですが、それには理由がありまして、「このnote、あんま書くことなさそ〜」って気がしちゃってるんですね、実は。
正直今年そこまで掘れてもいないし、100位まで出す訳でもないし。
なので長い前置きを書いて来たわけですが、これ以上書いてもハードルが上がるだけな気がするので、そろそろ本題へ向かいたいと思います。

誰に向けて書いてるとかも意識せずにやってるので、説明が足りなかったり必要な前提知識が無駄に多かったりしたらすいません。
まあいずれにせよ、あなたの時間潰しにはなると思います。そこにはむしろ自信があります。

それでは年間ベスト…


スタート



2022 新譜ランキング









20   MINAKEKKE - Memorabilia

ユイミナコによるソロプロジェクトの2ndアルバムです。

キラキラしたアルバムジャケットからは想像出来ないダークなエレクトロ・ポップです。

特にM3「i/o」は早急なビートに揺らいだボーカルが乗っかった怪しい雰囲気(絶対君島大空remixより原曲の方が良くないですか)でありながら、ちゃんと一度聴いたら忘れないメロディが鳴っているのが素晴らしですね。
ちょっと後ろにつんのめるようなトラックに、ちょっと前のめりなボーカルが逆に丁度よく重なっています。

暗い雰囲気の曲が多いので最後の「Odyssey」がやけに明るくて初聴時はちょっとびっくりしたんですが、聴き返してみるとそんなにずーっと不穏ってわけでもないので、別に違和感はないですね。




19   Warpaint - Radiate Like This

L.A.出身のアートロックグループの4thアルバムです。

 シンプルでいい歌に、抑制の効いた繊細なアレンジ。
淡々としつつもリズミカルなドラムと低音を強調した元気なベースで形作られたグルーヴにエフェクトのかかった単音ギターが絡まっていく感じ、すごく好みでした。

この作品自体も素晴らしいですが、僕はこのライブ映像に非常に惹かれました。
より単音ギターの存在感が増していて、またジェニー・リーのベースがバンド全体を引っ張っていく様がよく確認できます。







18   Caroline - Caroline

ロンドンの即興音楽集団のデビューアルバムです。

基本はフォーキーなポストロックサウンドなんですが、M2「Good morning(red)」の終盤やM8「Skydiving onto the library roof」の終わり方からも分かるように、音の隙間に重きが置かれた演奏がされていて、その静寂の使い方がすごく巧みで、グッと心を掴まれました。

できるだけ静かな空間で聴きたいスロウコアです。筆者は夜に隣町の公園のベンチに座りながらイヤホンで聴いたりしてみました。






17   ミツメ - mitsume Live "Recording"

2010年代最高のオルタナティブロックバンドであったミツメによる、特殊な企画ライブ盤です。

これは簡単に言えば「ライブでレコーディングを行う」という試みなんですが、まあそこはぶっちゃけこの作品を聴く上でそこまで念頭に置くべきことでは無いです。

本作は彼ら自身によるミツメの楽曲の「人力Remix」群です。
全体的にジャジーな味付けがなされていつつ、静かにドライブするサウンドは、ミツメの新境地を予感させます。

どの曲も原曲から想像できないほど変貌を遂げていて、同時に「こんなことも出来るんかこの人達」という驚きがあります。

そして特筆すべきはベーシスト、nakayaanの貢献ですね。元から相当上手いベーシストだとは思っていましたが、今作特有のグルーヴィーなリズムが彼のセンスを爆発させています。
やっぱミツメって音の分離があまりにもいいので、ついついベース聞いちゃうんですよね。そういう時に毎回「いいベース弾くな〜」って思えるのは流石です。

あと川辺素この歌唱1発で出来るの地味にかなり凄くないですか。無茶苦茶上手いなこの人。

洗練されたバウンドサウンドが魅力的な1作です。






16   Girlpuppy - When I'm alone

アトランタを拠点に活動する、新進気鋭の女性SSWのデビューアルバムです。

Phoebe Bridgers、beabadoobee等の系譜にある、ポップなメロディをフォーキーなサウンド彩るインディーフォークなんですが、それ系だと今年1番好きでした。

Becca Harveyの歌声って絶妙に人懐っこくないというか、透明感があって暖かいんだけどどこか冷めた質感も持っていて、それが魅力だと思います。

あと曲が全部普通にいいです。
オルタナ/ドリームポップのM2「Wish」からカントリー全開なM6「I want to be there」まで、結構バラエティにも富んでいるので飽きずに聴けます。
今後に期待。

晴れてるけど家から出る気が起きない休日の昼間なんかに聴くと格別なんじゃないでしょうか。






15   Kelz - 5am and I can't sleep

ベトナム系アメリカ人プロデューサー/マルチプレイヤーのKelly Troungによるエレクトロポップユニットの1stアルバムです。

本当に音が綺麗で端正で、一つ一つの音が耳の奥に入り込んでくる感覚になります。
アコギの音と電子音の噛み合わせが非常に気持ちいいです。

聴き込んでも楽しい一方で、すんなりとBGMになってくれるしなやかさもあって。
こういうアルバムってそう簡単に出会えるものじゃないんですよ。

今年1年は睡眠導入として非常に助けになってもらいました。
(つい首が踊り出しそうになったりもしましたが)






14   羊文学 - our hope

 今や日本のオルタナティブロックを背負って立つ存在となった3ピースシューゲイザーバンドの3rdアルバムです。

いやー、やっぱ塩塚モエカはフェンダージャガーが出せる1番オイシイ音を迷いなく鳴らしてくれますね。音作りが上手い。ギターの音を聴くだけでご飯3杯は行けます。

正直初聴時は、塩塚の歌唱力・表現力が上がって何がしたいのかが分かってきた分、そのストライクゾーンに自分がいなくなったんじゃないかというような気がしたんですが、何度か聴いている内にそれは気のせいだったと考えを改めました。
このバンドは尖ったまま、オルタナティブなまま、ユニバーサルな魅力も手に入れています。

というか、よく考えなくても相当硬派な音楽ですよ、これ。
こういう音楽がチャートの上に上がったり、若者に強く支持されているというのは、塩塚モエカの歌と曲の訴求力を思い知ると共に、ロックの未来は明るいなと思えます。

僕のお気に入りはM4「電波の街」です。こんな剥き出しのポストパンクみたいな曲でさえJpopとして成立させてしまえるのは凄いですよ。

このランキングではこういう順位ですが、今後オールタイムベストでも各所で見るようになりそうな傑作です。







13   Loris S.Sarid - Seabed-Sunbath

グラスゴーに拠点を置くミュージシャン/サウンドデザイナーの2ndアルバムです。

タイトルにもあるように、海の印象が強くあるサウンドです。実際にさざ波の音が収録されていたりして、フィールドレコーディングの音が多いんですが、特に全体を通して使われている「コツ、コツ」という音が気持ち良すぎる。
それ以外にも、カリンバやアコギといった生楽器の弾く音がとても印象的で美しい。


この作品に関しては「音が美しい」以外の選出理由がありません。まあ、アンビエントですから。

目をつぶって再生すれば、薄暗い部屋の中から太陽の届く暖かい海の底にトリップ出来る作品です。








12   Wilma Vritra - Grotto

ロンドンの作曲家 Wilma ArcherとLAのラッパーVRITRAからなるユニットの2ndアルバムです。

今年残念だったことのひとつとして、hiphopの重要作にそこまでハマれなかったんですよね。上半期大きな話題になったケンドリックもそうだし、下半期音楽好きがこぞって絶賛していたQuadecaも個人的にはそこまででした。

結局自分はhiphopが聴けない古いロック耳野郎なのかな…なんて思ったりもしましたが、そんな中で気に入ることのできた数少ないhiphopアルバムのうちの一つがこの「Grotto」です。

Wilma Archerの作るトラックって、全くラップのトラックらしくなくて、サンプリング元も含めて、生楽器の音の比重が高くて、もうそれで曲として成立してる感すらあるんですよね。
そしてそこにVRITRAの冷静でロートーンなラップが乗っかることで、独特な世界観を生み出している。

個人的なお気に入りはM10「Every Evening」です。
前述したように生音が前面に押し出された明るい雰囲気のあるトラックに、VRITRAのラップが乗っかることでその明るさも何か意味ありげに思える。

ハマれたhiphopアルバムがこれ、というのがまさにhiphopにハマれない人って感じもしますが、まあ結局好きな音楽聴けてればそれでいいって話なんですよ。

逆に言えばロックリスナーでも聴きやすいアルバムだと思うので、普段あまりhiphopを聴かない人にこそオススメです。










11   リーガルリリー - Cとし生けるもの

はい、これはフェチ枠です。日本の王道オルタナティブロックの正統継承者であるリーガルリリーの2ndアルバムです。
筆者は大のPeople in the box信者なので、その影響を受けた彼女達の曲が好きじゃないわけが無い訳です。

たかはしほのかのどこか人間離れした、それでいて寄り添う優しさも持ち合わせている独特のハイトーンボイスはこのバンドの明確な武器ですよね。
もちろん演奏力が非常に高いバンドではあるんですが、訴求力はやはりそこが担っている。

 個人的に、羊文学もそうなんですが、3ピースバンド特有の、ギターの音がカラッとしたクリーントーンからエフェクター1踏みで轟音ファズになったり、深いモジュレーションがかかったりする感じが大好きなんです。

終盤のM10「9mmの花」〜M11「アルケミラ」のカタルシスは必聴です。

「僕が好き」って話をずっとしてますけど、対外的にもリーガルリリーの個性を決定づけたアルバムだと思いますし、ジャパニーズ・オルタナティブの旗手としてこれからも堂々とやっていって欲しいです。








10   Kikagaku Moyo - クモヨ島

今年のフジロックはYouTubeで見ていたんですが、配信で見た限り、今年のベストアクトは間違いなく幾何学模様でしたよね。なんであんなライブができるのに辞めちゃうんだろう。あんなライブができちゃったからでしょうか。

彼らは見た目こそ60年代ヒッピーで、民族音楽を取り入れてもいますが、ラストアルバムにしてしっかり“今”のバンドとしての深みを見せつけてきました。

ダンサブルな楽曲が多いですが、そのダンサブルさの由来はハウスだったり、確実にサイケ以降の音楽にあると思うんです。で、それを自分たちの音を一切崩さずに取り入れることで、聞いた事ない類のアンサンブルが生まれるという。

それにしても最終曲「Maison Silk Road」の曲展開は「“終わり”すぎるって〜泣」ってなっちゃいますね。あまりにも大団円で、あまりにも終着地点。

「このアルバムで解散です」と言われて、納得できすぎるくらいの作品だと思います。

ラストライブも見に行きましたが、活動を終えるバンドとは思えないほどアグレッシブな演奏をしていたので、本当に惜しい。










9   Nouns - WHILE OF UNSOUND MIND

今年の「なんだこれ」枠ですね。アーカンソー州発のエモバンドの7年振りとなる3rdアルバムです。

洗練された、先鋭化された激情」というのが本作の最も簡単な説明になると思います。
というか、音の部分は一言ではとても説明出来ません。ノイズまみれでシャウトしていたと思ったら突然日本語ラップが始まったり、アニメのセリフが挿入されたり、音もリズムも目まぐるしく変わるし。

ただ、エモバンドと言いましたが、どちらかと言うとそれこそParannoulのような、「宅録でオリジナルなサウンドスケープを魅せる」タイプのアーティスト達の同一線上にあるような音なんですよね。(実際コラボしてるし)
M8「MAROMI」とかまさにそんな感じがします。
新時代のロックの可能性を示唆する作品の一つでもあるかもしれません。

正直、この作品の魅力を存分に語れる気はしないので、まずは是非一聴して衝撃を受けていただきたいです。









8   Alex G - God Save the Animals

プロデューサーとしても活動するフィラデルフィアのシンガーソングライターの、神をテーマにした9thアルバムです。  

生楽器の音をを基調としつつ、それを電子的・ヒップホップ的発想のアレンジで彩るインディーフォークなんですが、まず冒頭3曲が名曲すぎる。
サビを外部ボーカルに歌わせたり、そういう尖りというかユーモアもあるんですが、僕はいい曲はいい曲である時点でいくら遊んでも許されると思うので、寧ろどんどんやって欲しいです。

全体的にやはり生楽器の使い方が気持ちいい。M4「S.D.O.S」のギロの感じとかマジでありがたいです。
そうした中でデジタルな音や音声処理を違和感なく取り入れられる、寧ろその同居が心地良いみたいな境地に達しているというのは、十年選手の腕を感じる所でもあります。

グッドメロディと遊び心に満たされたインディーフォークの名盤です。








7   The smile - A light for attracting attention

Radioheadのトム・ヨーク、ジョニー・グリーンウッド、そしてジョニーの映画音楽に参加していたドラマー、トム・スキナーによる3ピースバンドのデビューアルバムです。

というか、その2人がいたらもうレディオヘッドだろ!という気もするんですが、一方でもしレディオヘッドだったらこんなに粗く、シンプルな状態では世に出さなかっただろうな~とも。

やはりこの座組なので綿密な編曲がなされているんですが、組みたてのバンドだからこその初期衝動も強く感じられました。

そして改めて、トムヨークのメロディメイカーとしての強さを感じましたね。こういう音楽性ですぐこの人だとわかるメロディの個性があるのは強いですよ。

やっぱりここ6年間レディオヘッドは音沙汰無しでしたから…トム&ジョニーの新作が聴けて嬉しいです。
日本来ないかな〜









6   Flowerguts - elafiphobia

ポーランドの多作な宅録ミュージシャンの5thアルバムです。

樹木ジャケのスロウコアは大体名盤。ex)sonna、Jim yoshi pile-up…

素朴な癒し系シューゲイズ/フォークなんですが、全体を通してアコースティックな要素が支配的な一方で、絶対に宅録でないと出来ないノイズアプローチやサウンドクリエイトがなされていて、個人的にはスロウコア耳で聴きつつも、それこそ、また名前を出しますがparannoulを聴く時みたいな感じで聴けました。

徹底して叙情的で幻想的な一方で、ドリームポップ的サウンドスケープとアコギの生音との対比が効果的で、非常に感動を覚えました。過去作品も聴いて行きたいです。

というかもう新作が出てます









5   Arctic monkeys - The car

 気づけばUKロックの大御所になっていて、何故かイギリスの若者の間でバズっていたこちらのバンドの新作も良かったです。

前作で見せたリッチで渋い路線を更に深化させたような内容ですが、前作以上に映画音楽感が増していて、さらに没入できる作品になっています。

様々な音楽の要素を取り込んでいて、本当に複雑で凝った音を構築しているなーと聴く毎に思わされます。
わかりやすいカタルシスを避けつつ、音の美しさと大人っぽいディアンジェロ的グルーヴ、憂いを帯びたボーカリゼーションで魅せてくれます。

M3「Sculptures of anything goes」なんかを聴くと、しかしアレックス歌上手くなったなーと思います。しかも、ちゃんと自分の歌唱法を体得している。

まあこの人は多分その時のモードによってスタイルを変えちゃえるタイプの人だと思うんで、これからが楽しみですね。この路線で突き進むのか、はたまた。

もはや初期とは別バンドと言っても差し支えないほど目まぐるしい変遷を辿ってきたバンドですが、不思議とライブ映像とかを見てみると、今のモードでも「Brianstorm」のような楽曲が様になっているんですよね。
バンドとしてかなり脂が乗っていることが伺えます。

アレックスのステージパフォーマンスは随分変わりましたが、昔から一貫して、進んでオーディエンスと一体になろうとしない人だと思います。本当にごく一部を除いてコールアンドレスポンスを煽らないし、観客の方を向いていてもどこかそのもっと向こうを向いているような雰囲気があるというか。
その感じが、媚びない姿勢を感じて僕は結構好きなんです。

デビューから16年経ってこんな凄みのある音が出せるなら、この先も安泰でしょう。

日本に来ることも決まったので、出来れば見に行きたいですね。
日本にもtiktokでついたファンとかいるんでしょうか。いなさそ〜








4   Horse Lords - Comradely Objects

ボルチモアの実験音楽バンドの5thアルバムです。

ポリリズムとギターの反復フレーズの感じ、キング・クリムゾンの「太陽と戦慄」期と「ディシプリン」期を足して2で割ったような印象で、個人的にすごい好みでした。カンとかも近いかもしれないです。

 反復で成り立っていて音数もそう多くは無いので、ある意味でクラウトロック的快楽があります。
M3「May Brigage」のイントロを聴いた時は「俺の大好きなクリムゾンのアレだ!!」と思いました。クリムゾンのインスト曲好きな人は是非一聴して見てほしいです。気にいると思いますよ。

実験的かつ中毒性の高いマス・ハードコア・プログレッシブ・ロックです。






3   坂本慎太郎 - 物語のように

 元ゆらゆら帝国のフロントマン、坂本慎太郎の4thソロアルバムです。

今までの彼のソロ作品はどれも、作品全体を通して不気味な雰囲気と世界観があって、そこが良さでもあったんですが、今作は全体的にびっくりするほどポップで明るいんですよね

これが自分のムードにぴったりハマりました。なんか今年はずっと「いい曲」を聴きたい気分だったかもしれないです。

サーフロック調のM5「悲しい用事」では、最後の転調で不覚にもちょっと泣きそうになりました。
彼の作品でそういう気分になるとは思わなかったのでちょっとびっくりしたんですが、それが今回の作風なんです。

僕のお気に入りはM9「ある日のこと」です。
コーラスと一体になって進むボーカルとメロディがなんか可愛げがあって、あと歌詞もなんか共感できるような気がして。

全体を通して聴きやすくて、気持ちいい音に満たされたアルバムです。







2   Big theif - Dragon New Warm Mountain I Believe In You

バークリー音楽大学卒のメンバーからなるアメリカのインディーフォークバンドの5thアルバムです。

もはや彼らの作品は絶対に名盤であるという安心感すらありますが、今回は期待を大幅に上回る大傑作となりました。

僕は「シンプルでいい曲を書ける人が一番偉い」と思っているのですが(よってポール・マッカートニーは神)、エイドリアンレンカーはその意味でかなり卓越したソングライターですね。
M1「Change」M12「Dried roses」のようなフォーク全開な曲から、繰り返しのメロディがおどろおどろしいM10「Blurred view」のような暗い曲まで、幅広くクオリティの高い作曲力を見せてくれます。

フォーク色が強い曲が多いからこそ、M2「Time
Escaping」や「Blurred view」のような実験的なサウンドの曲が際立つ構成で、2枚組のボリュームでも全然飽きませんでした。

そして僕のお気に入りはやはりフォークと実験的路線が丁度よく噛み合ったM17「Simulation swarm」ですね。というか個人的には、今年1番いい曲はこれだと思います。

2回目のギターソロに自然とカタルシスが付与される感じとか、意図して作れるものじゃないと思うんですよね。とてもソングライティングの妙とバンドマジックを感じる1作です。






第1位は…







1    The 1975 - Being funny in a foreign language

はい。今年の1位はこれで間違いないでしょう。

前作、前々作と名盤を続けて繰り出してきていた彼らですが、今作も有無を言わさぬ大傑作となりました。

このアルバムは、僕の「ポップスの好きな部分」だけを抽出してくれたアルバムって感じで、本当にドンピシャだったんですよね。
M2「Happiness」の地に足の着いたダンサブル、M3 「Looking for somebody(to love)」の80sライクなシンセの音、M10「About you」のスケールの限りなさ、そして全体を通して冴え渡るメロディセンス。

それに加えて、M1「The 1975」 ではミニマルミュージック的な、M4「Part of the band」ではインディーフォーク的な、そして「About you」ではシューゲイザー的なアプローチ(しかしこのサウンドスケープは全て弦によるものだと言うから凄い)を行っていて、こういう音も本当に好みで。

しかも、今作は今までの彼らのアルバムの中でも収録時間が格段にコンパクトなんですよね。
個人的に、これまでのアルバムは「いい曲ばかりだけど、長いから正直ダレるし飽きる…」と思っちゃってたので、これは非常にありがたいです。

そして全て本当にいい曲。僕のお気に入りはラストの「When we are together」です。

先進的な試みとかをしてる訳じゃないので、評論筋からの評価は過去2枚に比べると正直落ちそうな気はするんですが、シンプルに曲のクオリティが平均的に高いです。
かつてのビートルズやクイーンのような、「名曲量産機」みたいな台詞、今の彼らにピッタリじゃないでしょうか。

さて、ここまで今作を褒めちぎってきましたが、まだ褒め足りない部分があります。

それは…


Sumer Sonicでのパフォーマンスです。

筆者は現地へは行けませんでしたが、wowowで生配信を視聴しました。
配信でもその迫力とカリスマ性が伝わってきて、鳥肌が立ちました。

マシュー・ヒーリーのパフォーマンスって、積極的に客と繋がろうとするし、カリスマ性もある中で、どこか退廃的な香りを漂わせているんですよね。そこに完全に掴まれました。
復帰1発目のライブを日本でやってくれてありがとうという思いです。


やっと「現代のビートルズ」と言えそうなバンドが現れてくれました。(まあ、彼らはずっといたんですが、それがハッキリしたということです。)
彼らの躍進を目の当たりにできるのは本当に喜ばしいことです。これからも楽しみです。

The 1975…





まとめ

はい、いかがだったでしょうか。今年も豊作ガッポガッポでしたね。共感出来たり、ここで初めて知って気に入ったアルバムなどあったら嬉しいです。

ここにあげたもの以外にも、Alvvaysとか、Betcover!とか、EPにはなりますがdowntとか、国内外、様々なジャンルで気に入った音楽がありました。多分来年はあまり音楽を聞けなくなるんですが、それでも出来るだけ新しくて良い音楽を嗜んで行きたいですね。

それでは皆さん、良いお年を……

















年が明けてからアップしてしまい、年間ベスト失敗…………

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