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#92 レイヴェイ『Bewitched:The Goddess Edition』

鈴木さんへ

 ごめんなさい。鈴木さんも仕事で関係あるエアラインの機内放送の収録があって、大幅にアップが遅れました。ベンソン・ブーンも声がいいですね。歌声に華があるから、センチメンタルな歌がさらにせつなく響きます。
 ポップだし、『Hello Love』のイントロのピアノも好きですが、教えてもらわなかったら、聴いていなかったと思います。だって、このジャケよ。タイトルをそのままヴィジュアル化したんだろうけれど、他に選択肢もあっただろうにと思ってしまいます。さらに20歳で、オーディション番組で絶賛されながらも番組の契約に縛られるのを嫌って、途中離脱したとか。気骨を感じて、ますます興味を持ちました。だからこそ、ジャケが残念! 男性は気にならないのかな、鈴木さん?
 さて、私が今回取り上げるのはサマソニでの来日が決まっているレイヴェイです。アイスランド出身なので、Laufeyと書いてレイヴェイと読みます。『Bewitched』は、今年のグラミー賞で最優秀トラディショナル・ポップ・ヴォーカル・アルバムを受賞していますが、そのアルバムに4曲を追加収録したものがリリースされたので、それをご紹介したいと思います。

レイヴェイ『Bewitched:The Goddess Edition』

 初めて聴いた時、1曲目『Dreamer』の冒頭のハーモニーにうっとりとなり、時間を引き戻された感覚に陥った。レイヴェイ自身の多重録音によるものだけれど、40年代に活躍したヴォーカルグループ、パイド・パイパーズの『Dream』がワッと浮かんできたからだ。
 収録曲は、ほとんどが彼女のオリジナル楽曲で、例外の2曲は、彼女が愛するジャズのスタンダードだ。この2曲ではジャズミュージシャンと共演しているけれど、ジャズのアルバムではない。強いて言うならば、ジャジーなのかな。ボサノバ風もあるけれど、あくまでも”風”であって、ジャンルを超越した世界が広がっている。

 実際にレイヴェイも、彼女のファンもZ世代が中心で、TikTokからのバイラルヒットで注目されるようになったけれど、Z世代の特長として配信で音楽を聴いてきたから、ジャンルで音楽を選ぶという概念が薄いんじゃないかと。その価値観が反映された作品だと思う。彼女自身は、幼い頃からチェロとピアノを習い、家では父親が好きなジャズを聴いて育ち、バークリー音楽大学への留学を経て、デビューとなった。その経歴を背景とした音楽だけれど、過去に私も多用していた「クロスオーヴァー」の音楽とは違う。ここが新鮮に響く理由じゃないかなと思う。

 そして、子供の頃から低音だったというアルト・ヴォイスがまさに魅惑的で、成熟した大人に間違えられるそうだが、でも、歌唱は若々しく、決して手練れなジャズ・ヴォーカルではない。そこも大きな魅力になっている。
 さらにストーリー性のある歌詞がいい。Z世代から支持されている『Letter To My 13 Years Old Self』なんて大人の私が聴いても涙が溢れてくる。この共感は、世代を超えられるもの。歌詞を知ると、もっと好きになってくる。
                             服部のり子

 
 



 


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