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頭の中の仮想敵との死闘篇

度付きのサングラスを注文していた眼鏡屋さんから完成したとの連絡があったから、美容院で髪を切ったのち、新宿まで受け取りにいってきた。帰宅してから早速鏡の前でかけてみると違和感を抱いた。なんだこれは。少なくともオシャレな印象は受けない。苗場よりも六本木にいそうな感じ……。

さすがに36歳にもなるとサングラスをかけたところで若者がイキっているようには見えない。むしろ単にいかつい人物に見える。絡まれたら面倒臭そう。電車の座席で隣に来てほしくない。鏡に映っているのはその手のタイプの男性だった。そんな印象を振りまきながら、俺はフジロックの会場を闊歩するというのか。本当はいかついアラフォー男性ではなく、あひるのペックルのようにチャーミングで人々から愛される奴でありたいと願っているというのに。

週末のフジロックに向けてじわじわと準備を進めている。前回はコンビニのレインコートを着て雨をしのいでいたが、今回はコールマンのポンチョで臨みたい。ついでに折りたたみの椅子を買おうと思ったものの、お前さん、それはさすがに客として楽しむ気が溢れ出してはいまいか、と考え直して自粛した。他にはモバイルバッテリーを買った。あとは長靴を押入れの奥から出さねばならない。着るものも考えなきゃ。

月の後半は締切が重なりがち。このところ、ひたすら文章を書いているので、だんだんわけがわからなくなってきた。蛇口がバカになってしまった感じがする。

文章を書く際、自分のなかで、抑圧と開放のせめぎ合いが繰り広げられている。思いついたことをすべて書こうとしたら、締まりのないぶよぶよした文章になってしまう。くだらないダジャレを差し込んでお茶を濁したりすれば読者から見限られるのは免れない。かといって、抑圧を強めるとアイデアが何も出てこなくなってしまう。でまかせ、でたらめに近いような生煮えの思考の断片を集め、それらをたたき台にしないことには文章は書けない。その段階で抑圧を与えるとろくなことにはならない。この文章を書くには自分よりもっとふさわしい人がいるはずだなどと考えたりするうちに、執筆への意欲そのものが萎んでしまう。

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