起きたらベッドの上で逆さまだった。

布団を枕にして、枕に足を乗せていた。こんなこと初めてに近い。

そして寝過ぎている。朝に寝たけれど、起きたら夕方はやりすぎだ。一度昼に起きたんだろう。その記憶がなくてまるで時間が飛んだような感覚に襲われて戸惑ったふりをしているのだ。なんと哀れなやつだと拾われたいね。

ずっと暗い部屋だけど、一度明るくなって暗くなっているんだ。少し目を離した隙に途轍もない変化が起きて、また視線を戻したときには何もなかったように元通りになっている。部屋でさえそれが起きるなら、もうどうしようもないことがあって、それが何事もないかのように事後報告されているということが世界で起きていてもおかしくない。悲しい事故や極限の寂しさが文字や声になって薄っぺらく伸ばされて届く。この部屋で響くときにはその緊迫感や震えはもうどこにも生まれない。そのままの厚みで届けるなんて誰も望んでないし、それも分かっている。

そういえば漫画を読んだんだ。寝る前だったと思う。主人公はただの生活を送っているのに、とても大きいことに巻き込まれて、俯瞰すれば一大事なのに、彼は何も変わらずやるべきことをやりたいと言い続ける。

事の重大さが分かっていないと言えばそれまでだけど、世界で起きていることだって同じだと思った。読んだ時には思わなかったのに、今不意に思った。世界の中に自分も含まれているなら、今起きている全ての事柄に巻き込まれているはずで、その渦の末端で揺れているはずだろう。その揺れに慣れてしまって、まるで何もないように寝て起きて、もう駄目だと毎日くだらないことばかり考えている。それが生活で、人生なんだろうけれど、もう少し目を向けるべき外側があるのかもしれない。

寝過ぎると頭がぼんやりしてこんなことばかり考えてしまうな。大き過ぎることを考えてまるで偉大だと自分を騙す。意見を言い合う機会もないから、それが誰もが考えている普通のことなんて気づけないまま孤独を深めていくんだ。あまりに寂しいけれどそんなもんだろう。

まだ暗い部屋で音楽を聴いている。少し詩を読んだり、送る予定の荷物のことを考えたり、今日はまだそれだけだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?