こんな日に、良い天気ですね、って言ってくれる人がいい。
それで、雨が止めばね、って答えたい。涼しくて風があって、雨がサワサワと音を立てる日に、部屋の中で過ごすのは心地良い。映画を見たくなるし、小説を読みたくなる。やりたかったことだって取り掛かろうと思える。
今日は午前中には起きた。雨が降る予定の昼までに外に出たかった。
起きて、ご飯を食べていたら予報は変わり、昼前から雨が降ってきた。だから外に出るのはやめた。
部屋で映画を見た。
夢が現実か分からなくなる話は好きなんだけど、もしかしてもう擦り倒されているのだろうか。小説や映画ではよくある手法なのだろうか。あれ、大好きなんだけどな。書くの難しそうなのに、書ける人はたくさんいるのだろうか。
いつもは辻褄を合わせようと無意識で勘繰るけれど、狂気でできた妄想の中ではそんなこと気にならなかった。現実を作り込んでいるから細部のずれが目につくけれど、現実から遠のいていくなら端々なんて意識の外へ弾かれるみたいだ。
不気味さと不安と、なんだかいろんな気持ちになった。悪夢みたいな、頭痛の中みたいな、ぐるぐる回って頭に重く響く話をもっと見たい。外が見えなくなるくらい入り込む主人公になってみたいと思った。
そして夕方になって、文字を書いたり、やりたいことを進めたりしていた。外気は冷たくて、寒くなったから窓を閉めた。
ちょうど米が炊けた。何がちょうどか分からないけれど、何かちょうどだった。
この部屋の外、ずっと遠くの場所での出来事を文字で知る。一生でいちばんの瞬間だと言わんばかりの言葉を並べている。その人が死ぬときも今日のことを思い出すだろうか、と思った。
好きなものや時間を通り過ぎていくんじゃなくて、自分にぐるぐる巻き付けながら何も捨てずにいたい。心が動いたことを忘れたくない。いちばんが変わっていくのは仕方ないけれど、いちばんだった事実は覚えていたい。
過去を切り離したいと常に望んでいるのに、過去を溶かしたくないと必死に抱きついているみたいだ。
部屋もだんだん薄暗くなって、ラジオが響いている。雨が激しくなってきて、もう全然良い天気ではない夕方になった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?