夜中に弾いて溶けた、ひとつ飛び出たような小さな部屋で。

ついに決めていたことを終えたので、買いたかったものを買った。週末の予定ができた。

その時に買い足せばいいと思っていたものも今日買いに行く。荷物は少なくしたいし、早くあったほうがいいから早く買いに行く。金にもならないのに、金だけを溶かしている。いつか自分の何かになればいいと願う。そうするように見るし、そうするように書くんだ。

見るのも聴くのも手放しでは駄目なんだ。影響はもっと重くて、その日を堺に自分が変わるような体験は自分の感情も大きいと思っている。沈むなら底まで沈んで空っぽの状態から満たされたいし、浮かぶなら天井まで浮かんでぱんぱんの状態から抜かれたい。

それなりの覚悟と、それと反する無意識を持って行かなければ何も変えられない。逆に言えば、それを備えていれば家の中でも変われるし、近所を散歩しながら聴く曲の一説に動かされる。そんなものなんだ。

そんなものに囲まれて、不確定な明日へ向かっているんだ。人間なんてそんな集団だ。


昼に起きて、ぶら下がった昼を滑るように外に出た。買い物をした。なんでもふたつずつ買ってしまうのは癖かもしれないと気づいた。自分でレジをするようになって顕著になったんだろう。

外は眩しくて、この間手に入れたサングラスをかけてみたらだいぶ快適だった。眼鏡をかける習慣がないからなんとなく緊張してしまうけれど、そんな気持ち忘れて帽子を被るように使ってみたら良かった。

あの犬とはもう疎通できそうにない。自分だけ見えていないみたいだ。寂しい。

帰り道、下校中の小学生の防犯ブザーが鳴り出した。まだ小さい男の子のランドセルについたそれを、その子より少し大きな女の子が焦るように止めていた。姉弟かもしれない。

なんでもないですと女の子が小さく言った。一部始終を見ていたのは自分だけだと思う。微笑ましくて笑みが溢れた。

すれ違い様、硬い笑みのまま、大丈夫ですかって言ってしまった。敬語だった。まだ6歳やそこらの子供に愛想のない敬語だった。

鳴っちゃった、と少年は言ってくれたけれど、へへ、と笑うことしかできなくて情けない気持ちになった。それはたった数秒の出来事だけど、なんか良かった。今日のハイライトみたいなことだった。

帰宅して、買ったものを詰めるついでに棚を整理した。今日は良い日かもしれない。

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