治ってしまうくらいなら痕にしてしまいたい。

もうあれが昨夜のことか、どこまでがあれの中に含まれているのか分からないほど生活がずれている。

楽しくて、帰りに本屋に寄ったけれど欲しい本はなくてそのまま電車に乗った。帰宅したのは夜で、風呂に入ってご飯を食べ始めたのは日が変わった頃だった。もうこんな時間かと思った記憶はある。

それから楽しみにしていた番組を何回か見て、どうして好きなものをこんなに繰り返してしまうのだろうかと思って、寝たのは朝方だった。

3時は深夜なのに、4時になると朝方の雰囲気が漂い始めてその間はどこなのだろうかと考えていた。気まぐれで送った誘いに期待はしていない。なんなら自分から誘っておいて断りの文章を考えていた。その言葉を頭の中で繰り返していたら眠っていた。

昼前に起きて、食事をして、音楽を聞いたり弾いたりして、久しぶりに映画を見た。つまらなくていいから疲れないでいたかった。

読んでいる小説の主人公の名前が思い出せずに考えていた。本を開けばすぐに分かるのになぜかそれをせずに考えていた。不意に別のところで聞いた名前が同じで思い出せた。たぶん自分で思い出すよりすっきりした。

夕方になったけれど外には出ていない。用がないからなんとなく部屋にいる。

ギターを弾いて指が痛くなった。それが上手くなっているようで嬉しくてまた弾きたくなる。でも痛いから上手くは弾けなくて結局置く。自分で付けた傷は少し強くしてくれる気がする。何か変えてくれる気がする。治ってしまうなら痕にしたい。見えなくなっても努力や経験が消えるわけじゃないとも思うけれど、そんなに全部覚えておけるほど賢くない。簡単に消してたまるかという気持ちでもう少し弾くんだ。


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