何のためらいもなく封を解いてしまえるさ。

夜中に聴きたいコーナーがあってラジオを聴いていたけれど、それまでの時間、なんか苦しかった。今出る曲はこんなに電子音ばかりなのか、みんな似たようなことを似たような言葉でとにかく速いテンポに乗せて歌っているのか。

この番組のターゲットがちょうどその層なのかもしれないし、たまたま今の自分が馴染めなかっただけかもしれないけれど、忙しなくて疲れた。

でも聞きたいところは聞けたし、そこはすこぶる良かった。それからその喜びで寝付けなくて寝返りを繰り返していたらいつの間にか寝ていた。

そして今朝は早く起きた。予定を済ませて本屋に行った。

電車を乗り継いで本屋に行った。欲しい本があって、今日はそれを買いに行くと決めていた。近くの本屋じゃ駄目だったんだ。

普段なかなかひとりで電車に乗ってまでどこかへ行くことはない。誰かと会うついでだったり、用事のついでに誰かと会ったりする。ひとりで行って誰とも落ち合わずにそのまま帰宅するなんてことはほとんどない。でも今日はそれをしてみた。本を買うためだけに街へ行った。

映画やライブならひとりで動いたことはあるし、会う予定だった人と会えなくなってひとりでいくつかの店を見て回って帰ったこともあるけれど、何かを買いに行くためにわざわざ行くことは本当にない。初めてに近い。何度も行ったことがある場所だけど、旅みたいな感覚だった。

映画を見るために初めての街へ行った時のことは鮮明に思い出せる。帰りの電車で聞いた曲や、迷いながら歩いた商店街のことを今でもちゃんと覚えている。いい思い出として残っている。

この本も、いい思い出付きで残したかったのかもしれない。

本当は誰か誘ってもよかったんだ。でもそれでお金を使うなら欲しいものを買いたい気持ちになった。今はそれより優先したいものが明確だっただけだ。それを綺麗な思い出にすり替えようとしているなんて汚いな。そうだ、ただ無情なだけだ。

もう過去になった未来日記だ。欲しかったものを全て買えた。ついでに寄った古本屋で欲しかった漫画が安かったからそれも買った。鞄の中が本だらけになった。

こうして誰も誘わずとも、ひとりで本や好きなものをたくさん買うだけで楽しめてしまう人間なのだ。気づけば食事も忘れている。

今日はたくさんお金を使った。見合う価値かどうかは吸収する自分次第だ。生活に溶け込ませたい。特別なものから、いつものものにしてしまいたい。

もう日は暮れた。遠くから泣き声が聞こえる。猫かもしれない。もう今日は寄り道しないで真っ直ぐ帰るんだ。

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