全てが遅くなる。

実感がある。覚えるのも前は感覚だった。夢中になるのもすぐだった。知るのも調べるのも、気になることのほうへ向いていた。

歳をとるにつれて全てが遅くなっていく実感がある。

忘れないようにしようと思った感覚も気付いたら忘れていて、忘れていることにも気付けない日々は苦しい。

良いとか悪いとか、正しいとか間違っているとかじゃなくて、ただただその現状が苦しくて耐えられない。もう終わりにしようと思うけれど、そんな気持ちもいつのまにか目に見えない場所にいる。このまま色々なことに追いつきたいのに届かない時間だけが過ぎるのならばそんな時間は早く捨てたい。この先、満足いくような、もしくは、満足してしまうほど鈍感な感覚になるのだろうか。それを考えると怖い。永遠の時間の中にいるようで、どこへも逃げられない未来が来るようで本当に怖くなる。

誰も悲しんでほしくない。この小さな苦しさに気付けないなら悲しむべきじゃない。悲しむことは自己満足だと思った。私がこの先、悲しいと思うこと、これまでそう思ったことは全てが自分の気持ちを持ち上げるための気持ちだったような気がする。そんなたった一瞬の気持ちを持つくらいなら永遠の思い出の方がいい。

この先を考えて、捨てたくないと思うことはあのバンドの新譜が聞けないこと、あのミュージシャンのライブが見られないこと、あの作家の新作が読めないこと、くらいかもしれない。もし、星になってしまうなら上を向かせたい。もし、透明人間になるんだとしたら最前で見たい。もし、消えてしまうんだとしたらそれが惜しい。それだけが原動力だ。

怒りじゃない。もっと激しくなりたいし、汚い生活をしたい。それはきっと現実で痛い。そんな世界でもまだ居たいと思えるかどうか確かめたい。

今のままでそれが許されるのか知りたい。できるならまだもう少しだけ耐えられそうだ。

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