見えないことは隠れているだけなんだ。

起きたつもりが寝ぼけていて、時計を見てやっと意識が鮮明になった。想定よりだいぶ遅くなったがまだ間に合う。急いで着替えて、食事をするとわずかに余裕が残った。

自転車屋に寄ってタイヤの空気を入れてもらう。空気が入ると少し高くなる。景色は変わらないけれど漕ぐときに足が伸びる感じがする。空気に摩擦を付けて進むなんて凄い発明だ。

まるで浮いている自転車に乗って目的地まで行く。雨が降るかと思っていたのに、日が照っていて暑かった。早めに着いたから本屋に寄って気になる雑誌を読んだ。

それから用事を済ませて、図書館へ行った。本屋では立ち読みは肩身が狭いけれど、図書館はそれをする場所だから変な感じがする。数冊取って椅子に座って読んだ。画集や写真集はなかなか本屋には売っていないし、買うのも躊躇うお値段だから助かる。

こんなに情報に溢れている時代なのに、本にまとめてくれている方が分かりやすい。膨大な情報が点在していると、線を結ぶには時間と熱量が必要になる。知りたいことは大体が線のほうだし、易しい本はその点と線を分かりやすく教えてくれるから好きだ。

入り口なんてどこまでも易しくあってほしい。ひとつ通れないとその先に入れないなんて、そんなに閉鎖的なのは寂しい。

首が痛くなるまで食い入るように見て読んで数時間経っていた。外に出ると小雨が降っていたけれど、気になるほどではなかった。

下校中の学生のほうが気になった。声、動き、素早さ、もう全てに馴染めない。いつだって馴染めたことなんてない気がしている。

好きな画家はことごとく上手くいかない時期があったみたいでもっと好きになった。信頼し合っていた人と些細なことからなんとなく縁が切れて、良くないことは重なるものだからさらに居場所もなくなって、こんなに寂しい人は好きになっちゃうよね。

感情を揺さぶられている最中、良い知らせが届いて、もうどうしようもなく嬉しい気持ちだった。弄ぶ余裕があるほど高揚していた。でも溢れ落とすのは勿体無いから我慢して、浮かれていた。

帰宅するとこの間買ったCDが思っていたよりとても早く届いていて、それはそれは嬉しい限りだった。良いこともこんなに重なるものなのかな。部屋に入ってすぐ、神様ありがとうと言った。返事はないけれどそれでいい。

自分は、見えないものも見たいし、隠れているものを想像したい。全てを疑いたいし、その分隅々まで信じたいのさ。

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