君は何をしたら楽しんでくれるの。
二度寝の果てに目が覚めたのは昼過ぎだった。よりによっていちばん暑い時間に起きて、外から吹き込むわずかな風を扇風機で回して茹っていた。もう茹だるようななんて比喩じゃない、本当に溶けていた。
ラジオを聞いて、起き上がる気にもなれなかったけれど、いろいろと別のことを考えてしまって嫌になったから起床した。文字を書いて、文字を少し読んで、何を食べようか考えていた。
ただ自分が楽しんでくれればいいのに、その方法が分からない。他のことを考えなくて済むように、何かに集中して逸らしている。
君は何が好きで何が嫌いなのかい、と聞いては答えを待って、聞かれては答えている。
こんな気分が周期的にやってくると、せっかく良かった日々もそこで途切れてしまう。くりかえされる諸行無常じゃないか。一度失うから蘇るし、ずっと続くから繰り返す。
午後、畑で何かを焼いていた。その匂いは部屋の中まで微かに届き、洗濯物を駆け抜けていった。すぐに止んだ煙の見えない火は昼間を熱くさせる。足りない酸素をもっと奪い、当たり前に熱風を起こす。
昨日、床を掃除した。風呂場も掃除した。だから裸足が心地良くて歩きやすいし、なんとなく気分も良い。
でも今はカーテンを閉め切っているから床に反射する光がない。隙間から覗く淡さだけで目が痛い。外はどれだけ眩しいだろう。
数ヶ月続く夏を越すことはできるのだろうか。次の夏を待てないかもしれない、とふと思って寂しくなった。それは誰にだって言えることで、誰だって言えることだ。人類とか地球とかその規模でだって言えることだ。
それならやっぱり楽しませてみたいと思う。この夏くらい嫌われたっていい。でももし次の夏が来たら気まずいな。嫌いな人とは会わなければいいんだけど、でもまた夏が来ちゃったし、会わなくちゃやっていけないし、どうしよう、みたいになるのも含めて楽しんでみたい。
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