もう行かないって思ったあの日の、鋭利な棘はまだ抜けていない。
起き抜けに今夜の予定ができた。
昨夜寝たのがそこまで遅かった記憶はない。今日だって朝目が覚めた気もする。でも起きたら昼過ぎだった。
目が覚めた記憶も夢だったのだろうか。
論点なんて勝手にずれていく。そこじゃないところで話をして苛立って、結局相手の手のひらにいる。手のひらで踊っている。
今日は雨が降るみたいだ。夕方、降る前に駅まで行きたい。
音楽を聴いて、電車の時間などを調べて、着替えまで済ませた。暑いけれど、電車や店は寒いかもしれない。この人工的な感じは苦手だ。茹だる暑さもやる気を削いでいくけれど、浸かる寒さも体に突き刺さる。
この間遊んだ時、蚊に刺されていた。血を吸われていた。帰ってから気づく赤みは小学生以来の量だった。それがまだ痒い。数日経ってずっと薬を塗り続けているのにまだ痒い。
今夜の心配は憂鬱へ変わっていく。笑いながら誤魔化す未来の嘘が目に見えて寂しくなる。聞きたくもない話を聞いて、何を答えればいいのかも分からないから薄ら笑いで上塗りするんだ。
頭の端では別のことを考えている。だから記憶に残らないし、どうでも良くなる。吐き出せば満足なのかな。誰にだって、言いたいけれど君には言いたくないってことがあるだろう。それは信頼であり優しさなんだろうけど、そんな当たり前の関係性さえ方向を計算してしまう虚しさを知らないのかな。
別れる時、なんで来たんだろうとか思うんだろう。だからいつも行かない。でも今日は行く。そして、もう行かないって思ったあの日のことを思い出す。
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