いつから水さえまともに飲めなくなったんだろう。

肌寒くなって布団を被ったら、ベッドの近くのゴミ箱が倒れた。夜と反対側を向いていたから、いつもはかからない部分に布団が当たって倒れた。ティッシュがいくつか散らばっていた。ゴミ箱を立ててそれらを戻す。まるで何もなかったかのように元通りになった。

でも凝視しなければ分からないほどの小さなゴミはきっとまだ床に残っている。部屋の隅に溜まった埃は生活の吹き溜まりだ。この間掃除したのに、といつも思う。自分がいなくてもこの部屋には埃は溜まり続ける。地球が回っているからなのか、物質が存在しているからなのか、難しいことは分からないけど、風のせいだ。

それなのに前髪が揺れただけで生きる気になれるし、汗が乾いただけで夏も嫌いじゃなくなる。

もう秋風が吹いている。水を飲めば口の端から溢れて服が濡れる。一気に飲めば喉を通らずに咽せる。加減が分からなくなっている。理由も特にないのに、不器用が加速している。でも、器用だった子供の頃より、どんどん不器用になっていく今の自分の方が好きな気がする。

昨夜、ずっと見たかった映画を見た。良い映画だった。今日は昼過ぎまで寝ていた。起きて、食事をして、好きな番組を見て、過去に書いた映画の感想を読んでいた。

何かを捨てた、あのころの感性がいちばん好きだ。何も覚えていないくらいずっと潜っていた。それを青いと言うなら間違いなく青かった。

それからいろんな経験をしたわけでもないのに時間だけが色を褪せさせて、もう藍色だ。ずっと夜みたいな静かさがある。もっと激しくありたいんだ。

夕方になって、布団の中も暑くなって窓を開けた。外に出たくなった。特に書くこともないから散歩でもして何か考えたくなった。そんなことを思っている間に日が暮れた。夏は日が暮れてから暗くなるまでも長いけれど、これからは一瞬だ。その分、気持ちが動いてからの瞬発力が求められる。

やりたいと思った瞬間に動けるくらい身軽でいたい。


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