知らない人の過去まで抉っていくような言葉を書いてみたい。

昨日、疲れ切った昼間と打って変わって楽しい夜を過ごした。楽しみな予定も入った。

日が変わって、好きなバンドの新譜を聴いた。いろいろなことを忘れたかった。帰宅しても残る冷たい異物や、これが続く不安や、できない自分への苛立ちやもどかしさを詰め込む箱を欲していた。

言葉は音に乗ったって抉っていくから痛い。その鋭利さが技量でありセンスなんだろう。傷だらけの過去にまだ傷を負わせたがっている。苦しくなるのに、傷跡を治したくないから繰り返し聞くんだ。

人から貰った言葉を思い出して、そのあとの光景が蘇る。湿った肌の質感や、踏みつけられたような空気が曲に重なる。汚したいわけじゃないけど、ちょっとだけ預かってもらうような気持ちで聞いていた。

今日はなかなか起きれずに何度寝も繰り返して昼過ぎだった。雨が強く降っていた。窓を叩きつける音が意識の端で聞こえた気がする。

気圧に気圧されていた。笑えない気持ちと体調で寝返りを打ち、好きな番組を見ながら笑っていた。

自分も、夏休みに入った瞬間学校のことを忘れるような子供でいたかった。彼は今しか見ていないんだろうな。

今がその時じゃないのに、先の想像をしたり、後に引きずってまで考えるのは止めたい。それならせめて次の楽しみを見ていたい。楽しくないことをするためにやってるわけじゃないし、苦しみを待つために生きているんじゃない。もっとシンプルでいいと思うんだ。

どうすれば普段通りでいられるか考えるけれど、もう普段通りが分からなくなってしまったから、いつでも楽しそうに笑っている人を想像する。彼らならどう対応するだろうか、どう割り切るだろうか。自分に足りない部分が見えてくる。でもその補い方なんて習ってないから、まずは気持ちから作る。今はまだ、どうしても誤魔化せないけれど、それはまだ慣れてないだけだと言い聞かせて誤魔化せないことを誤魔化す。

雨が止んで黄色い夕方がやってきた。部屋まで過去のように戻していく。夜はまた本でも読みたい。

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