価値観を捨てる ー森本あんり「日本版読者に向けて」

「学芸員」観だけでなく、「博物館」観、「文化財」観、いろんな価値観がある。

それって当然じゃないの?どんな価値観であれ、そこから自由になることなぞできないのだから、自分の価値観に従って学芸員課程で伝えたらいいのでは?

と、思うかも知れない。

神学者、森本あんりさんの話を聞いてみよう。

ある時代のある文化に生まれ育つ者は、まずその文化の規範をみずからのうちに取り込むことで成長する。つまりわれわれはみな、人として自我をもつ存在となった時点で、すでにその文化がもつ特定の常識や価値観の産物となっている。

ほらね、やっぱりそうじゃない。だから、それを伝えるしかないんだって。

でも、森本あんりさんは続ける。

だから人が他者化の問題を意識するときには、かならず自分の常識や価値観の問い返しとなり、それまで自分が学んできたことの「学び捨て」(unlearning)にならざるを得ないのである。

森本あんり「日本版読者に向けて」トニ・モリスン『「他者」の起源-ノーベル賞作家のハーバード連続講演録-』2019

なんでもいいのだけど、「博物館が資料を収集したり、調査したりすることが当たり前」と思っている人は、そういうことが当たり前だと思わない人と出会うことによって、自らが持つ常識や価値観を疑うことができる。

自分が当たり前に身につけている常識や価値観から、一旦自由にならないと系統立てて教えることは難しいのではないかなぁと思う。


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