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第二部「男女道成寺」にまつわる話

先日、歌舞伎座第二部も楽しみました。

私が初めて見た舞踊が猿之助さん(当時 亀治郎)の’京鹿子娘道成寺’でした。この時の衝撃は今でも忘れられません。だから道成寺物は理屈でなく好き。心臓がバクバクしてテンションが自然と上がります。

紀州の道成寺に伝わる伝説をもとに作られた作品たちが’道成寺物’。その中でも京鹿子娘道成寺は集大成と言われる大曲です。白拍子花子が一人で踊る舞踊です。第二部の「男女道成寺」は花子と桜子が二人で踊ります。しかも桜子は、実は狂言師左近、男性なのです。最初こそ女性の姿ですが、途中、正体がバレて男性に衣装チェンジします。

花子は勘九郎さん。桜子実は狂言師左近を尾上右近さん。
幕が上がった時にジワが起きました。二人が美しい。勘九郎さんはTVの仲蔵の余韻がありましたが、それが吹っ飛んでしまいました。同じ姿で踊る二人の息がぴったりですごい。確か二人は初共演ですよね?花道七三で同時に鐘を指すシーンが大好きです。動きがぴったりで、きたーっ!という感じ(笑)

途中で桜子が男性とバレて「楽屋で着替えてくる」とはけていくのが、右近さんが面白くて笑いました。左近になってからの右近さんの美少年ぶりが眼福です。右近さんは踊りに勢いがあり、見ているとパワーをもらえます。お客を巻き込む感じがいい。

勘九郎さんは終始女方の踊りです。キレもあるし、しなやかだし、目が離せない。右近さんとは違うオーラでお客を取り込んでしまうのもすごい。踊りのことはよくわからないけど、こうして二人並ぶとタイプの違いも面白いです。引き抜きも楽しかった。

観ながら思い出しました。菊之助さんと海老蔵さんの男女道成寺。とても華やかで目の覚めるような舞台でした。海老蔵さんの左近がかっこよくて、菊之助さんの花子が綺麗でうっとりしたのを覚えています。

左近の見せ場の一つに、三つ面の踊りがあります。三つの面を振り向いた瞬間にチェンジして、面のキャラクターになって三役を踊り分けるのです。後ろを向いた時に面を渡す後見さんとの息を合わせる様子も見ごたえあります。右近さんは巧みでした。

それこそ思い出しました!猿之助さんの「奴道成寺」
この踊りは男性である左近が主役です。澤瀉屋の型がありお家芸なのです。歌舞伎座のお客を盛り上がらせ、割れんばかりの拍手だったのが蘇りました。三つ面の交換が激しくて、踊りの名手である猿之助さんだからこそのシーンでした。

昭和55年の筋書きに三代目猿之助の言葉で、
「奴道成寺は曽祖父初代猿之助が明治期に復活したものですが、私のは藤間勘十郎師が新しく振付して下さったので、ほかの方々のとはだいぶ違っています。従来は二枚目半だったのが私のは純二枚目で、華麗と軽妙がミックスされています。

三つ面のくだりは相当手がこんでいますが、ここは後見が演者と一体で活躍いたします。後見の動きをよくご覧頂きとう存じます。振り鼓もほかの方はなさらず、派手な仕上がりになっています。」とあります。

右近さんを観ていたら、猿之助さんの左近をまた観たくなってしまった。

道成寺物は、理屈抜きに素人の私も、曲も踊りも楽しめます。絵も華やかで豪華。何より歌舞伎役者さんの身体能力の高さに感動します。

勘九郎さん右近さんのペアは新鮮でパワフルで楽しかったです。有難うございました。

次の「ぢいさんばあさん」が泣けた話はまた今度。

aya

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