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「鬼揃紅葉狩」を連続で観る

楽しかった4日間。連続して歌舞伎座第一部を観てきました。「歌舞伎座定額制パスポート」のお陰です。こんな贅沢は普段はできません。松竹歌舞伎会会員に発売された(現在は締め切っています)定額で二階席が見放題の夢のパスポート。

来月の襲名公演の一等席1回のお値段くらいで一か月間、一部~三部まで見放題です。この話を聞いてから仕事などを調整して計画を立て、連続見物を実行したいとワクワクしていました。

猿之助さんの初日からを追ってみて、お役が体に入っていくというか。。染みていく様子を観ることができたと思う。10年ぶり三度目の鬼揃紅葉狩。心と体の潜在的な記憶があるとはいえ、感覚をものにするのは何日か必要なことと想像します。でもそこは猿之助さんです。習得するのはきっと早い(笑)


「鬼揃紅葉狩」初日は肩で息をしているのを見ました。更科の前の姫姿は、打掛から鬘からとても重そうです。でもそれより初日感なのかもしれません。私は大興奮だけど(笑)舞台感覚を追いながら。。みたいな感じも伝わる。

この演目は扇使いも眼目の一つだと思っています。夏の梅枝さんの「紅葉狩」は二枚扇の振りが難しそうに感じました。澤瀉屋は二枚扇の場面はありません。それでも、ふわっと浮かせて回してキャッチしたり、飛ばして門之助さんがキャッチしたり、猿之助さんの手の中で複雑に向きを変えていく様子は簡単そうにやってますけど、絶対に難しいと思う。

初日はさすがの猿之助さんも扇と一体化ではなく、ちょっぴり珍しいお姿に嬉しくなったりしました。

また、幸四郎さんをはじめ、鬼女メンバーの若手は初役です。澤瀉屋の紅葉狩は、人数が多いのでフォーメーションも重要なところ。確認しながらという感じは否めないけど、逆に考えると初日にしてこの完成度はすごい!となりました。

幸四郎さんとは阿吽の呼吸でできるから安心して観ていられます。すごかったのは二日目。

この日は猿之助さんの出から雰囲気が違いました。オーラが増してました。姫の時にふと出てくる本性とのギャップが大きくなりました。扇を使って、姫の顔と鬼の顔を交互に出すところなんて最高でした。

曲調が変わるところで本性がどんどん出てきます。姫のままで、顔をゆがめ、大股で歩き、姿勢を崩す。「おりゃぁぁぁ」と男性声で叫ぶのが二日目を観て納得。横を向いたまま幸四郎さんに向かってなのですよ。初日はタイミングだったのか目立ちませんでした。でも姫と鬼の緩急がついたのを観たら、そこだけ目立たなくてもいいと思えました。その前の段階から十分に鬼を体現してるから、その延長で面白いと思える。梅枝さんの時は、美しいイメージのままいきなり男性声を正面を向いて言ったから驚いたのかも。

その「おりゃあ~」からが澤瀉屋版紅葉狩の最高にテンション上がるところ。姫姿であの激しい振りは澤瀉屋だけでしょうね(笑)13年前、このシーンに心奪われました。

そして、幸四郎さんが戦う装いで登場します。猿之助さんは長袴スタイルの赤毛の鬼女。幸四郎さんの足拍子が強く響いてびっくり!それに呼応して猿之助さんも激しく、二人のバトルが二日目にしてこんなに熱くなるなんて驚きでした。お客も盛り上がり拍手もバンバン。鬼女の立廻りはものすごくハードです。息に声が混じり、全力で幸四郎さんに対峙しているのに胸が熱くなりました。

三日目、猿之助さんは落ち着いていました。姫と鬼の切り替えのタイミングの’間’が絶妙になり、ここぞというところでお客の反応がくるようになりました。お客を取り込んでしまってる。コンマ何秒の感覚で、見せ場の前後に’間’ができてリズムができていたり。これは計算ではなく、私が観ている限り自然な個性かと。猿之助さんはこれが小気味いいのです。

今回の演奏は、長唄、常磐津、竹本の掛け合いです。長唄が途中で現れるのが圧巻なのですが、その時の猿之助さんの間合いというか、厳かな空気感が最高に素敵です。こういう雰囲気から本性を出していくまでが本当に上手い。曲とも一体になりつつありました。

四日目の今日。花道から登場し七三で止まり、猿之助さんは劇場内をゆっくりぐるっと見渡します。山の紅葉を見ているのです。本舞台に行っても客席を見るように紅葉を見ています。そうすると空間が広がる感覚に襲われました。戸隠の深い山の中。美しい紅葉に囲まれた風景が浮かびます。

紅葉を愛でながらの踊りは明らかに初日とは別のものになっていて、口角を上げて微笑む更科の前がそこにいました。だからこそのギャップ。「おりゃあー」で激しくなるその時まで、だんだんと盛り上げていくのが心憎い。夢中になっていました。

鬼女になってからも然り。途中、幸四郎さんと二人になる当たりから本人が一段階アクセル踏んでくる感じ。どんどん盛り上げる。猿之助さんが力を全開にしているのが伝わると、私も血がグルグルまわる感じになる。で、刺されて殺されちゃうと私もぐったりする(笑)


日を追うごとに面白くなって興奮しました。チーム感も出てきたし。若手侍女たちの化粧も進化しています。鬼女になってからの若手がとにかく元気!歌舞伎座は広いから人数が多くて見応えあります。


生の舞台は一期一会。一日たりとも同じ芝居はありません。さらに私の心の状態も日々変わります。だから感じることも日々違う。猿之助さんはいつも予想を遥かに上回ってくるからすごい。まだまだ書けますが、また来週に。

今月の演目にちなんだお菓子「紅葉狩」も美味しかった。舞台一面の紅葉が美しい。猿之助さん方と一緒に秋を満喫している気分になりました。

私の観劇はまた来週です。この後は「荒川十太夫」のことも書いておこうと思います。

長野市にある卯月堂の紅葉狩

aya


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