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當世流小栗判官また興奮してしまった

初日以来の第一部でした。

やっぱり面白いのですよ。もちろん、今までだって何度観ても面白い猿之助さんのお芝居はたくさんありました。でも観たのに面白い+α みたいな感覚はとても久しぶりだと感じています。

昨年の仮名手本忠臣蔵を若手中心で上演した「花競忠臣顔見勢」猿之助さんの戸田の局を観て「おっ!」となり、ガッツリ古典が観たくなりました。翌月の伊達十での政岡でさらに思いは強くなり、1月「四の切」で本物の忠信役のすばらしさに、やっぱりいわゆる古典が観たいとなったのです。

古典の定義の正解がわかりませんが、ここでは置いておいて。踊らず、早替りせず、ちゃんと人であり(笑)、スーパーでもなく。こんなに毎月のように楽しませてもらっているのに贅沢ですし、他の方と違うことをしていく方だとわかっていても、the歌舞伎役者みたいな猿之助さんが観たかった。

猿之助さんが演じる二役、小栗判官とその元家臣の漁師 浪七。以前はお駒もしていましたが、二役になったことで立役のキャラの違いが際立ったように思います。それぞれの所作や表情、言葉や雰囲気に至るまで。

小栗判官は二枚目風情で淡いピンクのキラキラしたお衣装が澤瀉屋っぽい(笑)何と言っても暴れ馬の鬼鹿毛を手なづける場面が見所です。初日よりも緩急ついて、猿之助さんと馬の距離がどんどん縮まっていく様子が楽しい。愛情を寄せて可愛がる時の表情なんてとても素敵です。

ちなみにスーパー歌舞伎Ⅱ「新版オグリ」でオグリを演じた時より、疫病禍になり、かなり男っぷりが上がってしまったと思うのは私だけですか?やっぱり猿之助さん自身が変わったなぁと思うのです。今回の小栗判官が断然面白くなったように感じるのは、猿之助さんの変化もあるかもしれません。

歌舞伎の馬ってすごいと毎回思います。中に役者さんが二人入り、前足と後足をそれぞれ担当します。でも今回の鬼鹿毛のように走り回るだけでなく暴れるのは珍しく、澤瀉屋の動物たちって大変なイメージがあります。

記憶に新しいところだと「新版オグリ」で登場したメタリックな鬼鹿毛。尋常でないくらい走り回り暴れていました。衝撃を受けたのは「ヤマトタケル」の巨大な白い猪!あのスピーディで迫力満点な動きは本物の獣のようでした。あ、あと「吃又」の戦う虎。あまり上演がない部分で、澤瀉屋のやり方の時に登場します。とにかく動物も派手です(笑)

鬼鹿毛に表情があり楽しい。上手いと思うし、猿之助さんを乗せて碁盤の上に乗る見せ場はウキウキします。ちなみに碁盤には猿之助さんの紋’三つ猿’がついてます。

一方、浪七は現職が琵琶湖の漁師。荒々しくて、言葉が関西のイントネーションです。元小栗判官の家臣です。お顔も強そう。さらにかっこよくなっていて驚きました。判官に忠義を尽くし、照手姫を命をかけて守り助ける熱い男。

11年前に観た時、亀治郎時代は女方のお役がほとんどでしたので、こういう線の太い立役は違和感がありました。今は全く違和感なく、むしろずっと見ていたいと思う。

いちいちかっこいいお役なのですよ。照手や女房がピンチの時に、サッとやってきて敵を倒す。キャーっとなる(笑)

で、さらわれた照手姫を助けに行くため、手負いの女房との別れ際が心憎い。そこからの猛ダッシュ!そして七三の見得!メラメラ燃える忠義の塊になって行く先を睨む形のかっこよさ!これは花横で観てほしい猿之助さんの形です。

そこから気持ちを途切れさせず大立廻りへ。血だらけの浪七が命をかけて戦う。猿之助さんは今月も全力なのでした。

浪七を見ていると、渡海屋の銀平や碇知盛が見えてきたと思いました。確か先代は演じたと思うのですが、四代目はニンではなさそうかな。。と無意識に決めつけていた。けど見えたし、見てみたい。そんな妄想までしながら楽しみました。

小栗判官と浪七。こんな猿之助さんが観たかったのだと改めて興奮したのです。現在、たくさん歌舞伎座の舞台に立っていますが、この方の引き出しはまだまだあります。だから止められない。

そして、この面白さはチームワークの良さも要因の一つ。他の方々のお話は次回に。


aya



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