見出し画像

神田松鯉 神田伯山 歌舞伎座特撰講談会

昨日、歌舞伎座で一日だけ行われた講談会。

十月大歌舞伎「荒川十太夫」上演記念
神田松鯉 神田伯山 歌舞伎座特撰講談会
~神田松鯉傘寿を祝って

昼の部に行ってきました。
松鯉先生、お誕生日おめでとうございます。

とにかく笑って、話の展開にドキドキして、幸せでした。歌舞伎座ということもあってか、歌舞伎ファンも多い雰囲気。もちろん講談ファンも多いなぁと普段の歌舞伎座とは異なる様子にワクワクしっぱなしでした。

何よりお二人に感謝なのは、歌舞伎座が満席になった景色を見られたこと。弥次喜多の千穐楽のよう。何だか嬉しかったな。それと同時に悔しくもありました。今、歌舞伎座ではこんなにお客が入ることはないからです。チケット代だけではない理由を歌舞伎はもっと追及していくべきだと思いました。

伯山さんは松之丞時代、歌舞伎座タワー内にある「歌舞伎座ギャラリー」で定期的に高座を開いていました。当時から「日本一チケットが取れない講談師」と言われ有名でしたが、なんでだかその会は私でもチケットを入手できたくらい珍しい会。100人キャパで濃密な時間を何度か過ごすことができました。いつか歌舞伎座で講談をするのが夢、と言っていました。それが叶う日に立ち会えて嬉しかったです。


さて、この日は示し合わせたわけではないのに友人が多くて予想以上に楽しく過ごすことができました。普段はチケット入手困難の伯山さんが歌舞伎座に来てくれるとあっては、叶うなら行くしかないですよね。

快晴でした

始まる前の客席のワクワク感がすごくて興奮しました。緞帳が開くと中央に高座。その後ろに広がる背景の素晴らしいこと!歌舞伎の大道具さん方の底力がすごい。お二人にちなんで襖絵が松葉とダイナミックに跳ねる鯉。二人の紋もあしらわれ、一日だけではもったいないほどの作品でした。

最初に登場した女性のことを全く知らず。。松鯉先生のお弟子さん、神田鯉花さんだそう。開口一番からスタート。柳沢吉保にまつわるお話は伯山さんのリクエスト。最初は緊張して言葉が走っていたけど、途中からどんどん落ち着いて堂々として楽しくなっていきました。歌舞伎座は女性が立つことはそうそう無いので歴代の女性たちに並ぶ大事かと思う。

タイムスケジュール

そして、満を持して神田伯山が揚幕から登場です。ものすごい拍手!しかもあたたかい。花道を進み、二階三階が見えるところまで来ると一生懸命見上げて手を振ってくれた。客席を見回す様子に感動してしまった。夢見た景色の感想を聞きたい。高座に上がり、第一声から伯山ワールドでした。

辛口でいろいろギリギリなのは、猿之助さんで慣れてるから(笑)そんなことを思いつつ毒舌がスカッとして楽しかった。歌舞伎ファンに配慮してくださり、講談初心者向けの話をしてくれたのも優しくて好きでした。

伯山さんの前にマイクが1本立っていました。すごく音が良くて、こもることも無く、反響することもなく、リアルな声が言葉となって三階にも届きました。100人でも1800人でもこの方のパワーは等しく客席に響くのだなぁと感動です。

伯山さんは「安兵衛駆け付け」「安兵衛婿入り」を続けて披露。全く飲み物を口にせず語りっぱなしにびっくり。

中でも安兵衛の高田馬場の決闘の場面が圧巻でした。バッサリ斬る時の迫力!これは歌舞伎役者なら’当たり役’!老若男女全てを一人で演じ分ける匠。スピードアップしていく語りは、こちらも思わず前のめりになっちゃう。物語の絵が浮かぶ。で、ふっ。。といきなり力を抜いたしゃべりに、私も力が抜ける(笑)緩急自在であっという間でした。

来月の歌舞伎座でかかる「荒川十太夫」で安兵衛(堀部安兵衛)を演じるのは猿之助さんです。この日の三つの講談の芯にある人物が全て安兵衛でした。語りに合わせて脳内再生は全て猿之助さん(笑)強い剣客になった猿之助さんを想像しながら聞きました。

仲入り(休憩)後は「特別鼎談」いわゆるトークショーです。進行は吉崎典子さん。松鯉先生と伯山さん、そして松緑さん。松緑さんは来月、荒川十太夫を演じます。

松緑さんが伯山さんの講談のファンで、いつも楽屋で聞いているそう。それがご縁で二人の交流が始まり、この親子会、来月の新作歌舞伎に繋がりました。

松鯉先生の穏やかなお人柄に癒されました。マイクがあるのに地声で話し始めちゃうし(笑)また、素敵だと思ったのは、言葉が丁寧で古風なところ。そして、師弟の絆。継がれていくのは芸だけでなく、心も継がれていくのかもしれないと感じました。それに、歌舞伎と講談のコラボがこんなにも面白く感じるとは想像以上でした。


ふたたびの仲入り後に松鯉先生の「荒川十太夫」です。伯山さんがビッグウェーブなら、凪のようなイメージでした。

揚幕から登場するとより一層の拍手。なぜだか花道七三で、頭の上で両腕で〇(まる)のオッケーポーズで応えている姿が、失礼ながら微笑ましくてほっこり。けど、ひとたび話しが始まると空気を一変させてしまいました。

内容は来月のネタバレになるので、歌舞伎美人HPのあらすじをご覧くださいませ。

語りの時代味に感動でした。この日がお誕生日で80歳。十太夫の時代を生きた方ではもちろんないけど、まるでタイムスリップしたかのよう。けれど私の脳内では来月の配役で再生されるわけです(笑)ストーリーを初めて知りましたが、十太夫と安兵衛の短い出会いが話の肝になりそう。

その場面の松緑さん猿之助さんが浮かび、これは是非観たい!と強く思いました。赤穂浪士である安兵衛は、十太夫の中で生き、救われるのではないだろうかと私は感じることができました。もし、あの儀式的な場面があるなら、猿之助さんの美しい所作も堪能できるかもしれません。

すっかり世界観に引き込まれてしまいました。来月はこれが立体化され上演されますので、ますます楽しみになりました。


拍手が大きく、ふたたび幕が開きました。松鯉先生、伯山さん、吉崎さんが登場し、全員で三本締めをして感動。幸せな一体感でした。また歌舞伎座で講談会をしてください。待っています。歌舞伎座スタッフの皆様も有難うございました。

そうそう、名古屋の御園座で決定したそうです。伯山さんの独演会で内容は同じです。10月歌舞伎座第一部をご覧になる方は是非。

aya


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?