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八月の啓蟄

今年もあとわずかです。
猿之助さんの一年の舞台を振り返っています!

今年一番、印象に残っている言葉です。

「啓蟄」

7月千穐楽のあと、8月のお稽古を始める前のPCR検査で猿之助さんが陽性になってしまいました。信じられなくて戸惑っている中、主演の猿之助さんの代役を巳之助さんがなさると発表がありました。

演目は、三代猿之助四十八撰の一つ「加賀見山再岩藤」澤瀉屋のお家芸を大和屋の巳之助さんが主演するというビッグチャレンジ。しかも6役早替りの上、「岩藤怪異編」として猿之助さんが演出し直し、ほぼ新作同然のお芝居でした。

現在の歌舞伎座は、役者もスタッフも全て各部入れ替え制です。同じ部に巳之助さんがいらしたことは奇跡でした。なぜなら、以前の巡業で猿之助四十八撰に猿之助さんとダブルキャストで出演し、澤瀉屋の13役早替りを経験している方だからです。また、ワンピース歌舞伎でも絶大なる信頼を寄せていたことも知っています。

猿之助さんも安心してお任せしたようでしたが、私も逆に楽しみになっていました。初日は本当に素晴らしかった。観るたびに巳之助さんは進化していました。岩藤を観て、先代萩の八汐が観たいなーと思ったのを覚えています。まさか12月に叶うとは。

澤瀉屋一門の皆様ががっちりサポートしている様子も頼もしく、猿之助さんに全員でバトンを繋ごうとしている想いが伝わり感動でした。

この頃、SNSを開くのが怖かったです。
ワンピース歌舞伎の怪我の時、SNSを見て心臓が止まるほど悲しかったのが
フラッシュバックする。。開けたとたんに嫌なニュースが目に飛び込んできたらどうしよう。。と。

そんな時、沈黙を破って猿之助さんがストーリーズをアップ。

そこには「啓蟄」とだけありました。

ああ。。出てくるのだなぁ。生きていてくれてありがとう。
表現が猿之助さんらしくて笑って泣けました。

まもなく舞台復帰のお知らせがあり、20日が猿之助さんの初日になりました。

8月20日は個人的にとてもご縁を感じる日です。
2012年のこの日は自主公演「亀治郎の会」の大千穐楽。

ラストの挨拶で「亀治郎は昇天しました!亀治郎の会は終わります!猿之助の会はやりません!」と笑っちゃうくらいキッパリ公言。

同年6月から襲名披露興行が始まっていて、四代目猿之助になっていたけど、亀会は10回やる!という約束を守ってくれた。猿之助が亀治郎の幕を引いた日。身も心も四代目としてスタートしたのだと勝手に思っています。

同じ日にまた猿之助さんがスタートを切るのだなと感慨深かったです。

ちなみに。。その亀会大千穐楽の間に姪が誕生し、今年9才になりました。

20日当日、開演直前には幸四郎さんがブログを更新したり、終演後には、門之助さんが笑顔でピースの猿之助さんの写真をアップ。前日には一門の皆様がSNSで猿之助さんの復帰を教えてくれていました。

素敵だな。。こういう温かい言葉が溢れるSNSであってほしいと思う。

猿之助さんの登場は観る側の私も緊張しました。浅葱幕が落とされ、
姿が見えると大きな拍手が起きました。大向うがあれば、一斉に澤瀉屋!'とかかっていたはず。代わりに皆が拍手を送っていました。

驚いたのはその数日後の観劇です。なんかこう。。ものすごかったのです。淡々と内なる炎が燃えてる感じで圧巻でした。

懸命な姿を見て、発散しているようだったり、必死だったり、楽しんでいるようだったり、憤っているようだったり、愛おしむようだったり。。私の妄想が止まりませんでした。

そして、猿之助さんバージョンを観ると、お稽古数日でやってのけた巳之助さんのすごさが分かり感動でした。

過去、何度か復帰の舞台がありますが、いつも予想を超える登場の仕方で出てきます(笑)だから’啓蟄’の言葉が妙にぴったりで、優しい猿之助さんらしくて好きです。その度に生まれ変わっているような。

翌月の京都春秋座の舞踊公演は遠征していません。同じ春秋座の朗読劇は中止になってしまいました。2月のリベンジ公演が楽しみです。

10月からの三ヶ月は全て歌舞伎座に出演でした。
次回は12月までを綴ります。


aya

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