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刀剣乱舞歌舞伎 2回目 前編

先週木曜日、初日以来の刀剣乱舞歌舞伎を観てきました。私にとって新橋演舞場と言えば澤瀉屋です。歌舞伎座が建て替え中に行われた四代目猿之助襲名公演スタートの二か月間がここでした。

猿之助さんが創作してきたスーパー歌舞伎Ⅱの三作もここで生まれました。何より、15年前に歌舞伎の本興行を初めて観たのもこの劇場です。亀治郎さんと海老蔵さんの「かさね」でした。

刀剣乱舞歌舞伎の大詰、松也さんの三日月宗近と右近の足利義輝の一騎打ちが初日より断然すばらしかった。全てが一体になり、役者だけではなく音や道具、装置、衣装、光。。。生きてそこにあり私の心が震えました。

その感覚は猿之助さんでなければ体感できないと思っていました。今まで新作を生みだし続けてきた猿之助さんの熱量が甦ってきて涙が止まりませんでした。

歌舞伎の歴史において新作を生みだすことは宿命のようなもの。代々の作品の積み重ねがあって今日があるのだと改めて感動しました。

刀剣乱舞歌舞伎を見納めた感想をお話します。


初日から2週間以上、進化をとても楽しみにしていました。今回は三階席一列目正面から観劇です。歌舞伎座同様、音の響きは三階のほうが好き。お陰で初日に観た二階右側より、筝や尺八、琵琶の音がクリアで幻想的に聞こえてきて華やかな気分になりました。でも花道は全く見えないのでモニターで楽しみます。


開場直後を避けて入場すると、お客も慣れてきたのか混乱している雰囲気はなく整然としていました。並ぶのが苦手なのでお弁当や限定アイスなども諦め、お席で空気感を楽しみました。劇場に入ると由来が書かれた幕。

文字だけというシンプルさが現代的でもあり古典的でもありセンスが良くて好き。座っていたら押彦さんこと獅一さんが来てくれて三階を盛り上げてくれました。歌舞伎を初めて観る人!という質問に想像以上に多く手を挙げる人がいてびっくり。演じるほうも嬉しいですよね。

さて、お芝居はやはりかなりの進化でした。だいぶ間が空いたので変更部分には気づかなかったけど、個性が光ってきたことで、役や言葉が深まっていました。初日は衣装で個性を感じたけど、衣装を超えて内面が色濃くなってきた感じ。外側内側が一体化したのだなと。

六振りの刀自体が祀ってある景色から始まり、また同じ景色で終わる。仮名手本の大序ではないけれど、刀に宿っている魂が人となって動き出し、また静かに刀に戻っていく。観ている間も心は別空間を一緒に旅しているような夢見る感覚に陥るのです。

この演出を含め、脚本が好き。刀剣乱舞自体を知らないけど、歴史上の出来事と刀剣男士たちを絡ませロマン溢れる物語にワクワクしました。刀の持ち主は代々変わっていくけど、その持ち主たちから注がれた想いを刀が受け止めているのが伝わるような。とても壮大な世界観でした。


松也さんの宗近の存在感が増していました。語り口調や姿勢は常に静。だけど、形をキメる時や立廻りの時の動きはダイナミックで優雅。何より、後半の内面から溢れる義輝への想いに心奪われてしまった。

私の勝手なイメージでは、松也さんって内面的なお芝居はテレビやミュージカルのほうが上手いなと思っていました。ミュージカルは新感線以外は全て観てきました。それを超えてきたと思う。今までで一番グッとくる芝居が歌舞伎に上書きされた。そのくらい宗近の心情が伝わってきて心が痛かった。そこからの義輝との一騎打ちは、切なく美しかったです。

小狐丸と足利義輝を演じる右近さん。この方のパッションは果てしない(笑)義輝を演じている時間のほうが長いけど、小狐丸もインパクト大です。でも演技は義輝が本当に素晴らしかった。

良い人キャラから、呪いをかけられ?て暴君になっていく。人格者であればあるほど切なく、大詰の大勢を相手にした立廻りは圧巻。舞台奥にかけて急傾斜の岩山の上での立廻りは壮絶!スピード感もエキサイティング。

岩山には無数の刀が刺さっていて、右近さんはそれを抜きながら斬っていく。「剣豪将軍」といわれた義輝ならでは。アクション部を含めた大勢を相手にすごい身体能力です。アクション部の動きが初日よりダイナミック&スムースでチーム戦になっています。

全員を倒した後、右近さんの顔から隈取が消えます。これはマスクかと思います。呪縛から解き放たれた時の悲しそうな表情がたまりませんでした。

そして宗近が現れます。最後の一刀で一騎打ちです。右近さんの「宗近、参れ!」で涙腺は崩壊(笑)そこから附けの音は無く、笛と筝の音で立廻りです。

私にはBGMではなくて効果音として聞こえていました。しかも戦っている二人の魂のような笛と筝。激しくなると音も激しい。シンクロしていました。

戦っている二人が哀しくて美しくて。言葉は無いのに会話しているような心が通う殺陣。廻り舞台が時を感じさせ、ライティングで月夜の光景が浮かぶ。右近さんが刺された瞬間から附けが入る。その音で現実に引き戻されました。

そして、右近さんが一番高い位置から碇知盛のように落ちていくシーン。静かに運命を受け入れるように落ちていくように感じ涙しました。

一騎打ちの二人は浮世絵のようでした。どの瞬間を切り取っても絵になる。これは歌舞伎役者にしか叶わない世界。


この場面を観ていたら、舞台にある全てのものが愛おしくなってきて泣けてきた。義輝が絶命した後に1~2分くらい暗転になるのですが、耐えられず号泣してしまった。幸せなのか、嬉しいのか、寂しいのか。。今まで猿之助さんからもらった宝物の箱が一気に開いたような感覚。

それに、右近さんが言う「かたじけない」という言葉が猿之助さんに似ていてドキっとしました。そういう目で見るときりがないのですが。。右近さんには感謝でした。


そうそう、松也さん右近さんは声もいいですね。だからこその迫力もあります。今回の出演者の皆さんは全員が声が聞き取りやすい。初心者の方にもお勧め度が高い理由の一つになると思いました。六振りの名乗りなんて最高ですから。三階でももちろんノーストレスでした。


まだまだ役者さんのこと、音楽のことなど書きたいので後編に続きます。↓ の写真はカテコで気づいたら横になっていた小狐丸などなど。雰囲気をおすそ分けです。


aya

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