「猪八戒」に10年前を思う
今年6月は猿之助さんが四代目を襲名して10周年です。2012年は歌舞伎座が建て替え中でしたので、二か月間に及ぶ襲名披露公演は新橋演舞場で行われました。
その時の思い出はまたゆっくり語りたいと思いますが、「猪八戒」を観て思い出したことがあります。
それは、後半に笑也さん笑三郎さんが登場してきた時に気が付きました。お二人が演じる最高に美しい女怪の姿は京劇風です。化粧も京劇の俳優さんのよう。頭の飾りも大きく、ドレスのような煌びやかなお衣装は、もはやスーパー歌舞伎でした。
こ、この衣装を猿之助さんにも~
心の中で叫んた時に甦ってきたのが「ヤマトタケル」の熊襲館のシーン。猿之助さん演じる小碓命(おうすのみこと 後のヤマトタケル)が踊り子に化けて館に侵入して熊襲兄弟を討つ場面です。
あの時の真っ赤な踊り子のお衣装に大きな頭の飾り。初めて観た時の衝撃ったらありませんでした。表情も踊りも艶やかで。
きっと笑也さん方と衣装の雰囲気が同じだけだと思うのですが、女性に化けて敵を倒すという今回の猪八戒のシチュエーションとも同じなので、当時がフラッシュバックしてきたのです。
童女に化けている姿を観ている時も、何となく初めてではない気がしたのはこのせいかもしれません。
ヤマトタケルでは踊り子なので鈴を持って踊り、確か相手の刀を抜いて斬りつけたかと。今回のお二人は二刀流で剣を持って舞う姿が素敵です。何だか懐かしい。
それに大詰のアクロバットシーンでも。
私は、猿之助さんが創作するスーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」で、日本にこんなにすごいアクロバットを見せてくれる人たちがいるの!と釘付けになりました。
10年前の「ヤマトタケル」のアクションと言えば「焼津」の火攻め。市川右近さん(現 右團次さん)が赤い大きなフラッグを使い大迫力でした。中国京劇俳優の皆様のものすごいスピードの連続バク転などを見て、私は心を鷲掴みされました。
四代目猿之助さんのセカンドの時代になり、一作目の「空ヲ刻ム者」ではアクションシーンはそれほど盛り込まれておらず大詰の立廻りはあるものの物語重視な作品だったかと。
二作目「ワンピース」でアクションシーンてんこ盛りとなり、スタントやアクションのプロ集団「BOS」の名前を知ることになりました。全員がBOS所属かは不明ですが、当時、パンフレットでアクションチームが入っているとわかりワクワクしました。
中でも、エースと赤犬の対決の場面は、ヤマトタケルと同じ赤いフラッグを使った演出を進化させ、火をマッピングとアクションで表現。次々と繰り広げられる超高速なアクションに瞬きも忘れ虜になりました。
極めつけはボンクレーの花道の引っ込み。敵が絡むのですが、ボンちゃんの六方と同時にバク転で揚幕まで入るという神業!初日にこれを観た時は、プロ!と感動が止まりませんでした。ちなみに花道をバク転していた山口さん古屋さんが今月も出演しています。
そうそう、本水も最高の迫力で盛り上げてました。スライディングで水を飛ばすとか面白かった。
三作目の「新版オグリ」にもアクションチームの皆様が出演していました。もう猿之助さんの仲間になっていました。だから歌舞伎座出演が心から嬉しいです。
「猪八戒」のアクションは本当にすごい。願わくばもっと長い時間で観たい(笑)舞台近くなら目線がついて行けないほどのスピードに興奮するし、舞台全体が見える遠目ならフォーメーションや跳んだ時の形の美しさがわかると思います。
これもファンの方の情報ですが、このシーンの激しさは95年前の初演からの演出だそうです。澤瀉屋ってすごい。
さて、今日は初日以来の観劇です。進化を楽しみにしています。アクションも楽しみ。夜は初めての扉座も観に行きます。お休み満喫です。
aya
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