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筋トレにおける魚の重要性を再考する

良質なたんぱく質源として、鶏肉や牛肉の代わりに魚を取り入れている方もいることでしょう。

たんぱく質が豊富なことに加え、DHA・EPAのような良質な脂質や、ビタミンD・マグネシウムなどの微量栄養素を含み、トレーニーの栄養補給としては最高レベルの食品と言えます。

そこで今回は、トレーニーが魚を食べるべきメリットについてタラタラと述べていきます。

筋トレにおける魚を食べるメリット

たんぱく質が豊富!だとか、必須アミノ酸のバランスがいい!といったことは周知の事実のため、今回は割愛。それ以外の魚のメリットをご紹介します。

速筋線維を増やす

ヒトの筋肉は大まかに分けると、速筋線維と遅筋線維の2種類があります。瞬発性に優れるのが速筋線維。一方で遅筋線維は持久力に優れます。

一般的に速筋線維の方が肥大しやすいと言われているため、トレーニーは速筋線維に刺激が入りやすいトレーニングを中心に行っていることが多いです。(6~12レップ程度の低レップトレーニング)

スケソウダラ由来のタンパク質は、速筋線維を増やす可能性が示されています。ラットにスケソウダラタンパク質を8週間食べさせた研究では、コントロール群と比べてふくらはぎの速筋が1.4倍大きくなったことが示されました。

ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)は速筋線維優位だから、単にタンパク質の補給により筋肉が大きくなった結果、速筋線維も大きくなっただけでは?とも考えましたが、乳・大豆・卵のタンパク質の摂取では速筋線維の増加は確認されなかったようです。

ヒトの速筋が増えるか?についてはまだ明らかになっていませんが、スケソウダラの摂取により筋肉量が増えたとする研究はいくつかあるので、期待してもいいかもしれません。

テストステロンを増やす

魚にはω-3脂肪酸やビタミンD、マグネシウムなど、テストステロンの合成に関わる栄養素が豊富。テストステロンは筋肥大反応をスタートさせるホルモンの1つなのでトレーニーには重要ですね。

魚に含まれる各栄養素がテストステロンを増やすことや、フィッシュオイルサプリメントがテストステロンを増やすことについては、これまでもいくつかの研究で可能性が示されていました。

ただ、これらはサプリメントとして栄養素の濃度を数倍に高めたものを摂った結果。実際に魚を食べてテストステロンが増えるかはわかっていなかったんですね。

そこで2024年5月に発表されたばかりの日本の論文で、魚の摂取量とテストステロンの関係が調査されていたのでシェアします。

この研究では、60~69 歳の日本人男性1545名を対象に、魚の摂取量をアンケートで調査して、血清テストステロンとの関連性を調べました。

すると魚の摂取量が多いほど、血清のテストステロンが高いことが明らかになったそうな。しかも驚くことに、脂肪分の多い魚(サーモンなど)はテストステロン量と関係しておらず、赤身が多い魚(マグロなど)がテストステロン量と関連していたようです。

ω-3脂肪酸を多く摂れるから、脂肪分の多い魚の方がテストステロンを増やすイメージがありましたが、この研究ではそのような結果は得られなかったとのこと。

論文では、脂肪分の多い魚にはダイオキシンやPCBなどの汚染物質が多く含まれているから、魚のメリットが相殺されたのでは?と考察されていますが、赤身の魚も水銀など有害な物質は含まれているので、少し疑問は残るところ。

ちなみに魚の摂取量が最も多かったグループは1日に魚を19g/1,000kcal摂っていたとのこと。毎日3切れ程度マグロの刺身を食べるとよいかもしれません。

神経筋機能を高める

DHAやEPAなどのω-3脂肪酸は、筋肉の細胞膜の組成と流動性を変化させることで、神経伝達をスムーズにする可能性が示唆されています。

神経から筋肉への伝達がスムーズになれば、より速く力を発揮できることに繋がり、パワーが高まるかもしれません。

実際に平均年齢25歳の男性アスリートが21日間ω-3脂肪酸(アザラシ油5 ml、EPA 375 mg、DPA 230 mg、DHA 510 mg)を摂取すると、末梢神経筋機能(神経から筋肉への伝達)が改善されることが明らかに。

また、18人の若い男性を対象に5gのスケソウダラタンパク質の摂取の効果を調べた研究では、8週間後、カゼインを摂ったグループよりも運動単位の発火率が高まったことが報告されています。

まだまだメカニズムは明らかになっていない点も多いですが、魚を食べ続けることで、力を発揮する効率が高まるかもしれませんね。

私たちのデータは、N-3 PUFA 補給により末梢神経筋機能と疲労の様相が改善されたが、中枢神経筋機能への影響は不明である

筋肉痛を軽減する

トレーニングを始めたての頃は筋肉痛があると筋肥大している気になっていましたが、実は痛みと筋肥大にはあまり関係はありません。

筋肉痛があるとトレーニングのパフォーマンスが落ちて、筋肉に十分な刺激を与えられなくなるので、アスリートやトレーニーはできる限り筋肉痛は避けるのがよいでしょう。

そこで有用なのがω-3脂肪酸。強力な抗炎症作用を持ち、筋肉痛の原因の1つと考えられている炎症を軽減する可能性があります。

若い男性32名を対象とした研究でも、6gのフィッシュオイルを7.5週間摂ることで筋トレ後の筋肉痛を軽減することが示されています。なお、この研究では2g、4gの摂取による効果も調べられていましたが、明確な効果が確認されたのは6gのみだったようです。

基本的にはトレーニング頻度を高め、トレーニング種目は変更しすぎず、筋肉痛を起こさないプログラムを組むのがおすすめですが、どうしても筋肉痛が発生する人はフィッシュオイルサプリメントを摂ってもよいでしょう。

筋肥大を最大化する魚の食べ方

魚の素晴らしさをみてきたところで、最後に食べ方についてご紹介。

どのくらい食べればいいのか

フィッシュオイルサプリメントやスケソウダラタンパク質を摂取した研究は、ほとんどが毎日摂っているので、最大限に効果を得たい場合は、毎日食べるのがよいかもしれません。

だいたい100~200gくらい食べれば十分なω-3脂肪酸も摂れることでしょう。

しかし、2023年に名古屋大学が発表した研究では、魚を毎日食べる人は血清中のヒ素レベルが高まり、高血圧のリスクが高まることが確認されています。

体内のヒ素レベルが高まると、筋力や筋肉量が低下し、体脂肪率が増加することを考えると、魚の毎日摂取は避けたほうがよいと言えます。

あくまで中高年を対象とした研究ではありますが、150g程度の魚を週2~3回食べることで筋肉量の増加や、筋委縮を防止が期待できることが示唆されています。

そのため、魚を食べる頻度は週2~3回に留め、効率を求められたい方はフィッシュオイルサプリメントを活用するのがよいでしょう。

どんな魚を食べればよいのか?

基本的にはどんな魚でも有益ですが、あえて挙げるとすると、スケソウダラとマグロはいくらか取り入れるのがおすすめ。

スケソウダラには速筋を増やす作用があり、マグロのような赤身魚はテストステロンを増やす可能性があります。

また、ω-3脂肪酸も摂れるようサバやサーモンも適度に取り入れるとよいでしょう。

熱さず生で食べること

ω-3脂肪酸は酸化しやすく、熱すると量が少なくなります。例えば揚げるとEPAやDHAは半分程度になり、フライパンで焼くと10~20%は減少します。

基本的には刺身や缶詰をそのまま食べるのがよいでしょう。


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