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 生きていくために、母を縊った。背中から生えた腕が、無意識の海に呼応した、私の強い感情がもたらした、始めての結論だった。その長い指の不思議な膂力のため、母の首は締まるに留まらず、白い壁のせいでずっと無惨に見えた。私の流すものと同じものが、彼女の身体にも流れていたということ。そんな当たり前にようやく気づき、吐き気が止まず仕方なかった。しばらくの嗚咽を、腕は石膏のように聴いていた。慰めるでも、害意をもよおすでもなく、それは茫然とただ感覚していた。

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