マガジンのカバー画像

Twitter詩

18
運営しているクリエイター

2021年5月の記事一覧

Twitter詩「ぶどう味」

 

ぶどうのアイスキャンディ

くちびるにぬって

おめかしごっこした なつやすみ

 

きみのくちびる

ゆうひをこえて

あかくて あまくて

ぼくはなきたくなった

 

またね といっしょに

くちびるとけて

とけたアイスをポチがなめて

 

ゆうひのあじも

ゆうひのいろも

なみだのうみに しずんでいく しずんでいく

Twitter詩「よる」

Twitter詩「よる」

 

ぼろアパートの深い夜は

あま黒い紺の霧に包まれ、

鏡に映る子うさぎも

月に恋することなく夢の中。

 

独り毛布に抱かれるわたしは

ぎゅっとくまに抱きつく、

寂しさはそうやって連鎖の中で灰になる。

 

ああ、下階のお兄さんの話し声が暖かい。

花瓶のふちが空気と淡くなっている。

カーテンからこぼれる月明かりは

スカートをめくられた子のはにかみに似ている。

 

孤独の対

もっとみる
Twitter詩「飾られたい感情」

Twitter詩「飾られたい感情」

 

ワンフレームに切り取られた世界を満足そうに眺めているのは、

退屈に麻痺してしまったからで、

浜に打ち上げられた海月とおそろいなんだ。

自己完結した物語はいつだって深海みたいに盲目で、

それを安定剤として使用しているうちは、

どこまで潜ってもひとりだよ。

できることなら、ショーウィンドウに飾られたいね。

いつまでも綺麗なままでいられるよう、

感情をピン止めして、標本にできればい

もっとみる
Twitter詩「凍詩」

Twitter詩「凍詩」

 

つめたくてさみしくてつめたくて

なにもないねつりょうの

くうきのやわらかないろみ

うみとよると よるとつき

ひえる

あめのひのささやかないたみ

なにもないねつりょうの

ちいさなおんかい いきをすうおと

ひえる

しずくするこだま

しんとなくねつりょうの

なめらかななめらかなとうし

つめたくてさみしくてつめたくて

よる

はかなくなるつきのひかり

Twitter詩「落ち葉」

Twitter詩「落ち葉」

葉脈をのばし

空と結合する

それは ひとひらの回帰です

母のもとへと着陸したい

そう叫ぶ あなたの無線は

ひらり ひらりと

飛来する

あの空からでしょうか

それとも 願いからでしょうか

もう誰のおはなしも

聞きたくはないのです

だって わたしには声がなく

だって あなたには耳がない

ひとひらの

おかえりなさいを

風のたよりに待っているのです