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ヨルシカ「だから僕は音楽を辞めた」のルーツを歩く

英検の二次試験(面接)の会場の抽選に外れ、少し遠い場所に飛ばされたのがきっかけで、西武新宿線沿いを歩こうと思い立った。武蔵関、東伏見、小平。かなり前から一度訪れてみたかった場所だ。


​なぜここを訪れたかったのか

私は音楽が好きだ。最早それがないと死んだも同然なほどに、音楽と関わることが生き甲斐だ。その音楽の中でも私が好きなのがバンドサウンド、特に「ヨルシカ」である。

ボカロPのn-bunaと、ボーカリストsuis(敬称略)が織り成すサウンド。清涼感・疾走感、時に暖かささえ持つ自由なギターリフが特徴的だが、勿論ベースラインやドラムも他のアーティストには出せないような個性と拘りによって形作られている。なんといってもボーカルの、唯一無二の声とストレートな表現力。それらが私を掴んで離さなかった。

そんなヨルシカが2019年4月に出したフルアルバム、『だから僕は音楽を辞めた』。アルバム名を冠した表題曲『だから僕は音楽を辞めた』は、音楽家n-buna氏自身の葛藤を込めた名曲であるが、このアルバムに収録されている曲の歌詞には彼自身の過去の個人的な感情、生活風景等が含まれている。その生活風景こそが、武蔵関、東伏見等、西武新宿線沿線の街だったのである。つまりこのアルバムのルーツと言っても過言ではない。私もヨルシカファンの端くれ、実際の場所の雰囲気を肌で感じ取ってみたいと考えたのだ。


小平からスタート

面接会場の最寄り駅(西武国分寺線:小川駅)から電車に乗って小平駅へ。さっそく『八月、某、月明かり』に出てくる地名のひとつを回収する。

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小平駅では下車せず、そのまま各駅停車・西武新宿行に揺られて10分程度。曲にあるように『自転車で飛んで』行きたいものだが、筆者は自転車を持っていない。それ以前に自転車に乗ることが出来ない。歌詞通りの経験をすることは不可能であった。


武蔵関駅周辺を歩く

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武蔵関駅に到着し、散策てがら駅から徒歩10分弱のドンキホーテに向かう。14時頃の日差しはほどよくポカポカしていて、冬の時期はいつも欠かせないマフラーを取って小脇に抱えて歩いた。

わかりやすい道をまっすぐ歩くと目的地に到着する。ここもn-buna氏が武蔵関(関町)での生活風景として挙げている場所のひとつだ。

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周辺一帯はマンションだらけであり、このドンキホーテは住民たちの生活の一部のようだ。日曜だったのもあるが、多くの人が訪れていた。

慣れたポテトの匂いによって、マクドナルドを近くに発見。14時を過ぎていたにも関わらず何も口に入れていなかったので、ダブルチーズバーガーセットを注文した(ここはどうでも良い)。


​関町を離れ東伏見へ

腹ごしらえも住んだところで散策を再開する。駅に戻って電車を利用する手もあったが、折角なら関町〜東伏見の風景と雰囲気を感じたかったので、20分ほど歩くことに決めた。

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住宅街を縫って線路沿いに出る。「武蔵関公園」の中を通るルートを選んだのは正解だった。公園を縦断する大きな池に午後の陽射しが反射している。ほどよい間隔で植えられた木のおかげで直接太陽に当たらずに済む、心地の良い公園だった。住宅街の道路こそ人は少なかったものの、公園の中には家族連れから老夫婦まで、老若男女関わらず人々が集まっていた。


​駅を通り過ぎ、東伏見公園へ

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東伏見駅には着いたものの、本日の一番の目的地といっても過言ではない「東伏見公園」に向かうため、東伏見駅に関しては駅の看板を外から写真に撮るだけで通り過ぎた。古き良き、という言葉が似合うような、飾らない、けれど昔から人々に愛されてきた雰囲気のわかる駅であった。

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駅から5分ほどで公園に到着した。強い風が出てきていたにも関わらず(筆者はマフラーを巻き直した)、たくさんの家族連れが訪れていた。迫り来る砂埃に抗いながら、どうしても撮りたかったこの風景をスマホに収める。

東伏見の高架橋』。これもまた、『八月、某、月明かり』に登場する地名だ。西武新宿線の線路を跨ぐように架けられ、非常に見晴らしが良い。ランニングやサイクリングのコースにも利用されているようで、沢山の人々が行き来していた。

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街が一望できる高架橋。n-buna氏の記憶にも残っている風景なのだろうか。


東伏見公園から西武柳沢駅へ

東伏見公園は、西武新宿線・東伏見駅と西武柳沢駅とのちょうど真ん中あたりに位置している。どちらの駅からも10分もかからず訪れることが出来るので、散策にも適している。

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日が傾き始めた線路沿いを歩く。今回私が散策した周辺は、線路が見えていなくても電車の心地よい音だけがして、なんとなく落ち着くような安心できるような、そんな場所だった。


​散策を終えて

n-buna氏の描いた、西武新宿線沿線の風景。そこにはここで暮らす人たちの、何気ない生活風景が根付いていた。

人がちらほらと歩いている程度の、昔ながらの商店街。馴染みのあるスーパーに、どこまでも続く住宅街。一見どこにでもある風景を、彼は曲の中で、感情に乗せて的確に描いた。

当初は『だから僕は音楽を辞めた』のアルバム曲をリピートしながら散策しようと思っていたのだが、最終的にはイヤホンを外すことにした。耳に飛び込んでくるのは、自家用車や電車の生む生活音、道端を歩く人々の話し声、足音。毎日をここで過ごす人々も、それぞれの思いや風景を持って生きているのだろうと感じられる散策になった。

今回はただひたすら青空の下を歩き続けたが、また機会があれば『夜紛い』(=夕暮に夜の色が混ざった空)の時間帯に是非出かけてみたい。

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