書籍紹介 ーー 大地の子(山崎豊子)
満蒙開拓・中国残留孤児に関する書籍の紹介、第一回は山崎豊子作「大地の子」。
1987年から文藝春秋で連載が始まり、1991年には単行本刊行、1995年にはNHK放送70周年記念番組として日中共作のドラマとして放送された名作です。
小説、ドラマのどちらか一方でもご覧になった方が多いのではないでしょうか。
「残留孤児といえば『大地の子』」と言っても過言ではないほど、日本社会の「残留孤児像」に影響を与えた作品です。
あらすじとお勧めポイント
長野県から村の人々と共に満洲に渡った松本勝男。
ソ連対日参戦によって開拓団は崩壊し、逃避行の最中に祖母・母・末の妹を失い、過酷な体験のために7歳にして記憶を失ってしまいます。
5歳の妹とは生き別れ、その後中国人によって売り飛ばされてしまいますが、最後には小学校教師・陸德志に引き取られ、「一心」と呼ばれ育てられます。
養父・德志と共に文化大革命の動乱をなんとか生き延び、日中国交正常化後には中国共産党員として日中共同の製鉄所建設に関わることになった一心。
プロジェクトの最中に生き別れた妹・あつ子の消息をつかみます。そして意外な人物が実の父親だと判明するのですが...
中国人として育てられ生きた一心が、日本人の父親を知って狼狽え、日中の間で葛藤に苦しむ姿は涙なしには読めません。
日中戦争の時代を経て一度は分断された両国の人たちが、日中共同事業を通して心を通わせていく様子も、物語の随所で見られます。
書籍情報
文春文庫
文春現代史コミックス (日中国交正常化50周年&文藝春秋100周年を記念して、2022年に漫画版が出版されました!)
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