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医療レベルと医療費とアクセスのよさはトレードオフ

医療レベル、医療費の安さ、アクセスのよさの3つの要素によって医療は評価されます。この3つはトレードオフの関係にあるのですが、日本はすべてが世界のトップクラスという奇跡にありました。これは24時間医療応需という労働生産性の低さと、際限のない医師の長時間労働によってなされてきたものです。

救急車を呼べば24時間いつでも最高の医療をただ同然で受けられるという安心感や信頼感は、安定した社会を日本にもたらしましたが、同時にモラルハザードを招きやすい。今回のような稀少疾患の見逃しが責められれば、救急医療の集約化によるアクセス制限と医療費の値上げで対応しなければならないでしょう。

考えてみれば、低労働生産性と長時間労働というのは他産業にも通ずる日本の宿痾です。教育の普及と労働規範の高い良質な労働力に恵まれた日本で、これだけ労働生産性が低いのは構造的な欠陥を抱えているからに相違ありません。これまでのように労働時間延長で糊塗するのではなく、働き方改革で徹底して問題を炙りだす必要があります。

まず見直されなければならないのは24時間対応の救急医療、夜間の緊急手術や分娩であり、必要な人員配置と医療資源を割くために医療費負担増を覚悟してもらうことになります。さらには医療施設集約化は避けられず、アクセスも自ずと制限されることになるでしょう。多少の地域格差が生じるのは覚悟しなければなりません。

医療のなにを優先とし、なにを多少犠牲とするのかの社会的コンセンサスをつくることがとにかくたいせつです。現行の医療は限界まで来ています。問題のありかを説明し、命を守るためにこの点については我慢してほしいと国民にきちんと説明するのは政治の責任です。それがわたしたちがコロナで学んだことではなかったでしょうか。

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