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転機となった事件の話 #2


僕が不動産をホビーにすることになったキッカケとなる事件の第2話です。第1話がまだの方はそちらからお読みください。


消えた相続財産

防犯フィルムを貼ったものの、幸い僕の自宅にまで犯人が来ることはなく、事件から数週間経ったある日。

警察署から、祖母宅に強盗に入った実行犯6人を全員逮捕したとの連絡がありました!


正直、仲介の仕事とこの事件対応を並行していた頃は、毎日の中での気持ちの切り替えが結構大変でして、犯人逮捕の報告を受けた時はすごく安堵しました。。

日本の警察はなんて優秀なんだ!と感動して、頭の中で「24」のジャック・バウアーと仲間たちの働きを想像してイメージを重ねようとするのですが、日本の警察のみなさんの見た目が違いすぎて、その試みはうまくいきませんでした。


逮捕したということは、金庫も無事に戻ってくる!と思って意気揚々と警察署に行くと、なんと、逮捕はしたけど金庫はすでにさらに上の「組織」に渡されてしまっているというではないですか。ガーン…

捕まった6人はいわば、わずかな報酬を得て動いていた下っ端の実行犯で、ただ金庫を奪ってこいと命令されただけで金庫の中に何が入っているのかも把握していません。


もちろん「組織」といってもまっとうな組織の話ではありません。警察から、これ以上の調査を進めるとなると「怖い人たち」を相手にしていくことになりますが、どうしますか?と聞かれました。

ここで祖母は、金庫が戻ってくる可能性は低そうだし、怖い人たちを深追いすることで家族の命を狙われたら怖いということで、捜査をここで打ち切りにする判断をしました。

この瞬間、相続人である母と僕に将来渡るはずだった1.3億円の相続財産が消えました。


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手放さない土地から手放さざるを得ない土地へ

ここでも僕は不思議と冷静でした。相続財産がなくなったことは終わった話なので、頭を切り替えて、これから先にコントロールできることに集中するしかありません。

ですしそもそも、僕にとっては自分で稼いだお金でもないですし、そこに期待もしていませんでした。


次に考えないといけないのは、84歳とはいえまだまだ元気な祖母の銀行口座にはわずか数百万円の現金しかなく、とても自分が生きている間生活するのに足りる金額ではないという問題です。

10代で祖父のもとに嫁ぎ、戦後の苦しい時期からずっと過ごしてきたこの土地には、祖母の並々ならぬ想いがありました。

「先祖代々譲り受けた土地だから、私が生きているうちは絶対にこの土地は売らないし、売らせない。」

不動産にこうした感情は伴いがちですが、例外なくうちの祖母もずっとこの考えのもと生きてきた人でした。


とはいえ、売れるものを売って現金にしないと老人ホームのお金が捻出できません。本人はものすごく無念そうでしたが、先祖代々の土地は売りに出すことになりました。

そのためにはまず、敷地内に3棟あるアパートの住人さんたちに立ち退きのお願いをしていかなければなりません。

2014年の年明けから、地元の管理会社さんにお願いして立ち退き交渉を進める方針でまとまり、「絶対に手放さない土地」は、「手放さざるを得ない土地」へと変わりました。


踏んだり蹴ったり

怒涛のような2013年12月が終わり、迎えた2014年1月4日に、アパートの管理会社から僕の携帯に電話がありました。

「ムロタさん、あけましておめでとうございます。実は、新年早々あまりおめでたくない話がありまして…。

もうこの時点で僕の精神状態は、カオスを通り越したカームな状態で、もうなんでもこいです。

なんとなくピンときたので、「もしかして、誰か死にました?」と聞いてみると、「はい。」というではありませんか。

でも全然大丈夫。この頃の僕は、このくらいの会話ならタイのワット・ポーの涅槃像みたいな表情で軽くこなせます。


これから土地の売却を進めようと思っていた矢先に、祖母のアパートの一室の住人が室内で首吊りをしてしまいました。

どうやら仕事で鬱になっていたらしく、仕事始めの1月4日に出社しないので、同僚が迎えにきたところで発見されたそうです。


ここでも僕は至ってカームなわけですが、これはもう自動的に、売却予定の土地が告知事項あり物件になってしまったわけで、祖母に残された最後の資産の価値は著しく下がることになったわけです。

亡くなられた方の連帯保証人さんには土地に心理的瑕疵ができ売却価格が下がってしまう分の保証を求めたいくらいでしたが、ボロくて安い木造アパートの連帯保証人さんにそこまで求めることもできず、内装復旧の費用のみ請求をし、土地の売却価格は著しく下がったため、トータルでかなりのマイナスになりました。


その後、アパートの管理会社さんがすごくいい仕事をしてくださって、立ち退きは一部ゴネられたりはありましたが順調に進み、程なくして先祖代々の土地は売却でき、祖母の思い出の自宅とアパートは跡形もなく解体されました。

大丈夫。仕方ない。元気があればなんでもできる。土地を買ってくれた方に幸あれ。


しかし、辞書の「踏んだり蹴ったり」の欄の挿絵にしてほしいくらい、綺麗な踏んだり蹴ったりの好例になってしまったものです。みなさん、踏んだり蹴ったり、と言葉にする時はぜひこの話を思い出していただけると喜びます。


人生いろいろ

ちなみに余談ですが、強盗事件の捜査やら裁判やら自殺対応やらのバタバタが終わった後、さらにもう一つ驚きの後日談がありました。


祖母宅の強盗事件の担当をしてもらっていた、僕より少し若い刑事さんが、なんと殺人をして逮捕されたということでニュースに出てくるではありませんか。

どうやら、凶悪犯罪課に勤める彼には同じく警察官の奥さんと小さなお子さんがいたそうですが、捜査過程で知り合った不倫相手との間にも子供ができてしまい、公務員の給料で二つの家計を支えるのが難しくなってしまったそうです。


そこで彼は、凶悪犯罪の捜査の中で知り合った資産家の家に、つい魔がさして忍び込んでしまいました。

この資産家の方も、自宅の金庫にお金を保管されていたそうですが、普段から金庫に鍵をしていないことを知っていた彼がこっそりお金だけ持ち出そうとしたところ、資産家の方とばったり出くわしてしまったため、仕方なくロープで首を絞めたところ、亡くなってしまったとのこと。ちなみに、あくまでも殺意はなかったそうです。


これ、順番が違ってたらむしろ僕の祖母がやられてた可能性もあるんじゃないかと思うとゾッとします。物騒な世の中ですね。

人生には、まさに「24」みたいな出来事が次から次へとやってくる時期があるみたいです。それとも僕だけ運が悪いんですかね?

みなさん、ご自宅にある多額の現金を入れた金庫の戸締りにはくれぐれもご注意くださいね。


こんな感じの紆余曲折があり、いよいよ僕がホビーとして不動産を買い出すことになった理由を書こうと思ってるんですが、、

ほんとに、それを書こうと思ってるんですけどね、いざ書き出すとなかなかボリュームが多くなってしまいまして。。

このネタはいい加減、次回でまとめます!
まさかの連続またぎでスミマセン。。

カームな気持ちでお待ちください。Stay Calm。
ではまた!


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