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体感ベースで考える

2006年から、不動産のセレクトショップである「東京R不動産」で不動産仲介に携わって、はや14年が過ぎました。

今回は、仲介営業と大家業の2つの立場で不動産と関わる僕が大切にしている考え方のひとつについてご紹介します。


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不動産はどのように選ばれる?

不動産仲介は賃貸・売買を問わず、間取り図の記載された募集チラシやホームページによる情報提供と、実際に物件に足を運んで現地確認していただく内見、という2つのステップを踏むことが一般的です。

内見に来た方は、現地では間取り図はチラ見する程度で、持っている家具と空間の雰囲気が合うか?、家具家電がうまくレイアウトでき、荷物が収まるか?、眺望や日当たりは期待に添うものか?、そしてフィーリングが合うか(ピンとくるか)?をチェックして、そこで住みたい、働きたいと思えるかを判断されています。

つまり、間取り図は現地に足を運んでもらうための事前情報であって、現地はイマイチだったけど、間取り図がよかったので決めます!なんてことはまず起きないわけです。


一方で、不動産には常に、○○㎡、○LDK、○○年築、徒歩○分、といった数字で表現される情報が付きまといます。

ですが、現地に行ったところで室内に75㎡、とか昭和54年築、と貼ってあるわけでも、あるいはマンションのエントランスに「最寄駅まで徒歩10分」なんて書いてあるはずもありません。

なにをそんなあたりまえのことを、と思われるかもしれませんが、もう少しお付き合いください。


不動産の募集条件って何によって決められると思いますか?

一般的には、現地でのフィーリングよりも、○○㎡といった数字やスペックによって決められている部分が圧倒的に多いと思います。

不動産を賃貸する、購入する最終的な判断は、数字よりもフィーリングによって下されることが多いのに、です。これってなにか変だと思いませんか?

単純な話ではあるはずですが、実はこの観点がズレたまま物件が作られてしまったり、値付けされてしまっていることが非常に多いと感じています。


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体感ベースで考えよう!

僕の考えはとてもシンプル。

不動産の値付けは、まずは数字を大いに参考にし、周辺相場も加味してざっくりと行ったうえで、「その場所に立ったときに感じるフィーリング(体感値)はどのようなものだったか?」という要素を加味して最終的に決定されるべきだと考えています。

例えば、新築の完成前にもらった資料に1階は半地下と書いてあったので、他の部屋と比較して坪単価を最も安く値付けをしていたところ、いざ完成してみたら半地下が一番天高があって気持ちよかったため、むしろ最も坪単価高く設定し直した結果、その部屋が一番人気になった、みたいなこともあります。

これを僕は、体感値をベースにした値付け、と呼んでいます。


仮に35㎡の2つの物件があるとして、ひとつは天井高が2.4mと一般的な高さで、もうひとつが2層分の吹き抜け空間で4.8mだったら、同じ床面積でも「体感ベース」としてまったく異なることは想像に難くないかと思います。

これは、人は空間を「立方メートル」によって認知しているのに対して、不動産は一般的に「平方メートル」で評価されてしまうことにより差異が生じるためです。


もし、リビング側の目の前に広大な公園の緑が広がる絶景を望める立地なのに、その窓が全部すりガラスだったらどう感じますか?

募集チラシの「目の前は緑豊かな公園です!」というコピーに惹かれてせっかく現地を見に来たのに、実際にはすりガラスで窓を開けないと緑が見えない、ではガッカリしてしまいますよね。

これは、見に行く前の期待値と現実の差異が大きすぎるため、その落差ゆえに借りる気がおきなくなるパターンです。


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体感ベースを利用した価格決定

では不動産の価格、賃料はどのように決められるべきなのでしょうか?

一般的な不動産業者による価格決定プロセスは、まず過去の周辺物件の取引事例を参考に「相場」を割り出すことから始まります。

そして、「周辺相場を踏まえて○○㎡、○DKのこのお部屋ですとこの賃料ですが、オートロックがついているので+2,000円と宅配ボックスありで+1,000円できますが、エレベーターなしの4階ですと−4,000円なので、相場から−1,000円の○○円が適切かと思われます。」

みたいな感じではないでしょうか。


基本的にはこうした決め方で合っているとは思うものの、東京R不動産で長らく仲介営業をしている感覚からすると、エレベーターありの2階で目の前に向かいの建物がある部屋よりも、エレベーターなしの4階まで上ったおかげで眺望が開けている物件の方が人気になることも多いです。

この場合、エレベーターなしの4階ゆえの−4,000円ではなく、むしろ+3,000円になることだって普通にあります。


なぜそれが起きるのか?
それは、「そっちの方が気持ちがいいから」です。


つまり、東京R不動産のサイトのように、その物件のチャームポイント(眺めがよくて気持ちがいい)とネガティブポイント(階段が大変)を包み隠さずお伝えすると、内見にくる方はネガティブをわかった上で、ポジティブに期待して見にくるわけです。

そこで、期待値に負けない体感ベースの気持ちよさや納得感があれば、「決めます!」となるのです。

もちろん、眺望がよかったり天高のある物件でないとダメなのか?といえば、そういうことではありません。


重要なのは、数字上は何㎡なのか?よりも、その空間からどんなフィーリングが得られるか?だったり、期待値と現実がズレないことの方が大切だということ。

数字上のスペックから割り出した価格・賃料を、体感ベースの視点からも見直してみるのがオススメです。


とはいえ、いざ価格や賃料を設定するとなるとどうしても数字にばかり目がいってしまい、せっかく現地で得られたフィーリングを無視してしまうことが多いのが現実です。

僕がいつも不思議に思っているのは、不動産業者の営業マンは、自分の部屋を決めるときは体感ベースで判断しているのに、なぜ依頼された物件の値付けをする際にはその視点が抜けてしまうのだろう?ということです。

立場が変わると視点も変わる、というのは不動産業者に限ったことではないかと思いますが、気をつけたいものですね!


どうでしょう、なんとなく「体感ベース」の大切さについて伝わりましたでしょうか?

逆にいえば、物件の新築や改装の企画をする際には、いかにしてこの体感値として優れた空間を作っていくのか?という視点に立つことで、自分が住むうえでももちろん、貸すとき、売るときにフィーリングの合う方にバトンタッチしやすい物件を作ることができます。

ちなみに、図らずもこの考え方によって空間が変わっていくことをビジュアルで紹介できているのが、僕がちょこちょこ出させてもらっている、このYouTube動画シリーズかもしれません 笑


《〇〇のプロと行く ゲームさんぽ》
https://www.youtube.com/playlist?list=PLGi5KhmoUBhBDcqAkff7G_3rMNHilKsm7


今後このnoteで、より具体的な間取りや企画についても触れていければと思いますので、よろしければまた見にきてもらえたら嬉しいです。

では!


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