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生まれたときから「21世紀の家族愛物語」の主人公*prologue*

ママのひとり娘として生まれた時点で、私は人よりちょっぴり面白い人生を歩むことが決まってた。

幼少期に父親を病気で亡くし、女手一つに育てられたママは、お母さんを尊敬する一方で、父親という肩書きを持つ人間がどのような役割を果たす存在なのか、ずっと気になっていたらしい。

早く結婚して"自分の家族"というものを築いてみたい。

大多数派の若者と同じように恋愛をし、当たり前に「恋は盲目」を経験し、盲目のまま、高校卒業と同時に「恋する女の子」から「奥さま」になった。

21歳で長男を出産したママは、その世代の中では何ら早いわけでもなかったし、大人びていたわけでもなかった。

子供が子供のままでも、なんだかんだ「母親」としての階段は少しずつでも登れたらしい。

昔のママもあなたみたいに、ドジでマイペースで能天気で無責任だったのよ。でも、こうして幸せに暮らして、ママをやってる。

きっとそのときどきの苦労や涙はあったと思うのに、子供が大きくなればそんなことどうでもよくなって忘れちゃうものなのだろう。あっけらかんとしてるなぁ。

ひとり娘を産んだあと、盲目からひらけた視界になった代わりに待っていたのは、潔くはない離婚調停と聡明ではなかったかつての夫だった(らしい)。でもそれだけで終わらない彼女の人生は、新たな男性たちとひとり娘と手元に置くことはできなかった子供たちと愛と希望でどんどん更新されていった。

「娘の母親として」生きることを決めたママの人生を章立てて本にするならば、私が20歳になるまでの道のりは起承転結の中の「起」。より一層盛り上がる場面が、きっと待ってる、と思う。

どのくらいパッションの溢れるエモーショナルな「結」になるかは、私の生きかた次第でもある気がする。

そんなことを考えられるようになった私も、大人になったものだ。

***

この物語の主人公は、ママの娘であれば誰でもなれた。でも、私だからこの物語を存分に楽しみ愛することができているんだ。

文字通りに波瀾万丈な人生を歩み続ける女性のもとに生まれた、たったひとりの私の物語。

私はこの物語を「21世紀の家族愛物語」と名付けることにする。愛するママとママの周りの愉快な仲間たちに、敬意を込めて。


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