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言葉を生かし、言葉に生かされること

私は言葉が好きだ。

50音の整列は、並べ方によってリズム感が生まれたり、春の朗らかな色や夏の香ばしい香りをまとったり。ある人にとってはそれは恩師であり、ある人にとってそれは母にもなる。

SNSやオンラインでの人とのコミュニケーションがニューノーマルとなる今、言葉が凶器となって、鋭く人の心に刺さる社会問題が大きく取り上げられる。

その言葉たちは、発信者の意図する以上に敵意や嫌悪を湛え、目にも止まらぬスピードで加速し、氷点下で凍ったような温度で、特定の人の心に深く突き刺さる。それはどうやら一本ではなく、何百本、何千本と重なって、銃弾になって、砲弾になって、ミサイルになって、その人の心に、容赦なく攻めこむ。

標的ではない私の心へも、それらは細い隙間から侵入してきて、そのたびに少しずつ痛めつけられる。心ない言葉の応酬にマイペースな私の心は追いつけず、長らくツイッターからは遠ざかっている。

言葉は、力を持っている。

ある言葉は、人の心を、人の一生を、亡きものとしてしまう。
ある言葉は、人を力づけ、不可能と言われていたことを成し遂げさせる。
人に生かされる言葉は、人を生かし、時に殺す。
言葉と人は、共依存している。

✴︎

ある時私は、汚い言葉をまとって人を味方につけた。言葉を操りおもしろおかしく語った私は、いっときのコメディアンとなりその場の人気者であったが、長くは続かなかった。

ある時私は、心とは裏返しの言葉を放った。大切な人が、悲しさに顔を歪めた。

ある時私は、恥ずかしさに負けて本音に代わる言葉を飲み込んだ。その想いは、誰にも届くことなく宙を舞った。

そして、ある時私は、美しいものに心から美しいと述べた。心の底に、ぽっと灯りがともり、それがきっかけとなり親愛なる友ができた。

言葉は、形を変えて、でもその性質は変わらず、周りまわって帰ってくる。
自分の言葉は、すなわち自分を表している。

それならば。
それならば、柔らかく、暖かい言葉を人に贈ろう。
柔らかさや暖かさはそのまま、時にはもっと大きく暖かくなって、あなたの元へ帰ってくるだろう。
凍った硬い言葉を発してしまった時は、それを溶かす暖かい言葉が必要だ。
あなたが発した冷たい言葉は、大きく、鋭く、素早いスピードで、周りまわってあなたを壊してしまうから。

自分た満たされる言葉と友達になろう。
それがあなたが将来受ける賛辞であり、感謝であり、生きていく糧となるから。

私は言葉が好きだ。
傷つけ合うことも、勘違いすることも、ひとり歩きすることも知っていて、でも暖かいことも知っていて、そんな言葉が愛おしい。

こうして私は今日も言葉を綴り、言葉と生きていく。
言葉の力で自分の今日を、誰かの今日をほんの少しよくするために。

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