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西野亮廣作品の考察⑥/「クレア」~徳川幕府が禁じた宿曜占星術~

今日は『映画 えんとつ町のプペル』に出てくる、ドロシーの双子の姉で星読みの「クレア」について書いていきます。

クレアは回想シーンでは星読みの格好(占い師の格好)ですが、物語の途中からはドロシーと入れ替わっていて、ドロシーの格好をしています。

(※口の右下にホクロがあるのがクレアで、口の左下にホクロがあるのが本物のドロシーです。)

(▷ドロシーに扮するクレア)

このえんとつ町における「星読み」というのは、天体観測をして船舶の位置を特定する「航海士」ということだけではなく、「宿曜占星術(しゅくようせんせいじゅつ)」を使える「宿曜師(しゅくようし)」でもあると私は考えています。

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1.宿曜占星術とは

宿曜占星術(しゅくようせんせいじゅつ)は、弘法大師空海が日本に伝えた密教の経典「宿曜経(すくようきょう)」を元に作られた占星術。

(※正式には文殊師利菩薩及諸仙所説吉凶時日善悪宿曜経だが、短縮して宿曜経と呼んでいる。)

宿曜経は、七曜、十二宮(12星座)、二十八宿の関係によって日々の吉凶を定め、誕生日による人の一生の運命を占う方法を説いたものである。

宿曜占星術は世界最古の占星術だとも言われているが、その起源には諸説あり、はっきりとはわかっていない。

しかし諸葛亮孔明が軍略などに用いていた天文学知識(星術)が宿曜の原型になっているという説がある。
(※ちなみに諸葛亮孔明は、西野さんの名前の由来です。)

この宿曜道(宿曜占星術)は占いで政治を動かしていた平安時代の貴族社会に取り入れられ、元々使われていた陰陽道と対抗するほど盛んになった。

西洋占星術が太陽の運行をもとにしているのに対し、宿曜占星術は月の公転周期をもとにしている。

月は27.32日で1周するため、その月の見かけ上の通り道「白道」を28分割して、それぞれの場所に名前をつけ、28宿にした。
28宿あるが、一般的には牛宿を抜いた27宿で占う。

12星座の“○○座”のように、宿曜では星を「○宿」と呼び、生年月日から自分の宿(星)が決まる。

この宿(星)からその人の生まれ持った性質(性格)や人との相性などを占う事ができるのだが、実際は占いというよりも統計学的要素が強く、その的中率の高さから、宿曜占星術の右に出るものはないと言われている。

また、西洋医療が浸透する前は、占いは医療の役割を担っており、占いで診断して祈祷で治療するというのが当たり前だった。

【※補足】
日本の旧暦というのは、月の満ち欠けをもとにしたもの。現在は太陽暦が使われている。

旧暦カレンダーでは、数年に1度、暦と季節のズレを調節する「閏月」を挟む。
そのため、年によっては十月の次に閏十月があったりする。

普段我々が使っている曜日も宿曜からきている。

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2.徳川幕府は宿曜占星術を禁じた


宿曜占星術は戦国時代、軍略に用いられるようになった。この占星術は敵を討ち果たす吉凶を占う秘術とされており、幕藩体制の主要な大名の配置決めにも使われていた。

織田信長や武田信玄も敵対する武将との相性や未来を宿曜占星術で占って戦いに臨んでいた。

徳川家康は宿曜を使い、豊臣家を滅亡させるために豊臣秀頼の正室として、相性の悪い孫娘の千姫を嫁がせるなどしていた。

江戸時代に入ると、家康の側近であった天海僧正が宿曜占星術を使い、家康はその占いによって政治を行い、幕府を統括していた。

「物事の吉凶と善し悪し」を凄まじい精度で占うことができたため、家康は幕府の安定が崩されるのを恐れ、徳川幕府は宿曜の使用を一切禁じ、その力を独占していた。

徳川家康は遺言書にも宿曜が世に広まらないようにと遺すほど、その的中率の高さを恐れていた。

その後、宿曜占星術を一般の人が使えるようになったのは明治以降である。

【※補足】

第3代将軍・徳川家光が、家光の四男である徳松(のちの5代将軍・綱吉)が病弱であることを心配し、無事の成長を祈るために、旧暦の11月15日に袴着の儀式や修法を行ったのが七五三の始まりである。

旧暦では15日は毎月ほぼ満月に当たり、旧暦の11月15日は宿曜の「鬼宿(鬼がいない日)」で、あらゆることに大吉とされる吉祥日だったために、この日に行った。

二十八宿の中では鬼宿日が最上の吉日と言われているのだが、それはお釈迦様が生まれた日が鬼宿日だったからという説が有力である。

- えんとつ町のプペルと繋がる部分▼


①「えんとつ町のプペル」のストーリーの下地の1つには幕末があり、えんとつ町を統治するレター一族のモデルは江戸時代の徳川家である。
(※レター15世のモデルは第15代将軍・徳川慶喜)

えんとつ町では“星読み”が禁止されていて、『映画 えんとつ町のプペル』の作中、トシアキの
「宇田川地区で異端者を捕らえました。あの占い師、星読みの末裔でした。処分します。」
というセリフがある。

この時、星読みのクレアの身代わりになった双子の妹ドロシーが異端審問所(幕府)に処分されている。

上記のことから、冒頭にも書いたように、えんとつ町における「星読み」という行為は「宿曜占い」のことで、トシアキのセリフの「星読み」は職業としての「宿曜師」のことでほぼ間違いないだろうと思う。

②回想シーンでルビッチの母・ローラとクレアが
クレア「お身体は?」
ローラ「ええ、だいぶいいわ。あなたの星読みはよく当たるから。嬉しいわ。」

という会話をしている。

これは、クレアが宿曜占星術を使って占い、祈祷をすることによってローラの病気の治療をしていたのではないかと思われる。

また、宿曜占星術は日付さえ分かれば占えるので、星の見えない煙に覆われたえんとつ町でも星読み(占い)をすることが可能である。

③プペルとルビッチが煙を吹き飛ばして町の人達に星を見せた日は満月であり、クレアが協力していることから、この日は宿曜における吉日だと思われる。

えんとつ町を覆う煙を吹き飛ばしたのはハロウィンの後の出来事であり、更に絵本では雪が降っていたので、現在の暦で12月~2月、旧暦では11月~1月頃だろうと予測できる。

絵本でも映画でも、煙の上に行った日は満月であることが共通しているし、宿曜師(星読み)であれば、出来るのなら最高の吉日である満月の鬼宿日を決行日にさせると思う。

このことから、煙を吹き飛ばした日は七五三と同じ旧暦の11月15日である可能性が高いのではないかと現段階では考えている。

※七五三と同じだからなんだって言われたら、それは知らん!ごめんね!
#詰めが甘い

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- 終わりに

他にも、船で空に飛んでった日が満月である意味として「こういうことなんじゃないか?」と思っていることはあるのですが、まぁそれはおいおい。
いつか書くかもしれないし書かないかもしれません。笑

とりあえず、『映画 えんとつ町のプペル』を観た人で「なんで星が見えないのに星読みができたの?」という疑問を抱いてる人は私の周りでもかなりいたので、そういう人にとっては少しモヤモヤが晴れたんじゃないかなぁと思います。きっと。たぶん。
#自信が無いので保険をかける

『映画 えんとつ町のプペル』はほとんどの映画館で上映終了してしまいましたが、まだいくつかの映画館では上映しているのと、地方では新しく上映が始まったりしているので、これからまた観る機会がある方は、ぜひ色々と考えを巡らせながら観てみてください。

複数回観られている方も、新たな見方ができて楽しいんじゃないかな~と思います。

そして、私のクソほどマニアックな考察を毎度読んでくれて、優しい感想くれる皆さん、いつもありがとうございます。
めちゃんこ嬉しいです!大好きラブフォーエバー!
#IQ3のコメント

私はそもそも『映画 えんとつ町のプペル』の考察をしてるというより西野さんの作品全部を考察してるので、映画の上映が完全に終了しても、この考察noteはずーっと続く予定です。

なのでこれからも読んでくれたら嬉しいです!

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