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製造業におけるIT化:大企業と中小企業との差

今日は趣向を変えて大企業と中小企業(特に30人ぐらいの会社)のIT利用に関する差についての考察になります。業界毎に固有の違いがあるのではないかと思っているので、自分が携わってきた業界である製造業に焦点を当てます。

製造業界の大手企業では、IT の導入にかなりの資金を投資しています。何に投資しているんだろうと思われるかもしれませんが、現代の製品の製造は、ほぼソフトウェアによって管理されています。

例えば自動車は CAD(Computer Aided Design)というソフトを使って設計しています。CAD をご存じない方のために、CAD とは何かというのを書きますと、以前は大きな製図版という机に新聞紙を広げたぐらいの大きな用紙を置いて、長い定規などを使って手書きで図面を書いていました。これを電子化したというかコンピューターの中で実現した物が CAD です。

紙で良いんじゃないかという意見も有るのですが(確かに小さいデバイスでは今でも紙という所もあると聞いたことがありますが)自動車の場合は部品点数が10万個ぐらい(*1) あり 1 車種の部品が 10 万点で、会社によっては車のラインナップが10種類以上あって、それぞれの車種に馬力とか内装が違うグレードがあって・・・と人間が全部を把握するのが不可能な状態になっています。これを紙に印刷していたら大変なのでコンピューター内でデータとして扱うわけです。

(*1)最近は部品点数を減らす工夫がなされていて、5万点とか3万点とかという車種もあるようです。

今では PLM (Product Lifecycle Management) というソフトウェアが CAD データを管理しており、設計者は CAD を起動して、図面を書いてセーブするという動作をするだけで自動的に日々の修正が記録されていきます。なので、3 年前の設計で利用した図面を流用しようと思った時に、PLM から過去のデータを取り出してきて、ちょっと変更して設計を終了する・・・というような使い方ができます。この辺りが紙との大きな違いで、もし過去に販売した車種の設計情報を取り出そうと思ったら紙の場合は大変です。3 年前の全車種から該当車種の図面が置いてある場所へ行って、10 万点の設計図面の中から該当の図面を見つけ出すだけでも結構時間が掛かってしまう事が想像できます。

それ以外に CAD には(または CAD に連動するソフトウェアには) シミュレーションを行う機能が有ります。振動解析、空気抵抗、前後左右の車重バランスの良し悪し、熱解析、などなど、車が完成する前にかなりの事が分かるようになっています。試作品を作る前に欠点を潰せます。

そして車を量産する段階になると、今度は別のソフトウェアがデータを引き継いで量産に入ります。部品の購入をサポートするような SCM というソフトウェアや全体の行程や予算を管理する ERP と呼ばれるソフトウェア、販売に必要な CRM, SFA というようなソフトウェアなどがあります。

それらのソフトウェアが連動して企業全体の活動がソフトウェアで管理されており、日々の受注情報(または需要予測)から半自動的に部品を発注して、生産に必要な日程や工場の稼働状況など、随時リアルタイムに情報を把握して、販売店からの問い合わせに対して、何時頃お客様に納品できるのかという情報を取り出す事ができる仕組みが構築されています。

ちょっと長くなりましたが、ここで中小企業の場合を考えてみたいと思います。

自動車業界では数カ月先の内示というが来るので、関連会社はある程度予想して生産できるのですが、内示の無い製造業の場合は結構 「勘」で生産している所もあるようです。何となく在庫が減ってきたので少し積み増しておくか・・・という感じです。

また数千万円とか数億円するような工作機械を使う会社では、順序良く材料を工場へ運んで工作機械の稼働率を上げる事が望まれますが、この順番もベテランの方の「勘」で順序を決めている所が今も多々あります。

ベテランの方の勘というのは結構当たるので、それはそれで良いのではないかという話もあるかもしれませんが、(ここが重要なのですが)5名程度の方々で生産しているのであれば「勘」で十分で、システムは不要なのではないかと思っています。というのは、「おーい!こっち先ね!」 と話せば全員が同じ認識になり生産活動としてはまとまりの有る状態だからです。

ところが作業する人が30名,40名・・・となってきて、工作機械も複数あるという状態になると話は別です。それぞれの工作機械は基本的には別の物を加工するけど、一部の工作機械は、領域が被っていて同じ製品を生産できるケースがあるなどとなった時に、どの製品をどの加工機でどの順番で作るというのは、非常に沢山のパターンが考えられる状態になります。人間の勘でもある程度は当たると思いますが、ここは IT こそが力を発揮できる領域なのですが、そのまま「勘」で生産を行っている会社さんというのが結構あります。

弊社ではこういった部分(少しITを導入するだけで相当効果が出る)の改善案を提案して行き、お客様がより良い状態になるお手伝いをさせて頂きたいと思っております。今回は製造業を例にしておりますが、他の業界でもこのような部分は存在しているのではないかと考えています。

特に製造業の工場は地方に多いので、弊社の活動が地方貢献に繋がればと思っております。

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