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アニメ「響け!ユーフォニアム」第3期第4話「きみとのエチュード」レビュー「月永求の気持ちに30分じっくり寄り添った贅沢な話作りに感動しました…是非ともじっくり黄前部長の1年間を描いていただきたいです。」

僕は原作小説をカンニングして
「先」を知って初見の愉しみを奪われたくない。
だから…立華高校の事も龍聖高校の事も…月永求の事も何も知らない。

でも…今や「そんなこと」はどうでもいいんです。
今回は30分目いっぱい「月永求のこと」が描かれていたから!

求は川島緑輝にのみ心を開き
彼女に師事してコントラバスの師弟関係を1年間構築してきたが
川島に言わせると求は自分に対して心を開いておらず
信用されていないのかも…と思う局面があったという。
しかし彼の演奏を聞けば彼が音楽を心から愛している事は分かる。
川島は
「音楽は…例え言葉が通じなくとも心が通じ合える媒体である」
と信ずるひとりであるので,それ以上,求のプライベートを詮索する事を嫌う。

そんな中,龍聖高校吹奏楽部顧問の月永源一郎から
北宇治高校吹奏楽部顧問の滝に対して
求の龍聖高校への編入の希望を打診してきた旨,
滝から部長の黄前にのみ相談する…。
月永源一郎は求の祖父であり
求は龍聖中学から高校へエスカレーター式に進学できるのを嫌って
わざわざ北宇治高校に入学してきたのだ。
黄前は求にどう話しかけるか思案する…。
それは黄前が「師匠」の川島にも話そうとしない
求のプライベートに立ち入ることを意味しているからである。

黄前は求にただ
「気持ちは演奏に出るよ」
「ワタシはこのメンバーでコンクールで最高の演奏がしたい」
「この3年間で1番って胸張れる演奏をしたいと思ってる」
「だから…求君にも北宇治の為にいい演奏をして欲しい」
と真情を吐露するのみだ。
求は訥々と「自分の事」を話し始める。

彼の姉がコントラバスの奏者だったこと。
彼も祖父も姉の演奏を聴くのが好きだったこと。
姉が祖父の指導する学校の吹奏楽部に入ったことで
色々言われて精神的に参ってしまい病没したこと…。
姉はただ…「楽しい吹奏楽」がしたかっただけなのに…。

結果祖父とうまく行かなくなったこと…。
求が…他者から「月永」姓で呼ばれる事を嫌悪する程に…。

川島が姉に似ていて…川島が楽しそうに吹奏楽しているのを見て…。
「楽しい吹奏楽をしたかった姉」の理想像を川島に重ねていってこと…。
川島が…「本来こうあって欲しかった姉の姿」だってこと…。

そりゃあ…川島本人には「本当の事」は言えんよなあ…。

黄前は「ワタシのお姉ちゃん」…。
実の姉・麻美子と
「本来こうあるべきだった理想の姉」・田中あすかのことを思い出す…。

黄前は実の姉・麻美子に
「生きててくれればそれでいい」
とLINEして
「ハァ?」
とウザがられるのであった。

求は黄前の求めに応じて祖父とキチンと話し合い
北宇治に残る事を黄前に報告する。

「僕はもう…北宇治の人間です」

北宇治に嫁いだ以上,「帰る家」などないと。

求が川島に「本当の事」を話そうとすると
川島はそれを遮って
「何か一緒に演奏しませんか?」
と呼びかけて来る。
川島もまた「気持ちは演奏に出る」と信ずるひとりであり
「言葉」に左程信を置いていないのだ。

求が選んだ曲はエドワード・エルガーの
コントラバスの二重奏曲「愛の挨拶」。
それは…姉が好んで演奏し祖父と求に聴かせていた曲であり
姉が楽しく吹奏楽してた頃の思い出の曲…。
きっと求は…何時の日か姉とコントラバスの二重奏で
「愛の挨拶」を演奏したいと願っていたに違いないのだ。

今回は通常EDがない。

川島と求の「愛の挨拶」の演奏の模様が描かれて話が閉じるのだ。
形式通りの通常EDを流すより!
もっともっと優先すべき事柄があるんだッ!

「エチュード」と言うのは練習曲のコト。
求が川島を相手に「疑似姉弟関係」の構築に向けて
懸命に練習しているからだと思う。

サンライズフェスティバルは真正面から描かれる事は無かったが
前回高坂が厳しく指導した1年・武川を
「凄く良かった」
「時間の無い中,頑張ってくれて有難う」
「初心者のアナタがここ迄出来るって見せてくれたから」
「皆も頑張れたんだと思う」
「コンクール出場メンバー目指して」
「楽しみにしてる」
ってフォローする場面が描かれていたから僕は満足してる。

多分…ユーフォの3期は黄前1年生編の様に2期に分けて
26話かけてじっくり描く心算なんだと思う。

だからこそ…ここまで黄前や高坂は勿論,
求や武川の気持ちに
じっくり寄り添った贅沢な話作りが出来たのだと思う。

例えどれ程アニメの表現技術が発達したとしても
「人の心の機微」を表現しようとするなら
13話より26話あった方がいいと僕は思う。

本当に良かったです。
ユーフォの3期が始まって…1番良かった…。

月永源一郎の声の出演は江原正士さん。
T-1000が今や「おじいちゃん」役。
時の流れは誰にも止められず
セーラーマーキュリーが松本先生になり
T-1000がおじいちゃんになる…。
年を取ることは別に「悪い事」じゃないのに
何故かしみじみしてしまうのです。

2024/5/2追記

あのさ。

第3話で1年の武川を厳しく指導して泣かせた高坂が
第4話で「急に」武川をフォローしたのを
ずっと「変」だと思っていたのだけれど…。
コレ…部長の黄前が高坂に
「1年の武川をフォローしろ」
と指図してると考えると腑に落ちるんだよ。
黄前は釜屋(妹)の「直訴」を重く見て
高坂に直訴内容をフィードバックしてるんだよ。

だって高坂が武川をフォローした直後に黄前が出現して
「「高坂先輩マジエンジェル」って言われるかもね」
って高坂をからかってるじゃん。
高坂は後輩から自分の事を
「エンジェル」と呼ばれようとは微塵も思っておらず
「厳しく指導するのが本人の為,吹奏楽部の為,全国で金を獲る為」
「厳しい指導に付いて来れらない1年が出て来ても仕方がない」
と思ってて部長の黄前から言われて仕方なく
1年の武川をフォローした証明になっている。

黄前は「落伍者を出したくない」って3話冒頭で明言している。
高坂の意向より部長の黄前の意図が優先されたのだ。

黄前は高坂を
中世古香織(カリスマ)&田中あすか(孤高の実力者)の
ハイブリッドに育成する気なんだよ。

そんで自分はと言えば
「ワタシは皆に助けられてまあす」
って小笠原晴香の地位にちゃっかり収まろうとしている。

でもさ…そういう黄前の「性格の悪い」ところは
流石の田中あすかの直弟子なんだよね…。

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