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アニメ「響け!ユーフォニアム」第3期第13話(最終話)「つながるメロディ」レビュー「黄前久美子は再び北宇治高校吹奏楽部に戻って来た…演奏の歓喜を無限に味わう為に…次の大会の為に…次の次の大会の為に…」

再オーディションの結果,全国大会のユーフォのソリパートは
黒江真由に決定し,全国大会に臨むことが決定した。

「決定する」迄には実に多くの確執と葛藤とがあったが
決定してしまえばわだかまりは無くなる。
「確執と葛藤」は12話までで描き切っているからで
最終話では「確執と葛藤」が一切ない
実にストレスのない作劇を堪能出来る。

その最たる例が黄前が田中あすかから受け継いだ
「響け!ユーフォニアム」という曲の扱いで
黄前が独りで「響け!ユーフォニアム」を吹いていると
黒江が寄って来て曲に興味津々。
思わず黄前が「真由ちゃんも一緒に吹く?」と声を掛け…。
久石奏が割って入り
「ズルいです!ワタシだって久美子部長とその曲が吹きたかったのに!」
と実に微笑ましい黒江と久石の
黄前を巡る痴話喧嘩と言うか小競り合いと言うか…。
「不和の種」がないと「ユーフォ」とは斯くも緩い作劇となるのか…。
1話から12話まで緊張のし通しだったから
この最終話の緩い展開が大病で死ぬ程苦しんだ後に
胃に優しいお粥をいただいている様な安らぎを覚える…。

普通だったら全国大会が緊張のピークとなる筈なのですが
「ユーフォ」では
「これ迄やって来たコトをスッと出すだけ」
という作劇で通されていて
「大会で演奏してる最中」が一番ストレスがないという
不思議な構成となっているのです。

黄前「ワタシは…北宇治がスキで…」
「滝先生がスキで…」
「みんながスキです…」
「そんなみんなと…金賞獲りたい…」
「あとはもう…本番だけ…」
「悔いのないよう…」
「コレ以上はダメだ…」
「ハア…やっぱり…」
「アトはドラムメジャーの高坂に言わす…」

高坂「一昨年の今日…」
「ワタシ達3年生は…この場所にいました…」
「今と同じ様に音出しをして…」
「通し練習をして…」
「あの扉をくぐり…」
「ステージに立ちました…」
「みんなにはいろいろなことを求めました…」
「厳しい先輩であったことは認めます…」
「でもそれは…」
「今日と言う日を…」
「後悔したくなかったからです…」
「納得したかったからです…」
「一昨年…一緒に演奏した先輩たち…」
「ステージに立てないメンバー…」
「その全ての想いと一緒に…」
「今日私たちは演奏します…」
「演奏は一度きり…」
「そして…3年生にとっては…」
「最後の演奏です…」
「これまでの全てをぶつけて下さい!」
「金賞獲りましょう!」

黄前と高坂の檄の最中に…。
吹奏楽部員91人全員の表情と名前が
動画で描写される熱い熱い熱い演出!

滝千尋(亡くなられた滝の奥様)
「高校の吹奏楽は…賽の河原で石を積む行為なんかじゃないよ…」
「だって生徒は…コドモは…石ころなんかじゃないから…」

石ころには…顔も名前も個性も想いも人生もないッ!

高坂「黄前…テメエ…どさくさに紛れて滝先生のコト,
スキって抜かしやがって…」

高坂は本当に…「可愛げの結晶」だと思いますよ…。

そしてお待ちかねの演奏シーン…。
滝昇の指揮で「一年の詩~吹奏楽のための」が演奏されるなか
黄前はこれまでの3年間を回想して行く…。

桜の花びらを腹式呼吸で飛ばしたコト…
新入生歓迎の「暴れん坊将軍」の
酷い演奏を聴いて「ダメだこりゃ」と思ったコト…
田中あすかとの出会い…
加藤葉月と川島緑輝との出会い…
長瀬梨子と後藤卓也との出会い…
後藤による
「チューバの魅力」講義
中川夏紀との出会い…
滝との出会い…

「何ですかコレ」

滝に「海兵隊」の演奏を「合奏出来ましたね」と初めて褒められたコト…
あがた祭りのコト…
夏合宿の花火のコト…
サンフェスの動揺を高坂のトランペットが「黙らせた」コト…

大吉山山頂での
「高坂さんは…」
「『麗奈』と呼ばんか」

サンフェスでの鈴木美玲の
「ワンモアッ」

加部ちゃん先輩の「パワー注入」

「ミドリ,カレー大好き!」

橋本真博の
「滝くんのコトは何でも聞いて!」

新山聡美の
「まあ…滝先生にそう言っていただけると嬉しい,ですっ」

死んだ魚の目になってカレーをボトボト零す高坂

オーディションの選考を巡る高坂麗奈と吉川優子の対立

オーディションの選考を巡る久石奏と中川夏紀の確執

田中あすかの家庭の事情

田中あすかの
「お嬢さん!コレは相当重症ですぞ!」

黄前久美子の大大大大大説得…
「ワタシ…あすか先輩のユーフォが聴きたいんです…」

黄前久美子の
「うまくなりたァァァァァァァァァァァァァァァい」

田中あすかとの別れ…。
「コレ…黄前ちゃんに…あげる…」

「響け!ユーフォニアム」

くっそ…全ての回想シーンに「覚え」がある…。
何なら電柱と電線の最初のカット割りを見ただけで
「田中あすかと黄前久美子の別れ」が描かれると分かる…。

本当に終わるんだなあ。

全国大会の応援に来るOGは小笠原晴香,中世古香織,吉川優子,中川夏紀。
田中あすかは来てません。

黒沢ともよさん(黄前久美子の中の人):
あのヒトは何時も「今」を生きていて
高校時代の吹奏楽部の後輩のコトなんていちいち気にしてません。
そんな「昔」のコトにあのヒトは何時までも拘らないんです。
ソレでこそワタシのあすか先輩なんです。

「黄前ちゃん」にそう言われたら返す言葉もないよ…。

京都アニメーションが総力を結集した演奏と黄前の回想が終わり…。

黄前「いろんなことがあった…」
「この3年間…」
「思い出せばどれも特別で…」
「大切な時間だった…」
「つらかったことも…」
「悲しかったことも嬉しかったことも…」
「ソレが…」
「どんな結果をもたらそうと…」
「もう何も悔いはない…ッ!」

一体人間が生きていて…。
「もう何も悔いはない」
と何人の人間が言い切れるのか…。
「黄前の3年間」は…ただ胸を張ってソレを言う為に存在したのだ。

「結果」は…全国大会金賞。

黄前の脳裏に…

全国大会が不本意な成績で
小笠原晴香が泣き…
田中あすかが非常に厳しい表情をして…

全国大会に進めず
吉川優子が泣き崩れるのを中川夏紀が支え…
その悲嘆と悔恨をおくびにも出さずに
吉川が「顔を上げろッ」と部員に檄を飛ばした思い出が甦る…

「死ぬ程悔しい」思いをもう二度としない為に…。
死ぬ程厳しい練習してきて…。
全然全く微塵も少しも悔しくない「結果」が付いてきた…

エンドロールで滝が涙を流し…
滝に恋情を抱く高坂が
ハンカチを手渡そうとして逡巡する背中を吉川優子が押し…
高坂の母親がその模様を動画撮影する描写に泣かされる…。
吉川が高坂の背中をなあ…。

今まで…何処にも居場所がなく…。
写真に写るコトすら出来なかった黒江真由が…。
全国大会金賞を獲って…。
集合写真に初めてその姿が写る演出にも泣かされます。
やっと「存在するコト」を許された黒江にな…。

北宇治吹奏楽部が初の全国金賞を獲ってから数年が経過し…。
黄前は北宇治吹奏楽部副顧問として滝の補佐をする道を選ぶ。
滝にも美智恵先生にも進路希望がバレバレだったけどね。

数年分「声が加齢している」黒沢ともよの神演技ッ!

黄前久美子は再び北宇治高校吹奏楽部に戻って来た
演奏の歓喜を無限に味わう為に
次の大会の為に
次の次の大会の為に

「響け!ユーフォニアム」(完)






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